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卯の花と牡丹と金盞花
目の下の黒いくまと日焼けのしみと
赤茶けた髪の毛と手の皺の灰と
磨いた鍋底と花の終わったシクラメンと
藤とシャガとあやめと
終わってしまった菊桃と枝垂 ....
一度も入ったことのない時計店が
空き家になっていたことを知ったとき
この街を動かすからくりのひとつが
もうもどることはないのだと感じて立ちすくんだ
雲はなく 風は冷たく ....
大きな葉の下から
そっと空を見上げると
とても薄い緑色が輝いている
そろそろ夏が生まれる
風が吹くと
きららとした緑色は
暗くなるけれど
遠くで流れている川の水のように
他の場所で光り ....
ピンクの透明なライターを
すかして落ちる電球の光は
穏やかな菱形にゆれていて
口をあけてすごした何百回の夜を
あくびなみだのふるえにも似て
思い出させた
夜の路地を行く人々は
人々
だ ....
八十円切手を
丁寧に千切りながら、考えていた
軽四輪だったかどうだか
切断された偉そうな記憶だけが
粗大ゴミみたいに
音、
みいいんって
ああ、またかまただ
....
テレビが湿っている
ただで人からもらった
のだから仕方がないけれど
水分をたっぷりと含み
少し軟らかい感じがする
付属のリモコンも
ただで人からもらったから
同じように湿って
チャンネ ....
懸賞好きの母が
手当たり次第に応募している懸賞が当たった
「サナギ一年分」だそうだ
当然母は家族からさんざん責められた
そんなものが一年間も毎日送りつけられたらたまったものじゃない
特に ....
僕は冬の1月の5時31分にベッドに倒れ込んだ
朝までカラオケはきつい 更に酒まで入ると
始発の電車に乗ってようやくマンションに着く 真っ暗な空からはべた雪が降ってきた 髪に付いた雪が溶けて ....
はじめて春の木漏れ日をデッサンする人は
黒いスポーツキャップをかぶっている
背骨のひとつひとつが明瞭で
白い服をさらさらいわせ
にぎやかな空白に
筆をさしこむ
そしてパレットの虹は ....
三十過ぎて
忙しさを言い訳に
すっかり運動不足の僕は
最近腹筋をはじめた
しばらく鍛えてなかったので
体を起こすたび
床から上がってしまう両足を
しっかりと抑えてくれる ....
鳥の肋骨でできた鳥籠に鳥を閉じ込めて歌う僕の透明なトルソには金魚がすうっと泳いでる。
本気で笑いたい気分、いつ、やって来るのだろうか?
僕にはわからない、誰にもわからない?
自然に笑いたい気分、いつ、やって来てもいいように、笑顔の練習をしよう
やっぱ、皆、独りぼっちに笑顔の練習繰 ....
こころは、
ころころしたいので、
いまからころころしますけれども、
ここでころころしても、
いいですか。
ころろ、
ころがったりもするので、
ころころもあもあ ....
アフリカ象の象牙は高く売れるので墓荒らしが多い
今日も3人組の泥棒が象牙を探しにやってきた
この地域は干魃が多く雨がほとんど降らないので 動物達はおろか植物達にとって地獄のような場所である
....
生まれたとき僕らは一人残らず
目玉の手術を受ける
僕らは始め誰も目を持っていない
昔の人にはあったんだ
だけどそれは真実を見出すことさえできなかったから
そのうち退化しちまった
だ ....
なつかしい
あの日の朝を
少し色褪せた
あの日の朝を
キャンバスに
あざやかに
描いたような朝
鳥の声だけが
あの日のままの
朝
練馬の通り雨は計画的だ
スケジュールは1年先まで埋まっている
しかも事務所のつけたマネージャーがとても有能で
オンとオフのメリハリがきいたスケジューリングを組んで
練馬の通り雨がいつもフレ ....
あなたの隣に
夢を置かせて下さい
ほんの小さな夢ですが
あなたの隣にいる限り
とても生き生きとします
あなたが喜ぶと
小さく羽ばたく音を出します
ただ
あまり見つめられると
照れて縮 ....
お仕事は何ですか、と
聞かれたので
コピーライターです、と答えたら
あなたは不思議そうな顔をしました
そこで、コピー機の説明書を書く
仕事なんです、と付け加えると
ああ、と少し理解 ....
■君の脚に敬意を
のっぺらぼうの バリトンサックスのよう
■風をきる
山ねこ山ねこ、英語の似合わない恋人探して、橋の下。
■イチゴシロップ
にっくき左足は桃に詰められて川 ....
もう
どこにも帰れない
そんな気がした夕暮れは
どんなことばも
風にした
ながれる雲の
行き先はしらない
突きとめずにおくことが
しあわせだとは
....
階段の近くで生まれました
階段で話をして
それから歌い
お互いの名前を呼び合い
Tシャツ、セーター、靴下、下着の類
何度も着替えをしました
時々触れて
時々離れて
おしなべてそのどちら ....
海鳴りのする
愛人の手
不完全な跳躍
不完全な沈黙
千の太陽が忍び込む
円形の虹の純粋経験
カマンベールチーズの正六面体
豚のように美しい
豚のように熟睡している
ありふれた距離に堪 ....
まずは色金山で軍議だね
そして首塚
次は血の池で
槍ではないけれど
互いの刀を洗いっこしよう
その後に
足湯でご機嫌になってから
あの大きな観覧車に乗ろうか
心なしか頼りない日差し
見上げる視界の右片隅、
夏に覚えた眩暈が
いつまでも居座る気配です。
鳩が不格好に歩く石畳、
高い高い螺旋の、
廻る、空
に、墜落する飛行機雲。
始ま ....
深夜の病棟の廊下を
患者を乗せたベッドが幾つも
音もなくしずかに漂流していく
あれらはみな
モルヒネを投与された患者なのだそうだ
おっこちたりしないように
きちんと縛り ....
途切れがちの遠い波音に
あるいは
いつかの風景の肌ざわりに
私は
何を求めていたのか
カンバスは
筆先の触れた瞬間から
額縁にきちきちと収まってしまう
握り込んだ青い爪が
手のひ ....
骨のことなら知っています
奥深く平面的で
動物的な空が
罪深く走る夜
立てるよ、と勘違いをする男が
束になって走っていました
((はしたなく
((はしたな ....
今歩いているこの路地が
たとえば海沿いにしかれたひそかな町の
その奥に抱かれた狭い路地だったとして
世界一小さいという砂粒が
つもって出来た町だったとして
もうあと何件かの民家を越え ....
女は消印を食べ続けた
消印を食べなければ生きていけなかった
医者には病気のようなものだと言われた
普通に届く郵便物だけでは
必要な量は満たせなかった
子供のころは
両親が女のために手紙を書 ....
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