あと三カ月
狸亭
世の中が思うようにならない
のは 今始ったことではない
あと三カ月だなと呟いて
自分自身すらよく判らない
続けたいのに仕事がないヒト
辞めたいのにちょっくらちょいと
辞めさせてもらえないヒトもいて
ドコもがんじがらめの赤い糸
ハダカで生まれてハダカで死んで
どうせヒトは誰も好き好んで
この世に棲んでいるわけじゃない
果てしの無い物語のエンデ
だけではなくて存在の不思議
それは獏さんの詩のあの懐疑
僕らが僕々言っている
その僕とは 僕なのか
僕が その僕なのか
(「存在」山之口獏)
を思い出してみたりするのだが
やっぱりボクは稀薄なブギウギ
毎月一度バンコク往復
ほんの合間のわが挿入句
上州保渡田納屋の花火
詩友たちとの酒 歌 冗句
ボクらがボクボクいっているボク
はやっぱりボクなのでまさにボク
はボクではあるのだが会社の
ボクもボクなのだし詩を書くボク
もボクなのでどうしたらよいのか
四十年働いてまだか
ボクはほんとうにボクなのかなど
何度繰返してもまだまだか
蛙の子はどこまでも蛙で
鳶にはなれないということで
成行きにまかせることになった
紆余曲折の果ての一筆
とうとう契約調印成る
押迫って帰国したのである
年末納会の後でのこと
二杯のモカコーヒーに崩れる
かくて今年は暮れ 楽隠居
の夢もまた遠のいて 空虚
胸を噛み 師走の風が痛い
年明けには待っている転居
19971230