梅雨の晴れ間に猫がひなたぼっこ
じめっとした空気の中で
さらっとした表情で
陽だまりの
あたたかい記憶を抱いて
梅雨の晴れ間に猫がひなたぼっこ
小さく動く前あしで
水のない空 ....
100619
きりきりと袋掛けする童かな
見てきたような景色を作ると
桃の季節が近づいて来る
蒸し暑い空のもと
白百合が鷹揚に咲き
散らかった ....
ぼろ布になるまで
生ききった
捨てる直前の美しさを
君は生まれながらに宿している
茶碗をふくように
涙をふいて
箸をもつように
骨をもって
君は
青年の目のような黒で
さよ ....
{引用=
紙上に佇む
痩せ細った枯れ木
磨り減ったペン先がつけた
掻き傷の隙間に
深く根を張るインクの滲み
どこに行くとも
なにを残すとも
示さぬままに
埋まってしまった行の終わりの ....
スピカ、昔の話をしよう
ネットカフェで安物の映画を見たね
白黒で、音質も悪くて、それでも
主人公がさいごにひっそり自殺するシーンは素敵だった
アパー ....
百三十七億光年彼方の
兜率の天のマリンスノウ
シュレ猫とヒッグスのピッグス
いくつもの眼差しが
宙に浮かんでいます
それぞれの波長に見開いた目をもって
あれらは祈りの小函
見届け ....
木がひとつ燃え
(それは一時の風の音によって現され)
煤には種が
哄笑とともに運ばれて沈む、
森は親愛なる友として
暗黒がとぐろを巻く深い木々の先に
持つものも、持たざるものをも包みながら ....
遠い風/海の凪
光の海/遠い風
潮騒を割り溢れ出る光の帯
遠く海を渡るカモメが一羽
君のもとへ早く
焦らずに帰ろう
遠い風/海の凪
もう陽がしずむ
曖昧になる境界
遠い海 ....
忘れられた小さな空がある。
初夏の風を受けて
駅に続くなだらかな坂道を
歩く途中にある
金網のフェンス越しに
名も知らない花の群生
赤紫の小さな花を
背の高い茎にたくさんつけなが ....
西條 八十全集1、2、3(抒情詩)、4(時局詩・少年詩)と13(詩論・詩話)巻
?国書刊行会発行
を、借りました。何も考えずに予約して、来たら一冊が辞書ほどの分厚さでびっくり。
西條八十と言え ....
母
ああ麗しい距離(デスタンス)、
つねに遠のいてゆく風景・・・・・
悲しみの彼方、母への、
捜り打つ夜半の最弱音(ピアニッシモ)。
ぼくの周りには、ランボーを読んだり、中也 ....
八月の市営プールが君のノスタルジア。
脚立みたいな正体不明の監視装置に鎮座する五十格好、
主婦を悩ます排水溝のぬめりに近似したプールサイド、
二十五メートルを往復している小型 ....
*
ギターの弦をはらう (音が鳴る)
柄(ネック)をたたく(音が鳴る)
ギターの腹を起こす (トントン)
背中をひっくり返す (ふくよかな音が)
響 ....
100601
空のコップに
ミネラル水
ミネラル水に
ソーダ加え
掻き混ぜて
ぜて
....
人は天井に
朝の訪れを知る
世界の中に吹き渡る 思いは
海を流れるだろう
海の景色に夢を見た 私は
風の流れを 起きあがる
人の何も知らない
体の奥を
暗闇で じっと 考えている
....
友はなく親はなく愛した男は幻で
言葉は誰にも通じない
叫び出せば注射を打たれて
硬いベッドに縛られる
最後に私の魂が バチンと潰れる音を聞いた
床に落ちた虫けらのように 唸る ....
{引用=姉の子供が遊びにくると
正直こわい
加減を知らない無邪気なキック
ちょうどみぞおちにくる頭突き
誰から教わったのか知らないが
姉の技に良く似ているのは確か
「遊 ....
わたしは
あなたの音楽でいたい
あなたのくちびるがそっと開いて
嬉しそうに口ずさむ
空に向かって呼ぶように
わたしは
あなたの水でいたい
奇跡の泉にはなれないが
乾いた心を潤し ....
ふらちなよみのくにから来る男は
死んだ者をむりやりたたき起こし
ふとどき者の口からなにごとか聞こうとする
その行為 その汚らわしい行為に
あしも ....
{引用=何本かの鉛筆と
何本かのペンと
何冊かのノートや
散らかった書籍が在って
散らかった書きかけの物語のような
続き話が転がっているところに
書きたての新鮮な言葉が
跳ね回っているの ....
汚れていくオレ
トイレの壁みたく
黒いペンが
オレのこころを凌辱する
汚しているオレ
電信柱に
立ち小便して
ひとのこころを辱める
二人ともオレ
まぎれもなくオレ
....
ぼくの中を犬が泳ぐ
きれいな犬かきのフォームで
どこかにある向こう岸を目指して
一方ぼくはといえば
水の中どころか
空気の中でもうまく泳げない
手足を無駄にばたばたさせて
....
タニシ君
君がうらやましい
だって君は堅い殻を持ち
人間から踏んづけられても平気なのだろう
カタツムリ君
僕は君がうらやましい
君は水が乏しい季節を
眠ってやり過ごすことができるの ....
いじわるをいわせないためには、どうしたらいいだろう
*
最近の話をしようとすると
思考は酷く曖昧で
断片的なものになってしまうから
こんな形をとっ ....
眠れずに
話し続けて窓から見えた白い月
集合場所は明かされぬ森の中
獣達は眠らない
獣のような人間も眠らない
人間もまた獣のように目を光らせる
夜にメスを入れる ....
降り出した雨で
黒い道路がいっせいに音を立てて
激しく破裂した。
アスファルトの色が、
より深い黒に染められていく。
落ちることしか出来ないのに
精一杯、地面を蹴り上げて跳ねたが ....
『心を打たれろ』
そう書かれた紙を僕に見せて
君はこう言った
『詩を書いてみたんだ』
僕は成程本当の詩とはこういうものだったのだなと
妙に納得して ....
速められたリズムは
濃紫の草むらへと
向かわせる
込み上げてくるものは
体内の水源
飲み込まれたものは
いつしか蒸発し
すり替わる
虫を殺してしまったら
かたつむりを踵で ....
残飯を
あさって夜に
うろついた
十九の夏が
蘇る夏
つつじに朝露が降りてきみを思い出す
薔薇ではないというきみのため
野のなかにかすむ公園に
....
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