すべてのおすすめ
 
 
掌で階段を育てた
せっかく育てているのだから上ろうとすると
いつもそれは下り階段になってしまって
悲しい人のように下の方を見ていた
その隣を弟は快活に上っていって
一番上まで行く ....
 
 
石積みの朝
陸橋はその歪んだ影を
路面に落とし
昨日までの工程を語り終えると
あなたは静かに
最後の生理を迎えるのだった
 
+
 
足音が擦り切れていく
あなたにとっ ....
 
動物園の絵はいつも雨が降ってるあなたと行ったあの日から
 
 
手を繋いで坂道を駆け上ったね下る時に負けぬ速度で
 
 
母と二人ハンバーグをつくる夕日よりもきれいだったひき肉
  ....
 
 
近所の用水路で小さな魚を捕まえた
家にあった水槽に放し
部屋の日当たりの一番良いところに置いた
魚は黒く細っこくて
その頃のわたしは
なんとなくまだ幼かった
 
+
 
 ....
 
 
綱わたりをしていると
月がきれいだったので
僕はまっさかさまに落ちていった

形の良い吉川くんがそれを見ていて
僕らはレンガ遊びを続けた
吉川くんはレンガをちゃんと地面に積んで ....
 
掌は舟
温かくて何も運べない
体液を体中に満たして
今日も生きているみたいだ
塞ぎようのない穴から
時々漏らしながら

階段に座って
ラブソングを歌ったり
駅前の露店で
プラ ....
 
 
見渡すかぎり牧場でした
穴がありました
さりさりと音をたてて
ショベルカーが掘っていました
人が幾人か落ちていきました
むかし近くにあって駅みたいでした
僕と僕の大切な人は
 ....
 
会議室を人が歩く
金属や樹脂などでできた
冷水機のようなものがあって
その向こうに浜松町が広がっている
どこまで行っても僕には体しかないのに
ポケットに突っ込んだはずの
手だけが見つ ....
 
  
父の見舞いに行くと言って家を出た
船橋までの直通の快速に乗ったのに
途中千葉駅で降りて映画を見た
アメリカのアクションものだった
無責任に人が死んでいくのが嬉しかった
夏の終わ ....
 
満員電車に乗って
家を買いに行く

途中、西洋タンポポが
みんな咲いてて
僕はそっと
保安林を抜けたのだった

その先には
どいつもこいつもの風が吹き
ふざけんなの雨が降り
 ....
一匹のウマオイが
楽な姿で
息絶えていた
緑が
ひと際目立った
 
隣のビルディングから
人たちが出てきた
時間の話をしたり
何かを好んだりしていた
 
夏期講習が終わる
子供たちは飛行船
坂道を駆けおりていく

誰かの夢のように
安らかにうち上げられた
深海の魚を見るために
 
それから少し遠くにある
犬の耳を覗き込んで
ま ....
 
部屋の隅に
部屋の真ん中が
落ちていた

僕だけが
それを直した
 
昨日から渓谷の
セミも鳴かなくなった
 
 
紙の羊が
食べたそうにしていたので
紙の草をつくった
 
今日はたくさんの流れ星だね
 
あれはホタルさ
 
きれいだね
命みたいだ
 
 
砂漠に
雨傘が開く

長い人のように
午後だけが
遠くまで見える
 
行方のない自転車は
ふいにとまり

やがて
ぼんやりと朽ちた
 
 
 
子鬼が
ざくろの実を食べた

僕はひとり
校庭で体育座りをしている

世界が夕暮れていく

どこかでまた
朝焼けをつくりながら
 
 
命と
命ではないものが
同じ重さで
釣り合ってる

木陰で呼吸しながら
人はもっと
賢く生きていけた
 
午後、砂利道は続く
消しゴムでは
届かないところへと
 
鳴き方を忘れた
紙の羊の代わりに
今日は僕が
鳴いているらしい

窓の外には
長方形のホテル

清掃局の車が
積乱雲を
斜めに横切っていく
 
 
 
採取した指紋が
すべて蝶になって
飛んでいった
 
鑑識係の実家では
今日も一日中
雨が降ってた
 
妊婦がひとり
味見をしている
長い休みの
か細い台所で
 
 
まだ幼い車掌の
ポケットの中で
紙の羊は
長く生きられない

かつては命の一部として
穏やかな日の光を
浴びていた気もするけれど

めー、と
ひとつ小さく鳴いて
もう誰に
 ....
 
