川面のゆるやかな歩みに
目を潤ませるきみを
こらえきれず
背中越しに抱きしめた
いつもの帰り道を
いつものように歩いていると
知らない道を歩いている
どこかから寝息が聞こえるので
誰かの夢の中だとわかる
寝息を頼りに知らない道を歩いていくと
知らない家にた ....
年の瀬も押し詰まった一日の終わり、僕は故郷のあ
る地方都市で、レイトショーのチケットを買った。ビ
ロード張りの椅子の上で二時間余りを過ごした後、映
画館から外へ出てみれば、夜空からみぞれ ....
孤独な布団の中で眠りこけていた
真っ白な頭の思い描いた リニアモーターカーに乗って
山麓の岸壁の ほったて小屋の中で
監獄の 岸壁の友達を 案じていたりもしたのだけれど
いなくなっている予感が ....
なにかがはじまるのだな この場所で
川の流れのように
地を這う蛇のように
ゆっくりとした確かなものが
季節のように訪れるのだな この場所で
変化に気づかない愚か者も
木々の彩りに目を奪 ....
{引用=
硝子をつたう小径に
痛みは流されて
遠い海に向かう
曇天の淡い輝きの下
たゆたう調べに 今日も
あなたを浮かべてみる
想像でしかなかった白い肉体 ....
雨雲の上には、大空があること
大気の外には、宇宙があること
太陽系の向こうには、銀河系があることを
いつどんな時でも忘れぬように
まぶたに落ちた雨粒ひとつも
そっと、 ....
長月夜 冷えて心に 傘重ね
ふりさけみれば 寄る辺なき鳥
心の琴線 バイバイ
他人の夢など知らず
喧騒に伏す 僕は何処
あの絶望をどうしたら否定できるだろう
{画像=101015121000.jpg}
君はどこに行っていたのと
神話が問いかける
ここまで
ずいぶんと時間をかけて
きたのに
ほんのちょっとの不在で
だいなしにしたね、と
....
水は重く、水は重く
地に深く沈みこんでいる
岩陰に臍のように窪んだ一角
降り井戸の底の暗がりに残された一匹の
赤い鎧を着た魚
地の底よりふたたび湧き出してくるものを
みつめる黒 ....
野分も過ぎれば
盆水は枯れ
鬼灯なる火祭り朧
無月に揺れた
石蕗が送り火
窓/渋柿に染まり
偲ぶ風花
季節は移ろい
滞るままに
連おもう携帯の
いつか
あの山の ....
星もなく
ふあんに耐えかね
肩にくいこむ夜をおろすと
知らない山のほうから遠吠えがきこえる
呼んでいる
/存在(たいしょう)ではない たしかに
よばれている
脳天から電光石火よびさまされ ....
【SOUL FLOWER】
無限に広がる世界の中で
無限に命は生まれ続けて
それぞれが
それぞれに
その存在を誇張しなが ....
古い元美容室の
丸い鏡に
そとのビルが霞んでいる
部屋の角には
埃っぽい暗がり
苦いひとの記憶
「なるべく水分を沢山摂って下さい」
と書かれた貼り紙が
なぜか
人の声のような気配 ....
掲げた手首に引かれた風コンパスと炎の赤道は喉を掻き切り流れ出す椰子の黄色い核が浮き沈みする痕では半人半霊の拝む太陽の焦点も焦げている瞳孔と溶けるチョコレートの肌に押し寄せる波濤そして火傷するほど疾 ....
天国にいってしまったら
天国から手紙は来ないから
せめてできることだけを
おぼえないとなあ
せいかつは強弱のヴォリュームでいきること
ときには手をぬく
つんのめるほど減り込まないよ ....
還暦になりたる人の臓物はカーボンの色 朝すすり泣く
大気圧耐えるS字の脊椎は儚き生のエピタフに似る
年月を長き指にて掻きむしり爪老い侘びぬ月面映し
平穏は耳鳴りだよと腕時計外し目を揉む薄日の読書 ....
砂鯨はありふれている
都市の外周壁は、理性を囲う
その外で、私は妄想を追う
天体の運行が、おもむろに歪む
歩みに夜が混じる
廃棄された夜景を拾う
触れた先から崩れていく
風景は一刻を ....
蜂に刺された事はある
蛇に咬まれた事はない
犬に噛まれた事はあっても
狂犬病を伝染された事はない
ライオンの檻には近づかない
骨折はあるが、頸椎や脊髄の損傷はない
指は切ったが切断に至った ....
液晶のくらやみがこわくて 誰か手をひいて 光よりもはやく
ナプキンでまぶたをぬぐう きらきらひかる夜の鱗粉 まぼろしさ
褪せた色がやさしいカーテンをしめる ふたりぼっちの夜がはじま ....
私は何も持っていない
私は何でもできる。
私は自由だ
私は孤独だ
トリモモも
ショートケーキも
シャンパンも
飲んだことがない。
いつも納豆玉子ご飯。
コタツに入り
みかん ....
滝の駐車場前ひょこひょこと
破れ傘にジャージ姿
相模のかっぱが、現れる
器用に操る軽自動車から
爺が降りるが 相模のかっぱ
先の見えないトンネルを
越えると足下に ....
遠くにいったのは
躯だけだよ
いつも傍には
冬の匂い
みあげると
よぞらである
ほしひとつない
わたしのひふの
うちがわである
こえがとどく
あなたのよぞらから
わたしのよぞらへ
ろっこつを
ひからせるのは
....
高崎線に乗り換えると
電車の調子が悪いのか
モーター音がいつもより大きい
回転数の上昇に合わせて甲高くなり
惰行から力行に入れるとまた悲鳴をあげる
あぁ懐かしい
吊り掛け駆動だ
....
{引用=
具体的な何かを求めすぎだ、と
その男がしゃべった
だが具体的な何かとは、本当は、何だろうか
彼の頭の上を空気が流れていた、雲も、
その雲は、
我々の吐き出した煙だったかもしれ ....
おおとがせせりの夢交わし
爪長師の辻説法
目玉はがせ坊の遠背中
くるり振り返り
みな笑う
笑う切なさは消えていて
眉のあたりがむずがゆい
僕は妖怪と笑み交わす
すがめ地蔵の ....
{引用=
照準を定められて
打ち出されていく……
日々
同じ筒に入れられ
あの遠い高台へと
打ち込まれていく
体中に砂が詰まっている
目が見えない
視界が充血している
人魚たち ....
空には虹色をした魚の天使たちが満ち
人々は時々輪郭を失くしながら行き交っている
その人々のあいだを
宛名を手書きされた手紙たちが
それぞれの行き先へと急いでいるのが見える
街はずれの丘の上で ....
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