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わたしは欠けた器です 
あなたも欠けた器です 
テーブルの上に置かれた 
欠けた器がむきあうと 
さびしいすきまに 
風のふしぎは吹きぬけて 

別々だった 
あなたとわたしは 
ひ ....
「 無 」の風が吹きぬける 
わたしの胸のましろい空洞から 
ひとり・ふたり・・・と 
かけがえのない人影がこちらに歩いてくる 
目の前に 
清らかな川の流れがあった 
両手ですくった水を飲むと 
足元の小さい花がゆっくり咲いた 

村に戻り 
壺に汲んで運んだ水を 
器にそそいで皆にわけると 
口に含んだ人のこ ....
昨日のゴミ置き場で 
幸せそうに日向ぼっこしていた 
白い便器の蓋が 
今日は無い 

腰を痛めて十日間 
介護の仕事を休んでいたら 

先月の誕生会で 
目尻の皺を下げていた 
 ....
昼寝から目を覚まし 
休憩室から職場への 
一本道を歩いていると 

路面に置かれたひとつの石は 
忘れられてもなぜかまあるく 
不思議とぼくを励ました 
「 あさって帰る、戸締り頼む。」 

親父の書いた太い字の 
メモはテーブルに置かれ 
日頃にぎやかな 
家族みんなは婆ちゃんの 
米寿の祝いで熱海に行って 
ひっそりとした家の中 
 ....
旅先の古い駅舎の木椅子に座り 
彼はなにかを待っている 

別段何があるでもなく 
時折若い学生達の賑わいに 
花壇の菊の幾輪はゆれ 

特別おどろくこともなく 
杖の老婆はゆっくり横 ....
棚の上に置かれた 
小さい額の中は 
去年の祖父の墓参り   

過ぎた日の 
こころの{ルビ咎=とが}を忘れたように 
墓前で桜吹雪につつまれ 
にっこり並ぶ 
母と祖母 

雲 ....
秋の夜の 
冴えた月を見ようと思い 
夕餉の前に 
門を出る 

静まり返った虫の音の 
時折闇の茂みに響く 
川沿いの道を歩く 

背後から 
車の近づく音がする 

ステッ ....
椅子の並んだ暗い部屋
映写機の背後に立つ人が 
かちっとスイッチを入れる 

 闇をつらぬくひかりの筒 

スクリーンに映し出す 
交差点を行き交う 
無数の人々の足 

試写室の ....
銀座の路地裏に入ると 
色褪せた赤い{ルビ暖簾=のれん}に 
四文字の 
「 中 華 食 堂 」 
がビル風にゆれていた 

( がらら ) 

曇りガラスの戸を開くと 
「 イラッ ....
少し前まで 
座っていた席の下に 
置き忘れた
飲みかけのペットボトルを 
扉を閉めた電車は 
線路のかなたへ運んでいった 

きっと 
作業着姿の誰かが 
忘れたゴミを 
無表情 ....
犀川の 
芝生の土手に腰を下ろし 
静かな流れをみつめていた 

午後の日のきらめく水面には 
空気が入ってふくらんだ 
ビニール袋が浮いていた 

近くで
ぴちゃりと魚が 
跳ね ....
「 この世の外なら何処へでも ! 」 
という最後の詩句を読んだわたしは 
「 転居先 」について考えていたが 
そんな場所は、何処にも無かった。 

日常から逃れるほどに 
毎夜訪れ 
 ....
プレハブの 
休憩室の入り口に 
日中の仕事で汚れた作業着が 
洗ってハンガーにかけてある 

ドアの上から照らす電球の 
茶色いひかりにそめられて 
干されたまま 
夜風にゆられる作 ....
終電前の 
人もまばらなラーメン屋  

少し狭いテーブルの向こうに 
きゅっ と閉じた唇が 
うれしそうな音をたて 
幾すじもの麺をすいこむにつれ 
僕のこころもすいこまれそう 

 ....
帰り道を歩いていたら 

  ぽとん 

となにかが落ちたので 
ふりかえった地面には 
電池が一つ落ちていた 

( 塀越しの小窓から 
( 夕暮れの風に運ばれる 
( 焼魚の匂 ....
仕事でヘマをして 
渋い顔で始末書を書き 
残業の書類の山に囲まれ 
気がついたら午前0時 

職場のソファーで
目が覚めた日曜日 

さえない朝帰りの道 
降り出した雨に 
傘も ....
通勤バスの車内 
後部座席から眺める 
まばらな人々が
眠たげな朝 

( 昨晩わたしは、{ルビ尖=とが}った爪を、切っていた。) 

