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男は簡単だった
周りの人はみな
おまえは簡単だ、と言い
いたって普通だった男の両親は
なぜ普通の自分たちから簡単な子供が生まれたのか
死ぬまで不思議がった
時間があると男は海を見に ....
ふしあわせになればいい
あなたの大事なヒトが
嘘つきで
ルーズで
借金持ちで
指名手配で
全部君のためだよって自分のためで
どんなつまらないミスにも言い訳がデフォルトで
甲斐性 ....
詳しいことは受付でお聞きください
そう言われて男はあたりを見回すが
どこにも受付などない
大切な用件なのだ
思い余って
受付はどこにあるのですか
と再び聞いてみた
あなたが受付です
胸 ....
失った昨日を探して駆けた
太陽は眩しいから怖い
明日は だらしなく口を空けて僕らを飲み込もうとするから
嫌い
失った機能を求めて泣いた
大切なものは消える
心 ....
男のズボンの右ポケットは
いつの間にか上着の胸ポケットに繋がっていた
えいっ、と腕を突っ込めば
指先が胸ポケットからにょきりと出る
それが生きていくうえで何の役に立つというのか
試し ....
寂しさを紛らわすひとり遊びはもう飽きた
飽きたからといって、呼吸は止まらないし
心臓も未だ体中に血液を送り続けている
黒く長い髪は暑さに弱い
それでもいつまでたっても
迎えはこないんです ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
いつもいつもいつもいつも
いつも
犯した過ちの記憶を愛でて
断罪の刻を待ち焦がれながら
神様に祈りを
無垢な笑顔に怯え
追い立てられるように贋物の仮面を削った
....
私は怖い
おまえを失うのが怖い
なによりも大切なおまえを失うのが怖い
おまえを失うことを想像しただけで
立ち竦んでしまうほど怖い
心臓が砕け散ってしまうほど怖い
おまえを取り戻すためなら
....
男はふと時計を見た
まじまじと時計を見たことはなかったが
見れば見るほど
時計は自分に似ていた
あたりまえだ
男は時計なのだから
一方、時計はといえば
すでに着替えを終え
これから ....
ゆうらんせん に
ぼろぼろ つめあわされた
ちの かたまった
けあな が すっているのは
どすぐろい よだれ
くんしょう に にぎわう
きれいな まちに
ぺたり ぺた ....
交差する車両たちに囲まれて
立ち尽くす
PM7:00
正しい世界が見えるような
そんな気がして
見上げた
低い天井
あの日あこがれた草舟は
ゆっくりゆっくり 沈んで ....
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに
鶴を折っていました
それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき
その子 ....
肉を焼きます
美味しいですから
正解は無いにしても
ミスター
それは髭です
目にしみる煙です
ジーンズには穴が開いてます
そこからは夏が覗けます
もう少し肉の話を
美味し ....
真夜中 駅のホームでは
たまにカレーの臭いがする
それは風みたいにすぐに流れて消え去って
僕がもう一度白い息を吐いたときには
その形すら思い出せなかった
そういう夜は電車に揺られながら
....
ソーダ水の泡を見てたら
空を食べてみたくなった
どうしたらいいものかと
蟻さんに聞いたら
僕のうちにおいでってさ
蟻さんに連れられて家にいったはいいが
....
うたれるなら
雨がいい
果てるなら
土砂降りの中
世界が遠のく瞬間に
私は流星をみる
透明はいよいよ流線型に歪み
ところで季節も
そろそろ夜がいいではないですか
井戸水の表面に映った三日月の先が
赤みどろに染まった
折り重なった葉の上で
崩壊をたずさえた少女の落涙
狂いはじめた
鈴虫の羽に
つぶやきのような雨しずくが
....
わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか ....
雨に濡れるのを忘れた人が、信号の前で返り血を浴びている。どんよりと、ただどんよりと生きていけ。おまえの夜の病はいまだ進行中だ。魚群探知機に映る影の人びと。探そうとしてもけっして探し当てられない影の呼吸 ....
内気な髪の毛を燃やす
心臓の底で
なめらかな顎の先に
惑星がある
両腕の付け根のドアを開く
傷ついた銃声
傘の下で笑う
あふれる殺意で
階段を流れて落ちる
雨に
気がふれる
ゆがんで見える
横断歩道の白線が
濡れた足元のしみの
曲線が
....
ムーニールーがありんこを相手取って
裁判をしているころ
お日様は林檎を
真っ赤に染めて
林檎はムーニールーに食べられるのを待っている
カタツムリが雨の中
小さくくしゃみしたけれど
ム ....
ていねいな言葉をかさねて
だれがぼくの心を知るだろう
ひからびたぼくの腕の中で
目を覚ました人が
夢を見るのはもういやだ
と言いました
さめたぼく ....
コンクリートの丸いもようは、踏んじゃだめよ
って、
しあわせになれないから
って、
きみが言ったとき
さっき
二度ほど踏んでしまったぼくは
ちょっと泣きそうになって、あわてて
声をだし ....
雨音がショパンの調べに聴こえたら
もう頭が足になって
無軌道に駆けまわる
黒鍵の数だけ言葉を投げ出し
白鍵の数だけ吐息を飲み込む
あれは白じゃなくて乳白色なのかも
踊ってるのは ....
すべてが終わると
その町にも銃を担いだ人たちがやってきた
彼らはこの国の言葉や
この国の言葉ではない言葉で話すものだから
町の人々はますます無口になった
少年は喧騒と沈黙でごったがえ ....
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