秋の野に草冠をそっと載せ誰もたたえぬここは萩国
五芒星わたくしの摘む紫の桔梗を君は星だと教え
撫子はまわるまわるよ幼子の見つめる先でかざぐるま
日が経てばすすきの紅い穂もはじけシャン ....
猿山の
一番見えやすい位置に
子猿を抱えた
母猿が座っていて
まるで「うちの子可愛いでしょ?」
と言っているみたいで
親ばかは
人間だけじゃないのかもしれないと
わらった
私 ....
可愛かった君が
台風になったと聞いて
かなしかった
あんなに可愛かった君が
なに食わぬ顔で
意味や 時間を
張り飛ばしていく
むかし
一緒にうたっていた歌を
はぐれた風に ....
河田町のランチ時
ショートカットの急坂を
曙橋へと下りる時
おとこ社員を従えて
登って来たのはお地味なあの顔
あべちよ
羽織ったカーデのあいだから
堂々お山の五合目見せて
やっぱ露出度 ....
朝の海の喧騒のなかでもはや鳴いているのは鳥の「歌」
わたしたちの歩みはひとつひとつ喪に服すようにもろく
少しずつ衰えてゆく明日軋るのはどんな歌か
昨夜あれほど快活だった暖炉の炎 ....
今日メールで
「プレゼントありがとう。」
と返事が来た。
受け取って貰えなかったら
どうしようと思っていたから
安心した。
好きなのだが絶対に言えない。
嫌われているからだ。
困っ ....
ただいま
おそとはとってもさみしいよ
だいすきなひとたちに
てがみをかこう
とちゅうでないてしまいそうだな
ほしいものはいっぱいあった気がする
今でも想えば出てくるだろう
でもほんとうにひとつだけ
そう言われたなら
自分のことだけじゃいけない気がするし
だれかのためになんて言えないし
欲張り ....
しらない国から
風が吹き
しらない国へと
わたってゆく
鳥でもこうは
とべません
しらない国から
雲がきて
しらない国の
滝となる
鯉でもこうは
のぼれません
....
まつげが
長いから
ほかのひとよりも
うす暗い世界で
生きている
ときどき はっ として
息をとめている
チェリーを吸ってた
女の子
思い出すように
生きるから
死ん ....
こっそりと私を
押入れに隠しました
母さんに見つからないよう
襖の裏にしゃがんでます
真っ暗い中
怖くはないけど
心臓がドキドキして
飛び出す機会をうかがって
期待をこめてそれ ....
よくなくきみがなかなくなった
あえば「だいきらい」っていってたきみが
ほんきでみらいをみつめようとしてから
ぼくのめをみてはなしてくれる
よくなくきみがなかなくなった
くちもとが ....
本は終わりから読む
音楽は終奏から聴く
恋は別れからはじめる
映画はエンドロールから観る
旅は終車駅からはじめる
夢は目醒めてからみる
そしてぼくは死から誕生する
....
つじつまを誰かが合わせてくれるのだろう、この人生の終わりに
とりあえずしつけ糸で縫い付けるそこが予定であるかのように
始業式の朝ともなれば小学生が憂鬱のつじつまを合わせて行く
一時間 ....
自分の強さを証明するのに
他人の弱さが必要なのか
そういう言葉を書いた本を探そう
しかめつらでミニケーキ
カフェラテがうまいから
わかった気がする
おやつの時間が必要なこと
牛丼屋でウシが食事をしていた
まさか共食いか、
と思ってよく見ると
豚丼だった
食べ終えたウシは
お父さんごめんね、と言って
手を合わせ
泣き始めた
他のお客さんは皆
見て見ぬふ ....
猫が生まれた
二匹生まれた
かあちゃん猫が
ダンボールに連れてった
ある夜のこと…
翌朝起きてダンボール
こっそり覗いて見てみたら
なんと四匹生まれてた
おばあちゃんがね
これは ....
  
 
父の隣の病床に
テレビが入院した
治すよりも
買い替える方が安いですよ
と医院長は言ったまま
ろくな治療もしない
翌朝テレビは死んだ
....
蝉が鳴いてると思ったら
お隣の山田さんだった
いつものように挨拶すると
蝉になるしかないですね
と、いつもの声で山田さん
その後ふたたび
蝉の声で鳴きはじめた
わたし ....
白紙のラブレター炙ろうとして燃える
月の雫が星の子なら
ひかっているのがわかります
蛍が真似て
ほんのりひかる
あたしとあなたの
心のなかも
てんてんと
ひかればいい
この闇のなか
なかまとあそんでると
かぞくが
たいせつになる
かぞくとすごしてると
なかまが
たいせつになる
ひとりでいきてると
どちらも
たいせつになる
まようなあ
し ....
花も恥じらうとかで
はにかんで笑って
可憐なふりをしたって
所詮 私も人間で
あの手この手で
どうにかしてしまおうと
画策している訳で
女というのはきっと
純情 狡猾な生き物で
....
男たちに
愛していると言うと
とたんにやせ細ってしまい
女たちに
愛していると囁けば
とたんに膨れ上がる
鏡にむかって
愛しているとつぶやいて見たら
鏡は粉々にわれてしまっ ....
こしかけていたひとが
もういないので
そのいすに
こしかけてみる
いなくなったひとと
おなじくうかんに
はじめに
ことばはなかった
からだひとつで
うまれてきた
わたしたちは
いつしかことば
そのものとなり
やがてことばとともに
きえていく
幸せが逃げていく速さと
不幸が追いかけてくる速さの
どちらが速いのかが
長く生きてきたのに
幸も不幸も味わってきたのに
いまもって
私にはま ....
はじめての電話口での溜め息は
恥じらいながら憧れの色
「何色か聴いてみたいなきみの声」
「歌った声に似ているみたい」
話す声は低いのに不思議だよね
愛(かな)しがる声は高くな ....
どちらへとひと言尋ねると
ちょっととひと言返ってくる
誰をとまたひと言尋ねると
ちょっととまたひと言返ってくる
返ってくるんだが
その後のひと言を持ち合わせない僕なのである
見あげれば ....
短歌を超える詩が、あってもいい
詩を超える短歌が、あってもいい
詩人も、歌人も夜はおなじ寝床で肌をよせあって
眠るのだとおもう
今日はもうなにも書けなくて
はやくお風呂にはいってあし ....
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