夏色日記より
銀猫


あの日の高い空と
りんどうの青むらさきを覚えている
明日からのひとりを
蜜のような孤独だと
わたしは微笑んでいたと思う


傍らの古いラジオが
虫の声のように囁き
夏色を少しずつ消して
日焼けの肩を白く戻しては
わたしをまた裸にする

その緩い時の流れは
擦り傷だらけの手足を、
頑なな瞼を、
やわらかく撫で
弱々しく泣かせてくれるはずだ


鎖骨にできた、
ちいさな水溜まりが乾く頃
わたしは髪を切って
何処かの川辺りから
赤茶けた記憶と一緒に流そう

   
   風が止んだ
   庭草の匂いが
   熱の名残を語る


早く、
早く九月になれば








自由詩 夏色日記より Copyright 銀猫 2008-08-17 15:15:40
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