すべてのおすすめ
よく晴れた日
ハンガーに吊るして
自分を干してみる
きっと人はこのように
優しく干からびていくのだろう
水分も記憶も失いながら
+
鏡に向かって
笑う
そんな嘘
ばかり ....
尖った粘土に
刺さった虫
のように
息だけ
している
息しか
できない
+
明方
キリンの群れが横断歩道を
渡っていく
あれは首長竜の一種だ
と弟に教える
弟は悲しそ ....
人の嘘で
鳥は空を飛ぶ
鳥の嘘で
ドアは人を
閉じ込める
ドアの中で
人は鳥を
飛ばし続ける
+
いつも
三人なのに
いつも
八等分
してしまう
+
....
朝のやかん
なぞって
もう一度寝る
エビの夢を
見ながら
+
階段
すべてが
階段
そんな
建物
+
夕刊の
「帰」という字を
黄色く
塗っていく ....
もし僕がDJだったら
もっとカオルのことを愛せたのに
整理していた父の荷物の中に
見慣れた筆跡で
そう書かれた紙切れを見つけた
母は屈み込んで
机の下にある二箱目のダンボー ....
爆弾は
言いたいことを言うと
爆発
することもなく
カラスミのスパゲッティを
平らげる
それって美味しいの?
爆発的に美味しいッス
それから
小春日和の日差しに
少し傾いた
丸い ....
口をふさいだ人と
耳をふさいだ人が
ただ見詰め合ってる
目をふさいでいるぼくに
きみが教えてくれた
冷え性のきみの手が
ぼくの身体のどこかに触れていて
少し温かい
何も見な ....
タクシー未満の部屋を
間借りすると
運転手がいません
タクシー未満の部屋なので
運転手未満の僕がいます
それから線路のように
どこまでも間延びした
顔の恋人
そのために僕は ....
秋の色や形に
よく似た人と走る
最初にゴールした僕がふり返ると
その人は手を振って笑っている
もう一度ふり返ると
跡形も無い
一等の賞品に
砕け散ったコップをもらった
....
秋の夕暮れに
夕日がふたつ
赤く熟した
太陽と
柿の実と
風に揺られて
見分けがついた
悲しいと言って
君が釣り糸に噛み付くから
僕はまた一つ疑似餌をつける
ショップに並べられた僕らの履歴書は
いつも濡れていて
釣り上げてしまったものを未来と呼んでも
誰も咎めはし ....
この大きな水たまりは俺がつくってしまったのか
海を前にして蛇口は茫然と立ち尽くした
もしかしたら俺の栓を大事に開け閉めしてくれた人たちの家も
どこかに沈んでいるのかもしれない
そう ....
飛べないから
ビブラートがかかった
針金の先
ステンレスの廊下
突き当りを見失った
憤死している僕の恋人
片付けられることのない夕食
まだ支度されてないリビングで
共同の指先が
光源 ....
夜空にはウシが瞬いていた
草原では干しが干からびていた
もう一つ出まかせを言おう
この袋には伝えきれないほどの
星が詰まっている
飛行船のように女は笑った
どこからかまた盗賊が来て
盗んでいった
かまぼこ板だけなら良かった
かまぼこまで盗まれたら
僕ら家族はかまぼこを食べられない
子供たちは泥棒さんが来た、と大はしゃぎし
とりわけ下の子は ....
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた
そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう
「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
バスの回数券を一枚ずつ切り離す
私たちの遊びは既に失効している
終わりがないプレイルームで
延々と始まりだけが続き
つまるところ距離が無いという意味の部屋で
初めて見た虹を汚らし ....
ネジを食べる
硬い
ネジ、硬いね
君も食べる
時々軟らかいのがある
不良品なので捨てる
そろそろご両親に挨拶に行きたいのだけど
言いそびれていた話を切り出す
君が嬉しそうに微笑む
....
「水」という字を見ると不安な気持ちになるので
女は薄目を開けて電話帳をめくる
おかげで大好きな「花」という字もぼんやりとかすんでしまう
今日はついてない
最後までめくり終えると印をつけ ....
せっかく外に出たのだから
妻と娘に土産を買って帰りたかった
二人が泣いて喜ぶようなものではなく
小さな包みのもので構わない
ほんの少し甘いお菓子で
お土産買ってきたよ
あら、ありがとう ....
立っているだけで構いませんからと
レジ係を頼まれる
お客さんがカウンターにやって来ても
その言葉を忠実に守り立っているだけにする
約束事のように一人また一人と列に並び始める
お弁当コ ....
フットサル
足元で猿
ボールを蹴りながら
猿回しの猿に
回されてますよ俺
舞わされてますよ俺
華麗なステップ
素敵なトラップ
フィット
チーネの味は
忘れました
あなたがいな ....
机が坂を滑り落ちる
その形状を保ちながら
机が坂を滑り落ちていく
誰に目視されることもなく
他に滑り落ちるもののない坂を
机が机として滑り落ちていくのだ
ああ素晴らしき滑走!
け ....
あなたの温かみと重みが
わたしの存在に加えられる
その重みで
わたしは少し沈む
ほんの少し
沈む、あなたのわからない程度に
支える四本の脚
と呼ばれている、それは
わたしの言葉
....
ラクダと探偵が恋に落ちた
ふたりは愛情を育んだが
所詮は偶蹄目と霊長目の許されぬ仲
お別れの日探偵は
沈むことのない夕日をプレゼントした
ラクダは泣き疲れ
二つのこぶをなくし
変 ....
ひまわり畑の上を
一羽のペンギンが羽ばたいていく
僕はその意味がわからないまま
男の人と手を繋いでいて
見送るより他なかった
ぎゅっと握ると
男の人の手は少し汗ばんでいて
何 ....
僕らが歩き出す衝動は
希望なのかもしれない
その過程でいくつかの
意味のようなものを口に含むけれど
次々と廃棄しなければならない
進めば進むほど薄くなるものを感じながら
やがて一番 ....
子供が行きたがっていたはずの
遊園地に行った
子供が恐がるであろう乗り物
恐がらないであろう乗り物
そのひとつひとつに順序良く
そしてなるべく丁寧に
乗っていく
スタンプカードがたまった ....
洗い場には
石鹸の代わりに豆腐があった
かじると
石鹸の味がした
食卓には
冷奴の代わりに石鹸があった
かじると
やはり石鹸の味がした
豆腐はすべて食べてしまったの
と言 ....
サンディの煙草は誰にも止められない
と、誰もが思っていることを
サンディはなんとなく知っている
黒く長い髪
茶色のひとみ
その他の身体的特徴
にもかかわらず
サンディといえば
....
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