日の出 蝶 あさがほ ……
杉菜 晃
日の出
小鳥はまだ明けそめぬ闇のうちから
啼き始める
辺りを憚るやうに
ほとんど囁くばかりのくぐもり声で
それは天与の美声を押し殺した 呟きだ
野の鳥よ
これはおまへたちの
日の出を待つ祈りなのか
やがて夜は白みはじめ
第一声より二時間もしてから
朝日は確実に昇つてくる
蝶
葉を貪つて
青虫で育つた
蝶は
階級も上がつて
花に留まる
あさがほ
あさがほの花は
祈りとひとつに
開いていく
ひとつの息で膨らませる
紙風船のやうに
蜩
あの蜩は
黄昏にやつてきて
啼きやまないのだ
馬
名月に
眠れない馬が
顔を出してゐる
レースを明日に控へた
飼主の気も知らず