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秋の公園には
白いベンチが
木漏れ日を浴びて
鎮まつてゐる
桐の葉がひらりと
ベンチにのる
どうぞ私を敷いてくださいな
またひとひら ふた ....
カタツムリは
どうしてあんなに大きなラツパを
引き摺つて歩くやうになつたのだらう
身に余るラツパの大きさに
閉口してゐるのはよく見かけるが
いまだそのラツパが吹き鳴らされたの ....
ひまはりは
駝鳥のやうな脚をして
太陽電池を支へてゐる
もう花びらは一つもないが
悲観などしてゐない
ぢりぢりと
ゆるぎない正義のいのちを
蓄電して
飽和に達すると
過去 現 ....
山麓の寂しい町に
月はかうかうと照つてゐた
すべての人が
月を見たわけではないけれど
みんな
ボールを胸に抱へるやうにして
眠つてゐた
夜になると風が出て
{ルビ毬栗=いがぐり}は落ちてゐた
次々と
加速されて
硬く冷たい実が
ぱらぱらといふよりは
すぽすぽと黒土にはまりこむやうに
降つてゐた
流 ....
鐘の音がひときは澄んで響いてゐる
高原の牧場
風は爽涼として
日は明るく照つてゐる
ここに一頭
健康優良の乳牛がゐる
乳が溜まつて乳房が張るものだから
たまらずク ....
草の茂みから
木の上へ
さらに
低空から
中空へと舞ふ
一匹の蛍
漆黒にあらがひ
淡く
かぼそき線を曳き
線といふよりは
点滅
・・・・・・・
....
日の出
小鳥はまだ明けそめぬ闇のうちから
啼き始める
辺りを憚るやうに
ほとんど囁くばかりのくぐもり声で
それは天与の美声を押し殺した 呟きだ
野の鳥よ ....
あなたの瞳は美しい
四囲の変化や季節の移ろいにも
敏感に反応し
あますことなく映し取ってしまう
だからぼくは あなたを見ていさえすれば
それでもう
世界を手に入れているよ ....
木はただ黙ってつっ立っているのではない
両
う
で
を
木はかならず 立 っ て い る
....
このままの状態では
生きていけないと思つたから
突然おれは走り出した
走ればどうにかなるといふものではない
どうすればいいのか判らないから
走り出したのだ
人間の行為なんて
....
落葉の中を走る鳥は
悲しい鳥だ
飛べないかはりに
足は太く節くれ立つて
駝鳥の足のやうだ
このしつかりした足で
枯葉を大仰に鳴らして
進むのだから
化け物が暴れ回 ....
カッコウ
人里に来たカッコウは
しきりに
何かを告げようとしているが
村はあいにく農繁期
耳をかしてはいられない
そこ ....
荒野に月が照って
幽冥界のように
ぼんやり明るんでいる
そこを夥しい生きものたちの霊が
一列になって行進していく
かさりとも音はなく
びゅうびゅ ....
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