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犬の耳がわたしを駄目にする
駄目になったわたしは
大きな桃になって歩く
途中遠回りして
家族に小さな菓子を買った
今日はかけっこで一等になった
娘は得意げに話してくれたが
何メートル走か ....
突然、閉所恐怖症ですか、
と聞かれ
慌ててそうじゃありませんと
笑顔を見せる
笑顔を見せたって
MRI撮影室の
空洞の中に居る私の顔は
見えやしない
ただ、
むっつりした顔で答えたら ....
あげたかった
必要なものはすべて
コップが限界だったのに
それ以上だと作れなくて
カステラみたいに
手は千切れてしまうのに
(2006.6.11)
晴れわたっていた
ページをめくるたびに
空はその青みをまして
澄んだ悲しみのように
雲ひとつ見つからない
その向こう側から
誰かが僕の名を呼んでいる
今朝旅立つことは
すでに決めていた ....
あした
忘れてしまうのならば
濡れて帰ろう
あした
思い出せないものを
濡らしておこう
あしたも
忘れてしまえないものと
濡れて帰ろう
また
思い出してし ....
表情の中を魚が泳ぎ
わたしたちは
知らない名前まで
食べなければならなかった
表情の人は会釈をすると
良い色のうちわをくれた
その夏は
たくさん扇いだ
(2006.6.9)
いろいろあると思うが、
一つには不死ということだろう。
お役人も不死。
ことばも不死。
生死があるのは人の証でありますと考えたが、
それは今日が意気消沈しているからかも ....
日々の営み
食べかけのマンゴー
砂のようにどこまでも
ずれていく少年
手段を知っている僕たちは
まだ本当の悲しみを知らない
日々の営み
食べかけのマンゴー
それが癖であるかのように微笑 ....
水面でも生きていけた
音も音以外のものも
やがて最後は雨となって
わたしはいつもの
退屈な境界線になった
明日は全国の会議室で
美しい花が観測されるでしょう
予報士は丁寧にお辞儀をすると ....
ジンジャーエイルでいいです
知ったかぶりして注文したら
それはどんな味がするのかな
一杯回してくれないかね
と
亡くなったお祖父さんに冷やかされた
お祖父さんは
お酒が好き ....
一枚のざぶとんに
君と背中あわせで座っていると
温かさがここまで伝わってくる
つまりそれは
君のここに
僕の冷たさが伝わっている
ということなのだろう
二人の真ん中くらいに夕日は落ち ....
長いサイレンが鳴って
国境を見つけられない
足元の草を
飛び越えてみると
サイレンが
聴こえなくなるかわりに
かつて見送られるもののために
窓はあった
そしていま窓は
残されたもののためにある
窓を開け放ち
潮の匂いのする風を迎え入れる
誰かが忘れていった
化石の海が
ひとつ置かれている
....
ネパールとインドの国境付近は深い密林に閉ざされている。失われれば二度と手に入らない暗闇をはらんだ命の混沌。それがジョグ・アレースの森だ。かつてサファルの月、南下したモンゴル軍が侵攻したときにも、この森 ....
愉快と不愉快の違いは言葉の上では1文字違いだが、
気持ちの上では雲泥の差となって現れる。
金額に換算したらどのくらいだろう。
感情に換算したら天文学的な相違で、
人を何人殺しても不愉快な感情は ....
おかげで
その夜
人間は初めて
魂を分かち合った
誰もが泣いた
泣かない人間はいなかった
ひとしきり泣いたあと
その罪の重さに耐えかねて
誰もが死んだ
死なない人間はいなかっ ....
一
遺伝子マップを左手に、ぼくの好きな笑顔を
見せていたチブラさんの右手に、今、全遺伝子
配列図が握られている。笑顔を捨ててそれに埋
もれていくのか、それともくしゃくしゃにして ....
ビョー、ビョー
吹く風は
騒がしく切なくて
そのくせに甘えて拗ねて
おまえ何様なんだよと
ふくれたら
おまえの知らない偉い神様に仕えて居るんだよと
ふてぶてしい顔になって
偉い勢いで吹 ....
饅頭怖いと言いながら
扉の陰でぱくぱく
住宅怖いと言いながら
柱の陰に寄り添って
ダニとシラミを退治する
二人だけの人生
急に道人のふりをして
頭を丸めて畏まる
札付きのろくで ....
里へは年に一度しか帰らない
その際、祖母の家へも行く
祖母の家の仏壇の上には大きな菊紋の入った額縁があって
下のこどもがあれはなんだと聞いてくる
フィリピン部隊で、 ....
詩とか詩人とか 日常では使わない
子供の頃 学校の授業で出会い
宿題にされ 宿題でもないのに
書くようになって 憧れた
同人誌に入ってみたり
小さな詩集ではあったが
喫茶店 本屋さんに ....
今日もまた
直球で肋骨を通り過ぎるほど
大好きな詩に出会いましたよお母さん
もう僕は
この大好きな詩だけを胸に抱き
海へ飛び込んでしまいたい
もう僕は
僕のへんてこりんな詩たちに ....
回転木馬で日が暮れた
ふらり立ち寄る若侍は
ガキ大将に殴られては
顔を赤くして騙す日々
照れたふりして歩く
風来坊の雷が落ちて
足下に火がついて
石油缶に引火して
部屋中が火事だ! ....
今日も
回転木馬に乗って
走ってゆきたい
どんなに揺れても
どんなに遠くても
木馬の歩みは変わらない
トロットトロット軽やかに
ギャロップするのは人でなし
とんがりお屋根 ....
星飛雄馬のお父さんが
ちゃぶ台をひっくり返したのは
実は
たった1回らしいと
誰かがブログで話してた
怒鳴って
声を荒げて
破壊して
それは新たな怒りを呼んで
そうして
本質は ....
なまえなんか
どうだっていいのだと
その人は言った
なんと呼ばれたって
腹の中は見えている
なまえなんか
どう言われたって
かまわない
佃煮色の髪をなびかせた
神の化身と呼ばれた ....
ぎゃっと
言って
飛び跳ねたのは
蛙のような男
ひっくり返ったのは
瀬戸物の青がえる
緑の館にすむ者たちがイカレタあとで
笛吹童子が廃品回収にいそしむ毎日
退屈だなぁと
鳥山 ....
午前5時
始発間近の空気はいつも冷たくて
そのくせとても透き通っていて
「こんな街でもきれいに見えるね」と
僕たちは手を繋いで歩いている
空もそろそろ明るくなりそうで
誰かが吐いた道端の吐 ....
{引用=明け透けな 夜の温度を 手ではかり}
*
{引用=
きょねんのわたしが
さくらのしたでそつぎょうをしているころ
まだはだざむいこうえんのベンチで
あなたは
またはんぶんに ....
時が止まる
そんなことあり得ない
時とはなんですか
葬儀の帰りに思い出し
共同墓地に立ち寄ると
分からないことだらけの人生に
漸く終わりを告げた人たちが
生きてい ....
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