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ぼくの「片思い」は勘違いでした。
目の前のあなたに
「なまのこころ」で向き合い
瞳を合わせる時
互いの胸の両端は
よろこびの糸で
くいっ と結ばれました。
赤信号になったので
立ち止まり
振り返って戻った壁に
額をあてる
腐った蜜柑になっていた
昨日の自分の嘆きを
冷えた壁は吸いこんで
振り向くと
信号は青になり ....
喫茶店の席を立ち
ふと足元を見下ろす
椅子と椅子の隙間の床に
鈍くひかる百円玉が
恨めしそうにぼくを見ていた
世界はいつも
ぼくになにかを
云っている
....
仕事帰りのバスに乗り
すいていたので
座ったぼくの隣りに
いつも背負うリュックを置いた
よけいなことはなにもいわず
いつもいっしょにいてくれる
友達のように思え
あ ....
雪のつもった日のバスは
渋滞でみんな遅刻のはずなのに
なぜかこころやさしい
雪化粧の街を窓外に眺める
人々をぎっしり乗せた
バスのなか
ネクタイのよれたおじさんが
あんパ ....
こころをそらにすると
あるがままにうつるようになる
つくえのうえにちらばった
えんぴつやほんも
かっぷやすぷーんも
きのう
ぼくのむねにぐさりとささった
だれかのこと ....
ペンキの剥げた
「幸福の青いベンチ」に腰かけ
いつまでも手の届かぬ恋の花や
身を粉にしても報われぬ仕事の
やるせなさを思う
誰の手もふれられない
こころのうつむきに
寄 ....
ましろい壁に伏せた顔を
100数えて振り向くと
そこは360°静まり返った
今日という日の地平だった
いつのまにか鬼になっていたぼくは
今から探さなきゃならない
閉ざさ ....
手にしたペットボトルから
色水みたいなジュースを飲み
{ルビ騙=だま}されたような気がした日
長い間畑仕事をしていた
老人ホームの{ルビ婆=ばあ}やは言った
「昔は農薬なん ....
女を抱きたいと思う
白いからだに潜む
うるんだ瞳にすける
哀しみを抱きたいと思う
街の隠れ家で
互いの{ルビ凹凸=おうとつ}をくみあわせ
闇に吐息の漏れる時
寂しい ....
重労働でつかれた日
夕餉の煮物に入った
れんこんのきれはしを箸でつまむ
「れんこん食べると(先が見える)よ」
というお婆さんの言葉を思い出すと
3っつの穴がぼくに笑った
....
きょうというひのできごとの
いいとわるいを
きめるのはやめよう
え? ということも
あとで よかった になる
はからいのふしぎをおもいたい
わたしのひとみに
うつる ....
中年サラリーマンの膝上に
大事に抱えたバスケットの{ルビ蓋=ふた}を開け
ひょっこり子犬は顔を出す
うたた寝首を垂れている
飼い主の顔を{ルビ覗=うかが}い
時折子犬は体を反らす ....
ほんものは
かぜになびいた
いなほになって へりくだる
わたしはいつも
ささいなことでいじをはり
いなほになれず そりあがる
じょうしきてきな
じょうしのこごと
....
「 愛してる 」
男が100回言ったところで
女のこころはみたされず
男は花屋へ駆けてゆき
3000円の花束を胸に
女のもとへ舞い戻る
花束を手渡す時に
互いの ....
{ルビ昨夜=ゆうべ}の仕事帰りから
だいぶ冷えこんで参りました
少し背を丸めて街ゆく人のなかに
首に巻くマフラーを風になびかせ
ひとりの老婆が杖をついていました
手袋をして
....
目の前に
清らかな川の流れがあった
両手ですくった水を飲むと
足元の小さい花がゆっくり咲いた
村に戻り
壺に汲んで運んだ水を
器にそそいで皆にわけると
口に含んだ人のこ ....
視界に入った
地面の上の
{ルビ蟷螂=かまきり}に
思わず急ブレーキを握り
ペダルを止める
足元に
身じろぎもせず
老兵のように
土色に身を溶かした
秋の蟷螂
....
昨日のゴミ置き場で
幸せそうに日向ぼっこしていた
白い便器の蓋が
今日は無い
腰を痛めて十日間
介護の仕事を休んでいたら
先月の誕生会で
目尻の皺を下げていた
....
{ルビ雀=すずめ}の親子が列になり
1・2・3・・・
路上のひなたに
小さい影が跳ねている
鼻をかもうと
男便所の扉を開けたら
トイレットペーパーは
三角に折られていた
便器を囲む壁に取り付けられた
ベビー用の小椅子には
説明シールの絵が貼られ
腰を丸めておじぎ ....
「親父はがんもどきだね」
「お前は豆だよ」
「母ちゃんはさといもだね」
「いいやじゃがいもだ」
「婆ちゃんはもはや梅干」
「それはそうだな」
ぱりっとした衣に
じゅ ....
先日詩人の夫婦に会い
日々寝不足の夫の目に
{ルビ隈=くま}ができていたので
妻に「大丈夫?」とメールした
妻の名前で受信した
返事の中味の文字からは
「大丈夫だよ」と
夫 ....
くるるるるるる・・・
羽ばたいて
空へ吸いこむ
黒影の
鳩の言葉は訳せない
one は one
一 は 一
「愛」 は 「Lo ....
昨日
柿を取ろうと
腕を伸ばした塀の上から
落っこちた親父が
とっさに捕まった物干し竿が
身代わりのように
ぐにゃりと折れた
午後
急に画面が消えたパソコンを
電気技 ....
{ルビ呑気=のんき}な仮面を被っていても
ほんとうは
わたしもあなたとおんなじように
ひとつの大きい影を背負って
流浪の旅路を歩いています
木造校舎の開いた窓に
手を振って ....
今にも崩れ落ちそうな
{ルビ脆=もろ}いわたしの内側に
いつまでも崩れずに立つ
たったひとりの人がいる
これは一体誰だろう
ぎらぎらと
眼の光る犬が
飼い主に首輪をつながれ
通りすぎた
わたしもあんな眼で歩き
いつも空から{ルビ観=み}ている飼い主が
今日という日にそっと隠した
見えない宝を ....
捨てられた便座の{ルビ蓋=ふた}が
壁に寄りかかり
{ルビ日向=ひなた}ぼっこしている
日射しを白い身に浴びて
なんだか
とても幸せそうだ
見上げた秋の夜空に昇る
丸い月の下を
千切れ雲は{ルビ掠=かす}めゆく
光に浸した綿の身を
何処かへ届けるように
月明かりに照らされた
十字路に立ち止まり
マンホー ....
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