 
水を降りていく
やましいことなど
何ひとつない

深夜、もういない父の
容態が急変した気がして
親戚を探しに出かける

栞のように
水槽が鳴ってる
 
 
夏風邪をひいた駅員が
プールの縁に立って
はしごを眺めている

咳きこむと
口の中で
戸籍は勝手に
書き直されてしまう

向こう側とあちら側が
波のように打ち寄せる
こち ....
 
 
冷蔵庫の中を
クジラが泳ぐ
今日は朝から
ジュースが飲めない
つけあわせの菜っ葉は
鮮やかに茹で上がり
わたしは指と指の間を
紙のようなもので
切ってしまった
 
 
 ....
羊とシーソー遊びをすると
いつも重い方が沈みました
両方が沈まないでいるのは
とても難しいことでした
わたしはまだ
言葉をよく知らなかったのです
 
 
+
 
 
眠れないとき ....
 
あなたがブリキの本を開く

かつて繁栄した都と
路地裏で生き抜いた猫の
長い物語が始まる

朝から駐車場を壊す音がする日
僕は電柱を売りに出かける

どこか遠くで
孤独に電柱 ....
 
 
村田川の土手を歩いていると
おーい
誰かが僕の名を呼ぶ

振り返っても
きれいな夕日がひとつあるだけだった

僕の名前を呼んだのはおまえかー
違うよー、と夕日が答える
な ....
 
魚のために
椅子をつくる
いつか
座れる日のために
 
背もたれのあたりを通過する
ふと、足りないものと
足りすぎているものとが
少しずつある

雨に濡れた生家が
生乾きの ....
 
 
コインロッカーの側に
コインロッカーがあって
そのことだけが
片隅のようなところで
どこまでも続く
何もない、の人が
鍵を開けていく
と、少しずつ
指はあやふやになり
僕 ....
ありがとう
僕らの朝食
光あふれる幸福な食卓に
小型の爆弾は落ちた

ばらばらになって美しく輝く体を
ひとつひとつ拾い集め
元に戻していく
どちらのものかわからないところは
昔のよう ....
 
初夏の光
ひとつ前の駅で降ります
虫かごもないのに


+


栞はかつて
誰かの魚でした
本の中で溺れるまでは


+


夕日のあたたかいところに
古いネ ....
あおばさんのたもつさんおすすめリスト(714)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
冷え性- たもつ自由詩809-3-2
工程- たもつ自由詩2209-2-24
星の鳴る夜- たもつ短歌2208-11-26
ねむらない- たもつ自由詩72+08-11-6
月光- たもつ自由詩2508-11-3
空の匂い- たもつ自由詩4308-10-29
牧場- たもつ自由詩1508-10-13
- たもつ自由詩33+08-10-3
見舞い- たもつ自由詩16+08-9-15
ペーパー・シープ(姓)- たもつ自由詩808-9-12
ペーパーシープ(緑)- たもつ自由詩408-9-5
ペーパー・シープ(講習)- たもつ自由詩508-8-31
ペーパー・シープ(部屋)- たもつ自由詩108-8-28
ペーパー・シープ(流れ星)- たもつ自由詩1208-8-25
ペーパー・シープ(午後)- たもつ自由詩408-8-22
ペーパー・シープ(夕暮れ)- たもつ自由詩708-8-18
ペーパー・シープ(命など)- たもつ自由詩608-8-15
ペーパーシープ(鳴き方)- たもつ自由詩608-8-13
ペーパー・シープ(休み)- たもつ自由詩308-8-12
ペーパー・シープ(紙の羊)- たもつ自由詩608-8-8
水のための夜- たもつ自由詩15*08-8-5
ビヨンド- たもつ自由詩5*08-8-1
履歴書- たもつ自由詩1408-7-29
- たもつ自由詩3208-7-22
物語- たもつ自由詩508-7-18
夕暮れ- たもつ自由詩408-7-16
ゆれる- たもつ自由詩1008-7-15
コインロッカー- たもつ自由詩8*08-7-6
慰霊- たもつ自由詩1808-6-25
海の伝言- たもつ自由詩2508-6-21

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