疲弊
高杉芹香

摩り減って
やっとの思いで歩く。

二十三時前
まだスーパーが開いていて、
明日のお味噌汁の具材を買った。


住み慣れたこの街も
色んな思いで生きた。


このニ年。
想わない日はあっただろうか。



話せばみじめになるので
親友に話すのも少し億劫になっているあたし、最近。



電話が来たんだ、とか
メールが来たんだ、とか
誰に何をしてもらって嬉しい、だとか
抱きしめられてたのはいつでも自分だけだったんだ、とか
ほんと、もう
煩わしいことだと思う。



勝手に信じて
人のことばを鵜呑みにするから傷つくんだよ。


なんてこたーないよ、まったく。


今までの自分と何ら変わらないまま
また犯した罪。


あのときも
あたし
夫を許さなかった。
二度と信じられなくなった。


信じられなくなったら
もうそこにはいられないんだ。







疲弊しただけのときに
結論は出すな・・・

なんて
よく部下に話す。



疲れました。
もう。
がんばれない。



そういう彼女たちに

わかった。
がんばらなくていい。
ただ当たり前にここに来て。
大丈夫。
信じて。
あたしがいる。
一緒に生きる。
そばにいる。





精一杯の想いで言った以上は
光のある場所に連れて行く。

じきに
部下は抜け出す。



あたしは?。
あたしには?。
光は?。



采配されてここに在ると知っていながら。


疲弊したあたしに
あたしが言う。

がんばるのに
疲れてるだけのときに結論は出すな。

時期尚早かもしれないじゃないか。



疲弊したあたしはあたしに言う。


オマエハアイサレテナイジャナイカ。ベツニ。トクニ。イツニナッテモ。








行き場を失くして
ただ
肩肘張って今日も上司面。


せめて
あの憧れの長のオーラでありたいと。


肩肘張って上司WORK。



ほんとのあたしはどこにいる?。


地団駄踏んで泣きたいのはこっちだ。
地団駄踏んで泣きたいんだ、毎日。


どうにもならないからそうしないだけだけど。


隣りにうちより高いマンションが建って
また空が見えなくなったら
そのときはベランダから綺麗に飛ぼう。





明日は銀座でディスカッション。
もっともらしいことをどれだけ喋れば解放されるんだろう。





生きるのは
突き詰めるとあたし

母のため。




母さん。
あたし。

あなたの血をよく引いていて。

いつも誰かを
とても愛してしまって。





時折
それが
あなたへの感謝になったり憎しみになったりするのです。


どうしてあたしを創ったのですか、と。



それでも、母さん。
あたし。
明日もお味噌汁 作るね。



散文(批評随筆小説等) 疲弊 Copyright 高杉芹香 2009-07-12 16:21:06
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