寂しい気持ちが居座って
なかなかお帰りになってくれない日は
意地悪な人のふりをしてキッチンヘ
「今日は、アボガドサラダを作ることにします」
まっぷたつに切ったアボガドを左右にずらし ....
ヒダリノマナコ
ごろごろ
太鼓が鳴るよ
ごろごろ
猫が鳴るよ
のどが
渇くよ
水が
乾くよ
洗濯物が
ひらひら
飛んでゆくよ
蝶々が
空高く
....
お花が一本さいていました。
たねができて風にとばされて
お花が二本さいていました。
たねができて風にとばされて
お花が四本さいて ....
弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れ ....
食堂へと続く階段で
未開封のカップラーメンを拾った
飯を喰って戻ってきてもあったら
詩だよなぁ
と
思った
降りる階段の踊り場に
カップラーメンは佇んでいたので
持って帰って美味し ....
この汚レ物の景色の
またと見ない サヨナラだけの
日々の連絡と
グロッキーな夜明けと
どうしようもない欠伸、そして
冷えきって
重たくなった女の
尻と魔術と
....
十月の昼下がり
ガードレールに寄りかかって
ゆっくり喫煙をすると
内側にある熱いものが
とろけるように放出されてゆく
確か理科の時間に習った
高温のものと低温のものを並べると
熱 ....
言葉は心と心を結ぶ橋だから
言葉をたくさん知ることと
言葉を多く使えることは
言葉と心が一つになる
言葉の心は心の言葉
言葉は自分の心と
言葉の心を結ぶ
言葉は結ばれ
言葉の心と
言 ....
雪道を滑らないように歩きながら山の寺へ向かう
お姫様が松の木に恋をした伝説が残る谷間
キスをして抱き合うと
どんなに寒い夜でも
雪さえも
暖かかった
この恋がいつか消えてしまうこと
....
母が二階で
掃除機をかけている
天井が振動
する度に埃が落ちる
右側の窓を
あけておくのを忘れてしまった
閉めっぱなしでは祖母が
家の中に入ってこられないのに
....
詩なんか書いてる暇があったら
食器洗って
洗濯
洗濯物をたたむ
たたむと片付ける
掃除
ほこりは
目立たないように丸く積もる
詩なんか書いてる暇があったら
あなたが
やれリーデ ....
しかしまあどうだ今朝のこの赤ん坊っぷりは
何にも考えてない
何にも考えてないで
シャウトしてるぜ
オパポー
オパポー
おぱぽう
おはようじゃなくて
おぱぽうだ
....
体のまあるい婆ちゃんが
ぜいぜいと団地の階段を上っていた
通りがかりの少年は
後ろから両手で腰を抱えて
ゆっくりとした歩調と合わせ押し上げた
( 振り返ると
( 団地の ....
今日の空が知りたくて
朝から空を見上げれば
昨日と同じ秋の空
でもどこかが違う
昨日はつぼみだった山ゆりが
白く大きく咲いている
今日の空は少しだけ
昨日の空より白かった
今日 ....
ドアを一枚隔てて夜と昼がありまして
月夜の晩にウサギの着ぐるみを着た狼が
こんこんこんと3回ノックした向こうは
太陽の頬が渦巻き灼熱の風が舞う砂漠で
一匹のさそりが穴の周りでクル ....
あなたをね
叩いたらティーンって
鳴いたのね
あなたをね
撫でてもティーンって
鳴いたのよ
チクタク チクタク ティーン
チクタク ティーン
チクチク ティーン
....
浴室に腰掛けて身体を洗っていると
虫の声が
地面を敷き詰めるように湧きあがって
ワッショイワッショイ
ジーンリージーンリー
私を神輿にかついでいるつもりらしいのだ
それならこちらも ....
その爺が傘を持っている時は
必ず雨が降るので
わたしは爺が通る
朝7:42の窓を
「天気予報」と密かに呼ぶことにしている
爺の背筋は驚くほど真直ぐで
たぶんあれは針金で出来ているね、と ....
詩の中に
僕もいなければ君もいない
いるのは僕と君
今
僕の前には
大きな壁が立ちはだかる
それは僕が必ず
乗り越えていかなければならない
今
君の前には
大きな壁が立ちは ....
ためた涙のせいで光が星に変わるころ
あなたのために
誰かがきっとやさしい歌を歌うんでしょうか。
泣きじゃくる声は
その歌がきっと
すべてかき消してくれるから
あなたはただ
小さな天体の真 ....
きみはかわいい
けれど僕はきみの眉間を憎む
特にその皺のできた眉間を憎む
だからきみと一緒にいて
きみが眉間に皺を寄せると
いつもそいつをぐいぐいっと
指で伸ばして消してや ....
相反する心情を瘠せた天秤に揺らし
語り始めの薬指が気だるいエレジーを集めた
訪れの春 もう10年も前だったか
遅れた控えめとセンテンスは
8年前には歪めながら
飲み干す牛乳瓶の翳 ....
光が光をまとうとき
ひかりかげり かげひかり
静かに昇る
譜をめくる指
文字の見えない
明るさの紙に
ひとつをひとつに書きつけて
降りつもる音を見つめている
....
自分というものに
気がつき始めたこの頃は
どこか落ち着かなくて
みんなと同じことをしていても
同じではなさそうで
みんなと違うと思われたくなくて
同じことをしている自分が
自分ではない気 ....
呼べる距離まできている
足跡
紐で縛って
すべて部品に分ける
部品をうめこんだ耳で
わたしを呼んで
この眠りが深いと教えて
見た事がないと言う顔をする
経験
脚で引き ....
う
ろ
こ
雲
空が
いっぴきのさかな
だったら
夕陽に
こんがり焼けて
う ....
お出口は右側
どうかお気をつけて
みなさんお気を
お気を確かに
非常口飛び出す
かわいこぶりっこ
出口がわからない
かわいこぶりっこ
手にはカッター
握りしめて
破片を ....
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる
こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
思わず声にしてしまった
ことばよりも
言い出せなかった
ことばの
内に秘められた真実
レンガを幾つも積み重ね
ひとは誰でも
その真実をこころに閉ざしてしまう
日々の暮らしと
日々の思 ....
一、 某月某日 冬
凍る雨を浴びつづけて、一年を跨ぎ、
わたしの頬は、青ざめて、
虚ろな病棟の、白い壁に残る、
黄ばんだ古いシミに親しむ。
難い過去を追走する暗路を、
エタノールの流れ ....
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