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きみに会いに行く
本当だった
列車に飛び乗ること
それも盲目ではなくて。

灰色の雨に流され
こころの小石が転がる

舞い散った落ち葉を踏みしめる音は
きみの泣く声に似ているから ....
わたしは夜を求める
濃紺の空と赤い星を求める

きみは夜を求める
藍の雲としろい月色を求める

ふたりが求めた夜の中で
風見鶏は廻ってゆく
流れ着く先を知らず
また
愛情、の何かも ....
夕映えを湛えた水面は
紅葉の最後に火照り
林に、ひっそりと隠れて

  雲場池

湧き水の注ぐ豊かは
常に清冽を極め
水鳥の、
その羽根の下にある深さを忘れさせる

黄色や褐色の ....
海を見ている

さくり、さくり、
音をたてる足元の砂に
こころ揺らがぬよう
爪のかたちが付くほどに
手のひらを握り

海を見ている

潮騒に混じって
耳に届く ....
呼びかける名を一瞬ためらって
声は父の枕元に落ちた

あの日
医師から告げられた、
難解な病名は
カルテの上に冷ややかに記されて
希望の欠片も無く
黒い横文字となって嘲い
無情に ....
十月の、
霧雨に染みて
薄紅いろの細胞膜が、
秋桜、
空に透ける

十月の、
夕暮れの風に惑って
枇杷いろの金木犀、
満ちる、そこらじゅう

それらの
秋という色や匂いに混 ....
硝子の風が
きりりと秋の粒子で
二の腕あたりをすり抜け
寂しい、に似た冷たさを残して行く

野原は
囀りをやめて
そうっと十月の衣で包まれている

わたしは
それを秋とは呼べず
 ....
夏の名残を雨が洗うと
淡い鱗を光らせたさかなが
空を流れ
ひと雨ごとに秋を呟く


九月は
今日も透明を守って
焦燥のようだった熱や
乾いた葉脈を
ゆっくりと
冷ましながら潤ませ ....
雨音が
逝く夏を囁くと
水に包まれた九月

通り過ぎた喧騒は
もう暫くやって来ないだろう


踏みしめた熱い砂や
翡翠いろに泡立つ波も
日ごと冷まされて
さみ ....
微かにまるみを帯びた水平線から
紺、と翡翠色は曖昧に溶け合い
蛍光色のブイを揺らしながら
海風がしろい道を無数に拓いている

目の前に置かれたグラスの透明も
水晶の粒と汗をかき
夕闇 ....
真夏の陽炎の向こうから
短い編成の列車はやって来る

そのいっぱいに開かれた窓から
ショートカットの後ろ姿が見える

列車の外から
車両の様子は
ありありと伺えて
制服の脇に置かれた ....
梅雨明けを待てずに
空は青に切り開かれて
ホウセンカの種が飛び散る

新しいサンダルが
小指を破って
滲んだ痛みは懐かしい夏

種の行方を見つめ
きみがいない、
そんなことをふと思 ....
低く垂れ込めた
嵐の雲のなかへ
灰緑色の階段が続き
海は大きなちからに
踏みしめられるように
しろく崩れながら
膨らんでは混じり合い海岸線を削ってゆく

風はいっそう強くなり
雨と潮 ....
北の方角では
青年が祈っている
切実なその願いは
祈り、というより叫びのように
わたしのたましいに遠くから響いてくる

薄いカーテンの向こうでは
洗濯物が揺れている
梅雨の晴れ間と聞い ....
プラットホームに無数に付けられた
チューインガムの黒点が
未熟な夏の気温を
幾分か下げている気さえして
ぎんいろの屋根に逃げ込む

そこから視界に飛び込む紫陽花の
無防備な一片は
まだ ....
浅い眠りのなかに
潮の匂いと砂を踏みしめる音がして
わたしは海辺にいるらしかった

裸足に海水は冷たくはなく
貝殻の欠片を拾い上げても
その尖った先は指を刺さない

(きっと夢なの ....
雨音は冷やかな旋律を奏で
五線譜に無数に付いた蕾は
一瞬、水晶となり地表に還る

傘は持たないのだと
わらって言い切るきみの肩は
今頃震えていまいか
そう告げればまた
きみはわらって
 ....
今日の風は西から湿り気と
憂鬱の温度を運んで
まだ頑ななガクアジサイの毬に
青、を少しずつ与える

日増しに色濃いぼんぼりを灯して
夏空の予感を語るのは
滲む青と翠と


傘の冷た ....
背中が守られている
抱擁でなく
囁きでなく
いつも見えない後ろが
守られて温かい
そんな気がしている

口元が護られている
くちづけでなく
言い付けでなく
冷たい言葉が洩れない ....
遠雷が止み
雨の最初の一滴が落ちるまでの
僅かな静寂に
こころ、ふと無になり
空の灰色を吸い込む

