交番の蓋を開けると
砂漠が広がっていた
砂漠には机が置いてあった
引き出しはすべて
取り外されていて
古い思い出は無く
新しい思い出も
もうしまえなかった
雨上がりの
虹がか ....
[郷愁]
昔
小学校の理科の時間に
習った
雨は
空にある記憶の破片ひとつひとつに
水蒸気が付着し
それ自身の郷愁の重さに耐え切れなくなったとき
地上まで落ちて来るんだと
....
君はまだ歌を歌っている
昔から若かりし頃の君のことを知っているし
場末で歌う今の君の姿も愛おしく感じるけど
舐めるしかできなくなったバーボンのオンザ
ロックがこんなに辛いとは知らなか ....
真っ赤な毒で満たされた盃を
一息に飲み干した
人生の不遇も悲しみも
すべて人のせいにして
生きてきた贖いとして
置き去りにしてきた不義理の数々
あなたは思い出すだろう
人の優 ....
雪明かりの中、ひさしぶりに散歩に出る
獣たちの足跡が点在し、ときどき走っては敵に怯えるように急ぎ足になったり、少ないながらもその痕跡が塗されていた
時折、小声で独り言で事を説明する私は酷く滑稽であ ....
冒頭に流れる陽気なラジオ
今年一年を振り返ってる
あてもなく車を走らせながら
あなたとの結末を思い出してる
ねえ、気付いたかい?
クレジットの旋律が物語全体と同じなんだ
側 ....
空がとても青いから
ぽろぽろ涙を流します
ハンカチを持っていないので
涙を拭うことはできません
地図を持っていないので
トコトコ家に帰ることも難しくて
夕陽が沈む頃 ....
肉体は、しわだ
ぼくのどこを切りとっても、まっすぐなところはすこしもない
ぼくの中には四角も三角もない
不明瞭なしわだけで、ぼくは構成されている
まっすぐな線を見た時の高揚は、ぼくがしわである ....
なぜひかりがさしている
なぜがたがたとゆれている
あなというあなからたれながして
うつくしいていでいきている
ぶってほしいつよくつよく
あきらめてほしいきつくきつく
きみはてち ....
小指の赤い糸は
昔切れてしまったのに
どうしても
元に戻したくて
手繰り寄せたのは
赤くもない色の糸だった
生きるって
そんなことの繰り返しだな
僕は少しだけ可笑しくなった
黒い写真は我々に何を語ってくれるだろうか
干からびた
噴水の
中を走る
純粋さ
岩の
....
松本さんは重度の統合失調症で
時々大声で叫ぶ
その後にぼくとハグをして泣く
ぼくは背中を撫で、ポンポンポンと軽く叩く
ストレスで叫んでしまうと言う
お酒がないのでぶどうジュースで乾杯もす ....
煙草を吸うと体が痛むから
痛む体で起きることになるから
今朝は薬を多量飲んでやった
体は変調をきたし
今
とても気分が宜しい
光りあるところに影があり
この
気分の良さもの ....
はにかみも初雪のごとやがてとけ
あたしのぜんぶをあげる
いろんなひとにあげる
すこしずつ こまかく ひとつづつ 丁寧に
あたしのぜんぶを 髪の毛一本まで
あたしのぜんぶをもらってもらえるような努力を
あ ....
若いなあと思いつつ同じフレーズでまた泣けるフジファブリック
花を抜くのも潔いのが名ガーデナーらしい
ビスが一つ落ちている。もう元の場所には戻らないだろうな
歩行者一人行かせて不満げな ....
ハゲちらかしたベンと
昨日、一時間だけ話した
初めて会ったときから10年経って
えらくかわっちまったなあ、って去年
思ったんだぜ、って言ったら
ベンは頭を掻いて
毛髪が爪の間に ....
星のような脆さで光っていた
鳥達が言葉を持ち
海を渡っていく
変わっていくことが分かっていた
愛だっていつか干上がるだろう
けれども僕たちの生活は
今のところまだ
星のような脆さで光 ....
過敏なくちびると
小さな肩がわずかに揺れて
憂いを含んだ少女の横顔の様な夕刻があった
すべて白くなってしまった冬の十二月はひさびさに晴れ
冬のただ中の日常に泳いでいる
十二月は未だ真冬の ....
ふるい夢をみた
ふゆの朝
たまごが2個の目玉焼きは
血が混じったために
スクランブルエッグになった
またつくればいいさとあなたはいう
ギンガムチェックのテーブルクロスに
あた ....
体は知るのだろう
その影を
目にすることで 存在に
心はあると
それを想像することで
この空っぽの箱の前から そして
どこに行くというのだろうか
砂を入れた 僕は そこから
一体 ....
世界が 大きな空洞なので
水平線が見えた
海が見えた
白い 掻き傷が あるのか無いのか
どうしようもなく なにもかもが
影
倦み果てた貌で
あなたは 眼に映る ....
桟橋の果で水につま先をぬらす
少年たちと少女らがいて
軽トラからもれるラジオを背景音に
秘密をはじめようとしているところ
心にうまれる底のない穴に
無意味な詞ぽつりを吹きこめながら
指 ....
あなたはくちびるを固くとじて
わたしは
かみなりをきいていた
無人でない駅のひとごみ
ベンチに残る
前のひとの温度
夏 情欲とみまがうほど
はげしい雨が降って
わたしは乱雑な鞄のな ....
ハンドルネームで
くっそつまらない
鳥肌もんの自称詩を
他人に見せて喜んでいる
自称詩人は
覆面して素っ裸で
女子中学生を追いかけ回している
超ど級の変態と同じだからな!
忘れんな、ボ ....
「あなた自身、自分では気づいていない暴力性を持っている」
ある占い師に言われたその言葉が、
私を救っている。
「自分が他人にどう思われているかについて不安になり、
他人との交流や人前で ....
{引用=習作たちによる野辺送り}
鏡の森から匂うもの
一生を天秤にのせて
つり合うだけの一瞬
混じり合い響き合う
ただ一行の葬列のため
*
軒の影は広く敷かれ
植込みの小菊は ....
とろりと金色の滴りは オリーブや椿や葡萄の種から得たもの
蓮から採った精の封を切り ボウルに張った油におとす
傷を いつくしむこと
じくじくと痛む恨みを切りひらけば
妄念の脂が現れ 穢 ....
ははおやは居酒屋{ルビ居酒屋=いざかや}をしていた
食卓にはいつも
カラリと揚った
塩こしょうの効いた手羽先だった
から揚げは食べたことがなかった
小学生のぼく
肉を指で ....
いつかの初雪はみぞれでした
おとうさんもおかあさんも
いつもより暗くいつもより早い
そんな朝でした
いつかの初雪はみぞれでした
バス待つみんなが
弱くなりつつあるそれを
寒そ ....
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