あたらしい季節 〜ある友への手紙〜
服部 剛
昨夜の仕事帰りから
だいぶ冷えこんで参りました
少し背を丸めて街ゆく人のなかに
首に巻くマフラーを風になびかせ
ひとりの老婆が杖をついていました
手袋をして
自転車のハンドルを握るあなたは
家へと続く夜道を走りました
気づくと
日中のあなたは
手探りな自分の姿をたしかめようと
周囲の人を
見上げてみたり
見下げてみたり
やがてハンマーは振り下ろされ
壊れたあなたの姿は
跡形もなく消えるでしょう
いずれ見えない風は吹き
粉々になった
からだの欠片は渦となり
立ち上がる人影は
あらたなあなたとなるでしょう
目の前の
ましろいスクリーンに映し出された
桜並木の道
小春日和をあびながら
しあわせそうにペダルを漕いで
桜吹雪のトンネルへすいこまれゆく
あれは
明日のあなたです