あたらしい季節 〜ある友への手紙〜 
服部 剛

昨夜ゆうべの仕事帰りから 
だいぶ冷えこんで参りました 
少し背を丸めて街ゆく人のなかに 
首に巻くマフラーを風になびかせ 
ひとりの老婆が杖をついていました 

手袋をして 
自転車のハンドルを握るあなたは 
家へと続く夜道を走りました 

気づくと 
日中のあなたは 
手探りな自分の姿をたしかめようと 
周囲の人を 
見上げてみたり 
見下げてみたり   

やがてハンマーは振り下ろされ 
壊れたあなたの姿は 
跡形もなく消えるでしょう 

いずれ見えない風は吹き 
粉々になった 
からだの欠片は渦となり 
立ち上がる人影は 
あらたなあなたとなるでしょう 

目の前の 
ましろいスクリーンに映し出された 
桜並木の道 
小春日和をあびながら 
しあわせそうにペダルを漕いで 
桜吹雪のトンネルへすいこまれゆく 
あれは 
明日みらいのあなたです 








自由詩 あたらしい季節 〜ある友への手紙〜  Copyright 服部 剛 2007-11-19 08:24:07
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