ひとつ静かに夜を追いかけて
月明かりが映す山並みを眺め
青い風をすっぽりかぶり
キンポウゲの布団で眠る
横を向けば金色の海
ミツバチの足跡に残る
甘い香りが懐かしく
雲が急ぎ足で去り
 ....
県道沿いの山は粘土質だ。
いつも湿っていて、
一歩ごとに靴底へべったりと張り付く。
私は墨染みた卒塔婆を背負っては、
暗き夜に忍び歩く。
夜露は私の身体をぬらす。
ぬれながら、泥で汚れなが ....
壁に埋まったアンモナイトを探して屋上動物園で象を見て
緑のソーダに浮かぶアイスクリームには一粒のチェリー
とっておきの休日を過ごす場はいつか地下へと降りて
毎日のちょっとした贅沢を持ち帰る場へ姿 ....
さよなら、
つぎの空白を飲み込んだとき
少女の手から赤い風船が飛んでゆく

ひゅるり 風に吹かれて
ぱちん 弾けてしまう
わたしたちの知らないところで

いつからだったんだろう

 ....
許せないだけだ

彼らはひとを許せないだけだ

ひとが幸福を感じる価値観を許せないだけだ

その価値観は正しくないと示したいだけだ


妊娠でもしたのだろう

きっと

こん ....
あじさいが虚ろに白く弾けている
八重咲きの皐月の朽ちた先に
猛々しく百合の立ち誇る
結ばない実を体じゅうに埋めた女と女が
安らかな泥濘を探して
月夜 月夜 と鳴いている
灰皿の中で堂々としてる
レシート裏に付いたキスマークは
あなたからの挑戦かも知れない

火を付けたら灰になってしまう
破ったとしても屑になってしまう
水に付けたら苦しんでくれるだろうか?
 ....
ここに旗はない
風に弄られ立ち竦むのは
他の何者でもない
東も西も南も北も
微笑んでなんかいない
ただ巡る風の音が
埋まらない空白を告げている


ここに旗はない
足跡は辿らない
 ....
ある時
私は気がついた

私は
鳥ではなかったと
羽ばたき方も
囀りかたも
思い出せない

確かに
飛んでいたはずなのに
しなやかな翼に風をはらんで
束の間の夕焼けに
淡く染 ....
真っ赤な嘘っぱちを
誰も見抜いてくれなかった

橙色の夕日にとろけそうな
もはや追う者もいなくなった
逃亡者の長過ぎる影

気味の悪い戯言を並べた
ノートの頁は哀しく黄ばんで

 ....
コーヒー豆を噛み潰したような
苦くてじゃりっとした感触が居座るような日々も
喉元過ぎて過去になってしまえば
すぐに忘れるのが僕のいいところ
ただ楽しかった思い出も
すぐに忘れるのが僕の悪いと ....
let go
あなたの服に嘘が付着する
夜がこぼれミルク瓶に詰められ
わたしの朝に届けられる

speak
濡れ衣という緑茶に茶柱がたつ
旋律をねり込んだスコーンを焼く
あ ....
こういうの、好きなんでしょ?

玄人みたいにあなたは笑って
私の中に滑り込んでくる

肯定せざるを得ない私、
なんて優しいんだろう

押しつけてくるピンポイントは
いつも ほんの少し ....
彼女たちが
致死量ギリギリの寂しさを標高1982mで微温湯に溶かし眠り姫になるそのまえに
彼らが
キッチンタイマーの音で目覚め
マジックミラー越し虎柄セーターの看守に連行される
そのまえに
 ....
男たちの港は
場末のパブで

みないい加減なことをほざいていた

ある奴は巨大な銛を引っ提げ
ある奴は真鍮の潜水具を抱えてきた
ある奴はフランス製の渋いマドロスパイプを手にし

自慢 ....
チカッ チカッ


航空障害灯は
自己主張が激しい

ここには星が無いからって
じゃあ僕が星の代わりになるって

なるほど

星はきらめくけれど
点滅した ....
桜島だ

さっきホームはすこし肌寒かったのに

動き出した電車から桜島をながめていると

ぼくはひかりの温度に右側を押されている

ぼんやりとした鈍痛を感じながら湾をながめる

あ ....
墓地と背
鎖を手に
見えない声
遠い灰の音


雨が
雨のための径を通り
去ってゆく
傘の無い街を
照らす幻日


呑まれゆくものに
小さなものらに ....
歩き始めたのは いつだったろう
曲がり角 いくつこえただろう
何気なく 左に 曲がってしまって
迷い犬よりも 途方に暮れてた

別れ道で あることさえ
気がつかず 通り過ぎてた
いくつも ....
「わかってる わかってる わかってる・・・」 といいながら

マリークロッカスは歩いていく



「わかっているんだけどなぁ・・・」

と 見上げた空には

 悲し ....
玄関の前にブラジルが落ちていた
おそらくブラジルから
何かに運ばれてきたのだろう
ブラジルに住んでいる人や他の生き物も
ブラジルが見つからなくて大変だろう、と思い
お役所に電話し ....
防犯カメラをもとに事情聴取を受けた
スーパーのレジ係の太った女は
仕事を早々と切り上げると
アスパラガスみたいな男に連れられて
団地のそばにある鳥かごみたいな
ゴルフ練習場へ向かった。
男 ....
張り裂けそうな胸を抱えたままで
整然とした街を歩いていく
君を失ったからではなく
単に空っぽな未来を想って
痛むこの胸がつらくて
知らないうちに奥歯を噛みしめている

若者たちが集まって ....
けさ見つけた虹の分光率を
記憶のプレパラートに照らし合わせます
虹は厚みを持たないので
それがふさわしい隠れ家なのです

もっとも似ている屈折率を
大地の公転軸に合わせて傾けながら
夕日 ....
思うべきでも来ないでもないのかな
母のことを思い浮かべ居直ることすらなく

放っていく日の岸を漕いでさえ
誰のつてもないものだと悲しさにされ

けれどボートの杭に言い直そうかという気がした ....
眠っていると
乗っているのです

おっきなりんごは
熟した匂いを漂わせ
静かに
ずっしりと
お腹の上にいるのです

あなたは
夢の中では私にたべられ
起きている間は
何とも静か ....
さて私の性癖を口実に
不埒な連中が窓の外にうろつき始めて
早五日ほど、経過したのであるが

せめてもの願いとして私はすべての本能を忘却しようと試みている
それは無理というものだろう、しかし
 ....
私にお金をください

綺麗な洋服を着て
美味しいものを食べ
豪華な家に住んで
毎日毎日楽しく遊んで暮らすために

私にお金を下さい

とりあえず
あなたのバッグやポケットの中にある ....
ここは金魚原産の湖
赤い金魚や
金色のや
パールピンクのや
色々泳いでる

キンギョモがたくさん生えている
金魚たちふわりひらり見え隠れ
あまり大きな魚はいないので
みんな安心して暮 ....
庭の写真で満ちていた
きれいに整えられた庭の
草花を
大きく、小さく
上から、下から
風の日や虹の日に
真夜中や明け方に
おそれるように静かに
シャッターを切って
とられた写真で満ちた家


『こ ....
くろねこさんのおすすめリスト(145)
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