雪の日のバス 
服部 剛

雪のつもった日のバスは 
渋滞でみんな遅刻のはずなのに 
なぜかこころやさしい 

雪化粧の街を窓外に眺める 
人々をぎっしり乗せた
バスのなか 
ネクタイのよれたおじさんが 
あんパンをほおばっていたり 
めがねをかけた女子高生が 
缶コーヒーをすすっていたり 

壁に貼られた 
禁煙ポスターさえも 
しろいたばこの先っぽから 
おどけた湯気を昇らせる 

( 昨晩一人暮らしの
( ストーブもない部屋で 
( 布団にくるまりながら携帯を手に  
( 裸足の足がさむいと 
( 受話器の向こうで言うきみは 
( 今頃目を覚ました頃かなぁ 

ぼくらはみんな 
なんの関係もない 
他人同士 

それでもみんな 
何処かたった一つの国へ向かう 
旅人同士な気のする 
雪の日のバス 

十日前この世を去った
きみとぼくの友達が  
すきとおった姿で 
こちらに手を振る
雲ひとつない
快晴の空 

ぼやけた窓に  
射しこむ 
一粒のひかりの種
この瞳に 
にじむ 








自由詩 雪の日のバス  Copyright 服部 剛 2008-02-04 21:36:23
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