日の出  蝶  あさがほ  ……
杉菜 晃

  日の出


小鳥はまだ明けそめぬ闇のうちから

啼き始める

辺りを憚るやうに

ほとんど囁くばかりのくぐもり声で

それは天与の美声を押し殺した 呟きだ


野の鳥よ

これはおまへたちの

日の出を待つ祈りなのか


やがて夜は白みはじめ

第一声より二時間もしてから

朝日は確実に昇つてくる







 蝶


葉を貪つて

青虫で育つた

蝶は

階級も上がつて

花に留まる







 あさがほ


あさがほの花は

祈りとひとつに

開いていく

ひとつの息で膨らませる

紙風船のやうに





  蜩


あのひぐらし

黄昏たそがれにやつてきて

啼きやまないのだ






 馬



名月に

眠れない馬が

顔を出してゐる

レースを明日に控へた

飼主の気も知らず



自由詩 日の出  蝶  あさがほ  …… Copyright 杉菜 晃 2006-07-11 19:42:05
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