程なく落ち始めた雨粒に
再びこころには
水の班模様が出来て
潤う、のでなく
惑う ....
車窓の視界が
きらめく波でいっぱいになり
埠頭を渡る風の翼が
一瞬、かたちとなって見えた午後

岸壁の釣り人は
ただ垂れた糸の先と
深さの知れぬ水底近くを
くろい海水に遮られながら見つ ....
あんなに降っていた桜は
何処へ流れていったのだろう
夜の手がそっと集めて
すこし北の、
山並みを越えたところへ
風に溶かして運んだのだろうか


翠を湛えた葉桜は
それはもう、
ひ ....
波が編む細やかなレースが
爪先の向こうで結ばれてはほどけ
刻と陽射しは
翡翠や白の模様をすこし深くに施す

水平線、と呼ぶには平らな
空と海の境界を見ながら
こうして言葉を探す自分を思う ....
花曇の四月から
薄灰色の雨が零れる
桃や枝垂れ桜の
薄紅のあいだから
無垢のゆきやなぎは零れ
春雷の轟きに驚いてか
ちいさなゆき、を降らせている

その様子は
あまりに白くて
白、 ....
終焉の華やぎを纏い
空いっぱいに広がる桜の隙間を
北風が逃げてゆく
見上げれば天晴の青は淡く
春を深く含んでいる

息を吹き返した芝生の向こうでは
まだ親指姫の誕生しないチューリップの固 ....
仄白く明けてゆく空と
暦の眠りから覚めた蕾が
共鳴して
三月の和音を弾く

冬を忘れた陽射しは甘く
僅かに紅を挿した絹の切れ端に
はなびら、の名を与える

こころにある哀しみや空洞を ....
春の気配に恋、を思えば
こころが羽根を持って
菜の花畑の上を旋回する


拙い愛情が
地球上のすべてだったあの頃に思いを馳せると
おぼろに陽炎は立って
咲き競う花の匂いが
わたしを空 ....
窓硝子を挟んで
浅い春は霧雨に点在し
わたしに少しずつ朝が流れ込む

昨夜見た夢を
思い出そうと
胸を凝らしたら
微かに風景が揺れた

なかば迷子の眼で
周りを見渡 ....
サテンの光沢まばゆく
風が雲の緞帳を翻すとき
ひととき白日夢に眩む

まだ蕾、とも呼べぬ小さな膨らみは
幼すぎて花の名前を知らない

その風の名残のなかで
わたしは繰り返される春を
 ....
不愉快な覚醒が
北寄りの強い風で更に増して
両手の無意識がコートのポケットを探す
ひんやりとした裏地や
捨て忘れた入場券に
指先は触れているが
今はそれより風から逃れたい


月 ....
たりぽん(大理 奔)さんの銀猫さんおすすめリスト(133)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
冬便り- 銀猫自由詩18*07-11-30
夜のさかな- 銀猫自由詩23*07-11-25
雲場池、入水- 銀猫自由詩15*07-11-10
午後の水平線- 銀猫自由詩11*07-11-5
父のこと- 銀猫自由詩16*07-10-24
ひとり- 銀猫自由詩14*07-10-3
硝子の唇- 銀猫自由詩12*07-9-20
浜辺のうた、かた- 銀猫自由詩34*07-9-12
九月のみずいろ- 銀猫自由詩28*07-9-3
夜間飛行- 銀猫自由詩14*07-8-15
夏列車- 銀猫自由詩23*07-8-6
ホウセンカ- 銀猫自由詩26*07-7-28
七里ヶ浜にて- 銀猫自由詩25*07-7-15
輪唱- 銀猫自由詩15*07-6-27
黒点- 銀猫自由詩19*07-6-15
夢の浜辺にて- 銀猫自由詩17*07-6-10
六月の調べ- 銀猫自由詩25*07-5-30
夏までの波- 銀猫自由詩21*07-5-28
初夏の背中- 銀猫自由詩19*07-5-23
雨の伝う肩が- 銀猫自由詩22*07-5-15
夢釣り- 銀猫自由詩15*07-5-5
みどりのスケッチ- 銀猫自由詩15*07-4-27
海風- 銀猫自由詩22*07-4-15
春雷、残響- 銀猫自由詩19*07-4-9
擦れ合うゆびさきで- 銀猫自由詩15*07-4-5
春の和音- 銀猫自由詩25*07-3-28
いつか空から幸福が降る- 銀猫自由詩32*07-3-21
朝の名前- 銀猫自由詩37+*07-3-12
さくらいろ- 銀猫自由詩24*07-3-1
ふゆのさかな・2- 銀猫自由詩25*07-2-17

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