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祝日 新宿の午後は人波に{ルビ溢=あふ}れて 
逃れるように僕は古びた細い路地に入る 

道の両脇に{ルビ聳=そび}え立つ高層ビルの壁に挟まれた 
細い空を見上げると吹いて来る向かい風 
ア ....
少女は長い間 
窓の外に広がる海を見ていた 
{ルビ籠=かご}の中の鳥のように 

時折 
人知れぬ{ルビ囀=さえず}りを唄っても 
聞こえるのは 
静かに響く潮騒ばかり 

( 浜 ....
一 

仕事から帰ると 
僕の机の上に本の入った封筒が置かれていた 
裏に書かれた名前を見ると
{ルビ一昨日=おととい}「 周作クラブ 」の会場を探し歩く僕に * 1 
「 〜ホテルは何処 ....
君が帰った Cafeの 空席に 
さっきまでノートに描いていた 
空へと届く望遠鏡の幻がぼんやり浮かんでいる 

別々に家路に着く 
君の切なさも 
僕の切なさも 
この Cafe に置 ....
開店時刻の前
Cafeのマスターは
カウンターでワイングラスを拭きながら
時々壁に掛けられた一枚の水彩画を見ては
遠い昔の旅の風景を歩く 


 *


セーヌ川は静かに流れている ....
朝起きて 
寝ぼけた{ルビ面=つら}で 
鏡を見たら 
直毛の黒髪の中から 
ふにゃりとした{ルビ白髪=しらが}が1本 
飛び出していた 

指でつまんで 
ハサミで切って 
手のひ ....
深夜の浜辺で
青白い顔をした青年は 
{ルビ焚=た}き火の前で{ルビ膝=ひざ}を抱えている 

肩を並べていた親しい友は 
すでに家路に着いた 

胸の内に引き裂かれた恋心 
誰の手に ....
その破天荒な男は 
ある晩、僕等の目の前に現れた 

目に映るあらゆるものに逆らい
虚空に拳を殴りつけ 
いつも目に見えない何者かの影に怯えながら
心の弱さと戦う彼は 
一体何を求めてい ....
春の日のベンチに腰かけ 
ひらひらと舞い落ちる 
桜の花びらを見ていた 

肩越しに吹き抜ける風が 
「 誰かの為に身を捨てる時
  そこに天はあらわれる 」 
と囁いていった 

 ....
半年振りで姉は嫁ぎ先の富山から 
5歳の{ルビ姪=めい}を連れて帰っていた 

家族{ルビ揃=そろ}って
僕の出版記念すき焼パーティーをするので 
今朝の出勤前母ちゃんに
「 今日は早めに ....
    春の夜の

    朧な月を仰ぎつつ

    草露を踏む

    真白い素足 
音楽好きな老人ホームの所長と 
週に1回演奏してくれるピアノの先生と 
介護職員の僕と 
レストランで夕食を共にした帰り道 
最寄の駅に先生を車から降ろした後 
夜の{ルビ空=す}いた国道を ....
夜明け前の道を 
自らの高鳴る鼓動を胸に秘め
歩いていく 

川に架けられた橋をわたり 
駅の改札を抜けて 
無人の列車に乗り込む 

腰掛けると 
発車を告げるベルがホームに響く  ....
一月前 
長い間認知症デイサービスに通っていた 
雷造さんが88歳で天に召された 

だんだん体が動かなくなり 
だんだん独り暗い部屋に置かれる時間が多くなり 
ある日ベッドで瞳を閉じて横 ....
春風にそよぐ{ルビ枝垂桜=しだれざくら} 

青空に響く{ルビ鶯=うぐいす}の唄 

{ルビ我等=われら}は{ルビ童=わらべ}

肩を並べてさくらを唄う 



  * 第一詩集「 ....
誰から声をかけられるでもなく 
彼は{ルビ日陰=ひかげ}を静かに歩む 
足元に人知れずなびく草の囁きを聞きながら 

上というわけでも 
下というわけでもなく 
{ルビ只=ただ} 彼は彼と ....
私は足場の固まった
真新しいベランダに立っている 

腐りかけた古い木の板を{ルビ軋=きし}ませて立っていた時 
私は世界の姿をありのままに{ルビ見渡=みわた}すことができなかった 

今 ....
あのレストランの前を通り過ぎるといつも 
寂しげな人影が窓の向こうに立っている

何年も前、飲み会を終えた夜 
あなたはいつまでも電車を降りず 
家路に着こうとしていた私は仕方なく 

 ....
身に覚えのないことで
なぜか{ルビ矛先=ほこさき}はこちらに向いて
誰かの荷物を背負う夜 

自らの影を路面に引きずりながら
へなへなと歩いていると
影に一つの石ころが浮かぶ

理不尽 ....
春の陽射しに 
紅い花びらが開いてゆく 
美しさはあまりに{ルビ脆=もろ}く 
我がものとして抱き寄せられずに
私は長い間眺めていた

今まで「手に入れたもの」はあったろうか 
遠い真夏 ....
夜道を散歩しながら
人知れぬ夢を呟くと 
胸に溢れる想いは
目の前の坂道を昇り 
仰いだ頭上には 
只 白い月が
雲間から地上の私を見ていた 

