近所の本屋で、新訳の「ロリータ」を探してゐると、以前に好きだった女性を見かけた
彼女の髪の色は、見るたびに薄くなってゆく
今日の髪は、まるで黄ばんだ白髪のやうだった
「ロリータ」を手にしたと ....
大丈夫っスよ
地獄の入り口では
童貞と処女だった人間たちが
「どうせ死ぬんだから」って
日がなセックスしてるっスよ
....
地面には
ぺちゃんこのかまきり
おどけた鎌を振り上げて
お前は偉いな
踏みつぶされても
踊ってる
わたしの あたまを
からから まわすと
なないろの たまが
さいげんもなく でますが
ぜんぶ はずれです
夕方の空には、今日が眠っている
そんな気がする
夜に溶けようとする入り口で
わがままな僕はうずくまる
何かを忘れている
そんな気がする
ひとりひとり
今日話したいろい ....
定食屋で父さんに会った
夏の自転車の帰り道
カツ丼は四百五十円で
ビールの中瓶がいまどき四百円だ
中年夫婦がふたりでやっている
僕は窓際に追いやられ
誰も悪くはないとただ一日つぶやき
....
スクランブル交差点を
行き交うちくわの中に
ぽつり
ちくわぶが混じっていた
バッタものだよ
言われて初めて気がついた
NIKOのロゴTシャツ
が吸った汗の染みへの ....
日曜日
夏空の午前中
モデルハウス見学会場の
前庭の向日葵が
爪先立ちに背伸びしてました
新築マンションのデカすぎる看板が
せっかくの入道雲を半分かくしてたけど
旧街道は
....
真夜中のコンビ二エンスストアに
いそいで駆けこんだら
あたたかい、垢じみた
猫の毛の匂いがした
うす茶色の肌とうす茶色の目をした
店員の青年がこち ....
あと十分で地球が滅びます。
いつものように何気なく見ていた目覚ましTVで
総理大臣が重々しい口調でそんなことを言った
朝。
あと十分だってよ、どうする?
母さんは僕を見ながら、くひひ ....
僕らもいつか禿げて来る
禿げてくるから光るんだ
僕らはいつか禿げて来る
だからこんなに悲しいんだ
毛の艶を太陽に 掲げてみれば
見事にパサパサ 僕のキューティクル
....
夏休みになると自転車で旅に出る男の子たちがうらやましかった。
大きな国道沿いの集合住宅から、蝉のぬけがらを轢いて、
日差しに溶けないように黒くなる細っこい脚の駆け出す
立ちこぎの夏を横目に ....
ファッションなんかには
まったくと言っていいほどに
興味がない。
ファッション雑誌に金を払うなんて行為は
馬鹿げていると、思っている。
いまどきの話題なんか
ぜんぜん知らなくて
....
母は
随分と老いたけど
声は変わらない
母は
もう私に「早く早く」とせかさなくなったけれど
私に「早く」とせかされる
母は
なぜか私よりスタイルがいい
ちょっと癪だけど
ちょ ....
女にふられたので、
祖国へ行って死のうと思った。
だが俺は日本人なので、
ここが祖国だった。
それはちょっと困るような気がした。
日本は大好きだが、
祖国は遠くになくてはならん。
日本の ....
河原で雲を売ることにした
商売は一にもニにも場所だよと
商売などやったことのない親父が
いつも言っていた
場所は悪くない
多摩川は人気の多いところも少ないところも
選べるし
ぼくはど ....
お前にそっくりな
ひよこ豆をゆでる
おまえにそっくりな
ちいちゃな鉤鼻と
これまたおまえにそっくりな
ちいちゃなおしりがついている
圧力釜なら早いが
ああ、
それはぜんぶお ....
お見合いしないの?
って、長いつきあいのおんな友達に聞いた。
「しないよ、どんなの来るかわかんないじゃん。」
いやなら断ればいいんじゃん。
きっとさあ、
銀縁メガネでさ。
市役所の市民 ....
私は虹が嫌い
あまりにも大きくて、目指す事が出来ないから
私は虹が嫌い
遠くからしか、見ることが出来ないから
私は虹が嫌い
いつも、虹の前に雨が降るから
私は虹が嫌い
近くで見てみた ....
ヒトラーの「わが闘争」を
いつもポケットに入れていた
まるでサリンジャーの小説の
脇役のようなH君から
十二年ぶりに電話がきたのは
二年まえのことだった
十二年前H君は中国人の留学生に ....
ぼくは詩を書きたい
自然がもたらす恵は
人にとって心の糧
今日もまた
朝の散歩をしていると
夏に出会いました
川に沿って続く草花の帯
その中で風が遊びまわる
草を生 ....
むかし、俺に親切にしてくれた人がいた。
初めて入ったそば屋のおばちゃんだ。
俺は浪人生でひどく痩せていた。
まるで勉強ができなかったので、
ひとつも大学が受からなかった。
どうやっても勉強な ....
かなしいときはいつでも
文房具屋さんへゆくの
駅前のデパートの一階へ
夕暮れに自転車にのってゆくの
いろとりどりのペンで
ためしがきができるわ
あの人の名前を思い出さないように
一筆 ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=73125&from=listdoc.php%3Fstart%3D30%26cat%3D5
気にはなっていたのですが、文 ....
滴るように
明日の予定を考えながら
窓の外を眺めて
濡れている植木鉢
サルビアの葉を這う
カタツムリになりたい
フランス人はカタツムリを食うらしいが
美味いか不味いかではなく
最初 ....
花が好きだったばあちゃんに
花を摘んで帰ると
十日に九日は叱られる
「野に咲いとうのが{ルビ美=うつくー}しかと」
だから摘んで来なさんなと
ばあちゃんの手のひらはまめだらけ
ばあ ....
今日はひどくぼた雪が降っているなあ
と思いながら窓の外を眺めていると
同居人の男が「それは桜吹雪だよ」と
要らぬ忠告をしてきた
だいたいそれが雪であろうと桜であろうと
たいしてかわり ....
1973年9月11日
サンティアゴに雨が降って
その2週間後
あんたは死んだ
パブロ・ネルーダ
俺はそれ以上のことを知ろうとしない
1973年9月11日のあれは
アメリカの手引き ....
とある 老人施設にて
歯が無くなり
噛む力が無くなり
食べる気力が無くなり
お粥や細かく刻んだおかず(超刻みと呼ばれています)しか
召し上がれなくなった お年寄りのご家族から
「 ....
さよなららいおんが
動物園でさよなららいおんって
呼ばれるわけはちゃんとあって
誰かが夜の隙間で
長い眠りについたとき
悲しそうに 泣くからなんだって
だけどやっぱり
みんなはら ....
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