人さし指をのばし 
四角いボタンを押す 

 ....
事務所の白板に 
今日の日付と 
出勤者の名前を書く 

デイサービスにやって来る 
お年寄りの人数を書く 

今日という日が 
すばらしい舞台となるように 
わたしは鏡になれるだろ ....
仏のようなよい人に 
ゆるせぬ人がいるのなら 
わたしに誰がゆるせよう 

あの人がわるい 
わたしがわるい 
と 
手にした糸を引き合い 
こんがらがる 
日々の結び目 

力 ....
植木鉢に身を{ルビ埋=うず}め 
体中に
針の刺さった 
裸の人形 

{ルビ腫=は}れ上がる両腕のまま 
{ルビ諸手=もろて}を上げて  
切り落とされた手首の先に咲く 
一輪の黄色 ....
喉が渇いたので 
駅のホームのキオスクで買った 
「苺ミルク」の蓋にストローを差し 
口に{ルビ銜=くわ}えて吸っていると 

隣に座る 
野球帽にジャージ姿のおじさんが 
じぃ〜っとこ ....
コーヒーショップのテーブルに 
プラスティックのコップがふたつ 
うずまいたくりーむふくらむ 
アイスカフェ・ラテSとM 
仲良さそうに並んでる 

テーブルに向き合う 
ふたつの{ルビ ....
嵐のあと 
歩道に{ルビ棄=す}てられた 
ぼろぼろなビニール傘 

雲間から射す日射しに 
一本だけ折れなかった 
細い背骨が光る 

あのような 
ひとすじの {ルビ芯=しん}  ....
丘の上の{ルビ叢=くさむら}に身を{ルビ埋=うず}め 
仰向けに寝そべると 
空は、一面の海 

宙を舞う 風 に波立つ 
幾重もの{ルビ小波=さざなみ}を西へ辿れば 
今日も変わらぬ陽は ....
昨日の仕事帰り、バスに乗る時に慌ててポケ
ットから財布を出した僕は、片方の手袋を落
としてしまったらしい。僕を乗せて発車した
バスを、冷えた歩道に取り残された片方の手
袋は、寂しいこころを声に ....
ぼくはきみと 
ささやかな丸石をつみあげたい 

忙しさに追われながら 
過ぎ去ってゆく日々のなかで 


( それは夜毎の厨房で 
( まな板の上でたまねぎの音を刻む 
( 妻の後 ....
 今、発車前の夜行列車のなかで
この手紙を書いています。上野駅
は昔から無数の人々が様々な想い
を抱いて上京する駅なので、昔と
変わらぬ空気が今も残っている気
がします。 

 先程、少 ....
目の見えない人が歩く 
前にいる友の背中に手をあてて 

目の見える僕も歩く 
いつも前にいる 風の背中 に手をあてて 

そうでもしないと 

ささいなことで気ばかり{ルビ焦=あせ} ....
たりぽん(大理 奔)さんの服部 剛さんおすすめリスト(98)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
風のふしぎ_- 服部 剛自由詩507-11-25
「_○_」_- 服部 剛自由詩407-11-23
水のふしぎ_- 服部 剛自由詩8*07-11-15
「_無_」- 服部 剛自由詩32*07-11-6
- 服部 剛自由詩707-11-6
「_暖炉の炎_」_- 服部 剛自由詩7*07-10-31
枕木の音_- 服部 剛自由詩507-10-29
カツのころも_- 服部 剛自由詩8*07-10-25
隣の荷風_- 服部 剛自由詩207-10-24
空の映写機_- 服部 剛自由詩607-10-7
中華食堂- 服部 剛自由詩1007-8-31
誰かの手- 服部 剛自由詩607-8-26
犀川_- 服部 剛自由詩18*07-6-12
日々ノ契約_- 服部 剛自由詩11*07-6-2
夜ノ電球_- 服部 剛自由詩15*07-5-29
ゆげのむこう- 服部 剛自由詩19*07-5-21
秋刀魚_- 服部 剛自由詩14*07-5-18
朝帰り_- 服部 剛自由詩9*07-5-6
「_降車ボタン_」_- 服部 剛自由詩12*07-5-2
「_空ノ鏡_」_- 服部 剛自由詩7*07-4-21
「_扉_」_- 服部 剛自由詩14*07-4-7
さぼてん_- 服部 剛自由詩12*07-4-1
車内の隣人- 服部 剛自由詩33*07-3-25
くりーむ_- 服部 剛自由詩4*07-3-23
「_壊れた傘_」_- 服部 剛自由詩13*07-3-6
願いごと_- 服部 剛自由詩15*07-2-28
路上の手袋_- 服部 剛未詩・独白12*07-2-25
石塔_- 服部 剛自由詩9*07-2-8
手紙_〜四つ葉のクローバー〜_- 服部 剛自由詩12*07-2-4
風の背中- 服部 剛自由詩12*07-1-22

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