半年前 
オートバイに乗ったお爺さん ....
幸せは一杯の紅茶 
飲み込めなかった昨日の苦さに 
{ルビ一=ひと}さじの砂糖を溶かす 

幸せは真昼の入浴 
日常の{ルビ垢=あか}に汚れた{ルビ心身=こころみ}を 
泡立つタオルで浄い ....
少女は高い{ルビ椅子=いす}に上ろうとしている 
小さいお尻をどっかり下ろすと 
食卓には色とりどりのご馳走とデザートが並んでいる 

食べ終えると飽きてしまう少女は 
物足りず他の何かをき ....
一昨日
夕食を待ちきれず
ピーナツをひと袋
ぼりぼりたいらげたら 
腹をくだした 

昨日
{ルビ無精髭=ぶしょうひげ}を{ルビ剃=そ}り忘れたまま出勤し 
一日青白い顔で吐き気をこら ....
団地の掲示板に 
吊り下げられたままの 
忘れ物の手袋 

歩道に
転がったままの
棄てられた長靴 

{ルビ棚=たな}に放りこまれたまま
ガラスケースの中に座っている
うす汚れた ....
喫煙所に近づき
しゃがんで声をかける

「 調子はどう? 」

{ルビ煙草=たばこ}をふかす R {ルビ婆=ばあ}ちゃんは眉をしかめ 

「 調子悪いねぇ〜・・・
  明日は歯医者
 ....
{ルビ濁=にご}った泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚 
くしゃっと丸まったまま{ルビ棄=す}てられていた 

ある時は
春の日が射す暖かい路上を 
恋人に会いにゆく青年の ....
川沿いの道を歩きながら 
澄んだせせらぎを聞いていると
傍らを
自動3輪車に乗ったお{ルビ爺=じい}さんが
口を開いたまま
骨と皮の手でハンドルを握り
いすに背を{ルビ凭=もた}れて傾きな ....
ぽえむ君さんの服部 剛さんおすすめリスト(298)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
「夢」_〜_新宿にて_〜_- 服部 剛自由詩14*06-5-6
海を翔ぶ翼_〜_少女と羊_〜- 服部 剛自由詩8*06-5-3
「あたりまえの日々」- 服部 剛自由詩4*06-5-1
黒猫の瞳- 服部 剛自由詩14*06-4-24
セーヌ川の畔で_- 服部 剛自由詩12*06-4-18
_「?」_- 服部 剛自由詩7*06-4-18
幻の太陽_- 服部 剛自由詩15*06-4-16
カオリン・タウミに捧ぐ- 服部 剛自由詩2*06-4-15
春の夢_- 服部 剛自由詩6*06-4-14
姉のまなざし_- 服部 剛自由詩18*06-4-7
春の冷気を泳ぐ女(ひと)- 服部 剛短歌10*06-4-7
無言の声援_〜同僚のMさんに〜_- 服部 剛自由詩5+*06-4-6
始発列車- 服部 剛未詩・独白13*06-4-4
雷造じいさんへの手紙- 服部 剛未詩・独白13*06-3-26
幸福。_- 服部 剛未詩・独白7*06-3-25
青年と老婆- 服部 剛自由詩6*06-3-18
桃色の風船- 服部 剛自由詩7*06-3-18
朧な太陽_〜空の色_♯2〜- 服部 剛自由詩8*06-3-18
六地蔵- 服部 剛自由詩13*06-3-15
夕暮れの並木道- 服部 剛自由詩14*06-3-13
シリウスの光る夜- 服部 剛自由詩11*06-3-11
真昼の入浴_〜デクノボウの休日〜- 服部 剛自由詩8*06-3-10
小景_〜父と娘〜- 服部 剛自由詩6+*06-3-10
髭を剃る夜_- 服部 剛自由詩8*06-3-8
空白の呼び声- 服部 剛自由詩16*06-3-8
忘れもの- 服部 剛自由詩3*06-3-6
ぼろぞうきんの春- 服部 剛自由詩18*06-3-3
玉手箱の中身- 服部 剛自由詩7*06-2-27

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