すべてのおすすめ
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真っ青に透き徹る海が恋しい
真っ白に焼けた砂浜が恋しい。
湿気の多いべたべたする嫌な日
何でも有り余る肥大した無慈悲。
何故か連続して襲い来る不幸
大地は割れ火を吹く山 ....
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はがき一葉
舞いこみ、大要、
「言語障害が発症しているようです。発作もなく、突然電話中に失言症になり、思う通り表現できなくなりました。脳血管障害なら軽い症状で、希望が持てますが、アル ....
さくら さくら さくら
さくら 咲く
サ 暗さ 苦。
年年歳歳花相似たり というけれど
さくら の 花の色 の
なんという まばゆさ。
還暦を過ぎて二年
さくらを見なかった。 ....
二〇〇〇年隠居元年一月一日。墓参。
東京都立多磨霊園二四側四九。
おふくろとおやじとおとうとに「無職」報告。
おそい午前のひざしはおだやかで風もない。
よどんだ時のながれのなかに六九歳 ....
いつもそこに見えている すぐ目の前にだ
共同幻想でもあるぞ 南無阿弥陀仏
現実の世間でも至極あたりまえの
他動説 信じて生きてきた果報者
石の上にも三年 その三年間
近づくと逃げてゆ ....
そこにプールがあって曙と泳げる。
肥満体おどらせて水飛沫をあげる。
可愛くてたまらないまるで嘘のような
滑らかな褐色の肌をしたオンナ。
残された人間の時間感じながら
オトコの命の ....
ここではないどこかへ飛んで行きたいのだ
ずうっとそう思いながら生きてきたのだ
プールの中で仰向けに空をみあげて
おおきく息を吸いこんで溜息ついて
からだにまといつくなめらかな水の揺れ
....
―夢々語るまいぞ 天下のことは
しばし女房の膝枕― 98・7・3 星幸一
薄暗いカラオケクラブの片隅に陣取って
五十六歳役職定年を迎える星がいて
箸袋の裏側に書き綴った辞世の ....
世の中が思うようにならない
のは 今始ったことではない
あと三カ月だなと呟いて
自分自身すらよく判らない
続けたいのに仕事がないヒト
辞めたいのにちょっくらちょいと
辞めさせてもらえな ....
念願の停年まであと一年
のんびりと言い暮してきたのに
いまごろになって。
このプロジェクト
あと一仕事おねがいします。
ちょっと待ってください
このところずうっと指折り数えてきたの ....
年が明けるとすぐ『騒』展があった。何の芸もないので下手くそな色紙を一枚出品した。
太陽にとけゆく海
椰子の葉叢は
吹く風に膨らみ
老いらくの色好み
ゆらぐ冬の暦 ....
十八歳か六十歳まで四十二年イコール五〇四月
あと十七月
のこり3パーセント消費税なみの忍耐だ
どうか5パーセントなどになりませんように
デジタル化してゆく世界に
しだいに稀薄になりつつあ ....
戯れに
水を掻く
何故に
かくダーク
只管に
こころ惹く
遠の国
掻き抱く
目の下を
流れ来る
目には目を
歯には歯を
手に余る
この憎悪
門前町の 御下屋敷あたりに
囲って 折節通い合い お互いに
密かに会っては 愉しんでいると言う
好色一代男に 涙雨
その涙の雨とは言え 早七年
流れる時の魔物 これこそ因縁
とも言 ....
ふとい尻尾さかだてて猫の目ギラリ
白兎の胎内に酒はたっぷり
うすよごれた虎はねくたれてくたくた
つくりつけの本棚はがらあきだった。
未明。ゆたかな黒髪に顔うずめて
あふれてくるくやし ....
明るすぎる現代風景の空洞
もう失われてしまった闇をさがして
黒い色彩をもとめて{ルビ彷徨=さまよ}う街道
あそこにもここにも光りだけがあふれて
いつのまにか当たり前になってしまった
....
受精した瞬間選別される
年老いて死ぬ時にも選別される
優秀な種だけコピーしてふやす
人が生まれ人が生き人が死にます
男の数女の数もおもうまま
ついこの間カミサマが死んだ雲間
ニ ....
老いたるロメオ
命の根源を
回復するためにロメオ
二十四時間を
眠りつづけて浮かぬ顔
麟太郎の幸
『あかるい黄粉餅』
満喫してのち
帰って来た町
秋の日は落ち
....
イタリーとエチオピアの混血女
闇をたたえる目 かたちのよい鼻
「{ルビ男の子=ムスコ}がひとりいるの」
ジョニ赤のハーフボトルと果物
褐色のぬれるような不条理
ぼくたちは深夜の街をは ....
はじめに
詩人であり『中庭』の熱心な読者でもあるS氏から寄せられた文章を読みました。日本語による押韻定型詩の可能性にたいする根本的な疑問が述べられており、まことに古くて新しいこの命題は常に論じ ....
モーパッサン『女の一生』一冊鞄に放りこんで
矢も楯もたまらずナリタを飛び立った
あたらしい眼鏡がなじまないので
いらいらするしエコノミーの狭いシートもきつかった
そのうち左手親指つけねがい ....
明けても暮れてもジューセンいかにせん
つついてもつついても藪の中 悪い奴ほどよくねむる
背広とネクタイきちんとしめての総力戦
おれのせいじゃあないおれだけはと生き残る
だれもかれも似たよう ....
きいろあかちゃいろみどりいろどりあざやかなあき
にこやかなほほえみのかげのにがいおもいに
なぜかめをつぶりいねむりしているような
るいべのとろけるあじにからみつきまじわる
あこがれのように ....
遠い日の雪ふる夜あなたの瞳の中にみた海辺の足跡
理知のかがやきをひめて波間にただようほのあかり
やるせない吐息にうっすらとくもったガラスの部屋
窓に貼りついた蛾の群れが突如としてまっさかさま ....
めぐりきた敗戦後五十年目の夏の日々
ひとびとの思い出がいっせいにふきだす
メデイヤにあふれいきつづける酸鼻
あれもこれもみな生の意味を問いかえす
太陽はたなびく雲をとおして下界をこがす
くり ....
長谷川七郎八十二歳の詩集『もうおしまい』
くもり空の伊豆高原で祝いの酒宴をはった
そこには詩人のぶあつい生の風景が舞い
夏の夜はたのしい談笑のうちにふけていった
女流反戦詩人の膝枕はやわら ....
くもり空のおもたい朝
欠伸をしている川獺
頭にかぶっている笠
ぷんと鼻にかおる野糞
きみの眼のまぶしい若さ
よれよれになっている裾
てのひらにあふれる乳房
白い毛の犬がのそのそ
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海
闇の海
闇の海のなやみ
闇の海のなやみの意味
いみ
意味のなやみ
あらゆる意味のなやみをのみこみ
海の波にたゆとう色好み
いろごのみの酒呑み
酒呑みのねたみの厭味
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