草原で踊りもせずに、海岸で泳ぎもせずに読書に耽る人を馬鹿にしていた、そんな夏に
好きになった少年が
寂れた展望台で静かにひらいたタイトルをひそかに探して
わたしはあまり踊らなくなって、あまり ....
しろく印した約束
違えないようにと
丁寧に付箋をはがす
いつかの夏のはじまり
まちあわせを繰り返すきせつ
出会わないやさしさ
みどりに染まるかげを
ひたすらに踏みしめてあるく
....
これは何度目の雨でしょう
濡れた紫陽花を摘みたくなりませんか
忘れたいことが多すぎて
なにから忘れたらいいですか
なにもかもを忘れたら
あなた居なくなってくれますか
忘れたいことが多す ....
朝
歯を洗い 顔も洗い
だけど
洗面台の鏡は覗かない
自分の顔や頭髪
見たくない
清潔でも綺麗でもない
日々美しく老いていない
それどころか
老醜が鼻をついてくる
でも ....
息子が
ひらがなを
逆さまに書いた
いつから僕は
鏡の世界に
いたのだろう
左から分けた
髪が右に
そよいでいく
街宣車の怒号も
静かな春に
よく馴染んで ....
摩り減って
やっとの思いで歩く。
二十三時前
まだスーパーが開いていて、
明日のお味噌汁の具材を買った。
住み慣れたこの街も
色んな思いで生きた。
この ....
彼女は言った。
この娘の唄って。
一聴するにうまく聴こえるかもしれないけど。
低音が雑ね。
最も悲しいことに
心が入ってないわ。
....
白い息を吐きながら
裸足でピンヒールをひっかけて
ポストに走った。
どうか誕生日当日に着きますように。
きみに届け。
深夜のラブレター。
今 書いたことなの ....
急な坂道を
老婆がひとり
のぼってゆく
過去からの滑り台を
逆にのぼっていく
小高い丘の先は見えない
赤いものに追いこされても
老婆はいつまでも歩いてゆく
後ろ姿しか見えないので
ど ....
この夏は妙に心が揺さぶられる。
年齢のせいかもしれない。
体調がうまくないせいかもしれない。
たった35年しか生きてないように思いながらも
もう35年も生きたような気持ちになって
....
もう誰も好きにならない
なんて
こんなキモチになるたびに思う。
どうして愛する人のそばで生きていけないんだろう。
どうして愛する人に同じ温度を求めて疲れちゃうんだろ ....
流しのしたで無事見つけた
ゴミ袋は
みるみる膨らんで
いくつも部屋のすみに並んでいく
たちまち汗びっしょりになる
シャワーを浴びたい
冷たいお茶を飲みたい
などと考えないよう
片時 ....
街なかで白い小鳥を配っていた
籠に入ったたくさんの小鳥を
小鳥配りの人が要領良く配っていく
受け取らないつもりでいたのに
いざ目の前に出されると受け取ってしまう
わたしが手に取ると
それは ....
ジャグジーがくすぐったいだなんて笑っちゃって仕方ないな
ほとんど脂肪だからよく浮くんだ、あ、臀部が水面から出た
人類が正しくなくても許すよ
種族になんの利益ももたらさ ....
帰る場所を私は持たない
たとえば
ふるさとは
ほろびるだけで
東京は
ただ試してる
ことば
あるいは
ことば以外で
わかったようなつもりになって
帰る場所を私は持たない ....
わんこに遊ばれて
おなかに口のあいたぬいぐるみ
ピンクのうさぎちゃん枕
縫い合わせたら
ひとつ
こころの穴がふさがった
これは
いつか見た紅葉
遠い日の青空
いまは
もうない
黄色い枯れ葉
その場所に
いくつも過去が
生きている
過去が
現在を飲み込む
山
ここには
過 ....
その日
美しいものに出会えたのなら
喜びの音が聴こえてくる
その日
楽しいことに出会えたのなら
温もりの音が聴こえてくる
その日
大切な人に出会えたのなら
幸せの音が聴こえてく ....
あなたの言うとおりになりたくない
でも世の中
そのとおりが大多数だったりすると
口惜しい
ひとつづつ
束縛が剥がれていく
この先の
小さな束縛は
自分から求めて
だらけることなく
もう膨らみかけた梅の花のそばを
新しい靴で歩いてゆく
常に人の中にいると
見失うから
文字 ....
画用紙にピンクのクレヨンで描いていた。
好きな音がたくさん詰まっていた。
周りが全てキラキラして見えるから、
墨で塗りつぶした。
眩しすぎて、目が痛いんだもん。
もう、わたし一人でだって ....
とろりとした夜に
とろりとしそこなったセックスをしながら
ふたりは
2は、どうしたら1になるのかを
しゃべりあった
1を、
....
舌足らずで
勝気
痩せすぎだよ
負けん気だけは
強いんだ
負けるが
勝ちって
嫌いでしょ
私
そっちだから
爬虫類の顔だよね
もしかして
人間の皮をかぶった ....
冷蔵庫が
お漏らしをするようになったので
医者を呼べと
いまどき
呼んで来る医者がいるのか
ご臨終専門の
お医者さま
うちの冷蔵庫は
ちょっと循環がよくないみたいなんです
....
太陽の塔は見たことがあるが
大阪万博は知らない
火輪塔
直視できない
地球が周る限り
いつも明日をくれるのに
私は
朝と夕の太陽しか
見ていない ....
遠くから はさみの鳴る音が聞こえる
それはとても正確で 狂いの無いリズムで
冬の雲を切りそろえ 月の出る準備を
飛び散った雲は星に変えよう
はさみの刻む音で 月がくる
光輪のファーを巻き ....
ごめんよ
もう恋してないんだ
あなたは愛を乞うが
わたしに降り積もるような愛はないから
わたしに降り注ぐ恋でないと
反応できない
はじめから
構造が違 ....
さむいのは苦手なの
そういって りょうあしが
するするっと
きみばかりずるい
そういって せなかが
するするっと
あたまだけをだして
この殻はあったかい
反則だよ
夢の中に登場するのは
やっと底なし沼を泳ぎ切り
嵐が通り過ぎ去ったのに
また足場の悪い道が
私を招いている
私はいったいどこまで行けばいいのか
どこまで続く道なのか ....
線は線に縁取られると形になる
あるいは輪郭と呼ばれても
わたしたちは先に生まれている
そのことはいつも
部屋の中で動かずに考えるべきであろうことを
わたしは知っている
いつもぶち当たる ....
1 2 3