見えなかった
どうしてだろう
愚痴をこぼし
不平不満ばかり並べていた日々
さえぎられていた視界に
何を見ていたのだろう
誰と比べていたのだろう
私は祝福の中を ....
詩人の魂は宙を漂う
世界の響きを繊細に読み取り
心の琴線の僅かな震えを感じ取る
言の葉の海に身も心も投じ
狂おしく悶え苦しむ
時に歓喜の旋律を奏で
時に絶望の闇の淵 ....
あの子はいつも笑っている
オジサンなのに子供みたいに笑っている
あの子はいつも見つめている
人の悲しみ 苦しみ 悩みを見つめている
仕事はあまりしないけれど
みんなにどや ....
本当のことを言ったら叩く世界
その男
生まれたときは貧相で、猿にも似た面立ちで
決して可愛い泣き方もせず、
その男
幼児となって生意気に
おさがりは嫌だと駄々をこね
その男
友も作らず師も知らず
世話を ....
その川は病院の屋上にあった
男はゆっくりと川に入った
早暁の屋上には看護師はいなかった
監視カメラも男をとがめなかった
男の中で長年…
そう 半世紀ものあいだ
渡りきれな ....
何故今頃になって
勝手に行ってしまった
お前の骨を洗わなくてはならないのだ
だが、
俺はお前の遺骸など
決して見たくはなかったんだ
お前の屍のぬめりなど洗いたくはなかった
約 ....
知らないあの子。知ってる私
話せるのは知ってる私
知らないあの子には話せない
目を見てなんて会話にならない
あの、えっと〜、あれ、
顔を赤く染めて言葉にならない
子どもならそれでもいい
....
初めて君に遭ったとき
君の瞳によぎった喜びの表情を
俺は見逃さなかった
人生で与えられる物は少ないが
創造という風をいつかつかまえることができたら
上出来な人生といえるだろう
醗酵 ....
昼間の火照りから解放された夕暮れ
ビルから流れ出た人たちが
睡蓮の群生する池の畔を帰っていく
池の畔のベンチに若い女が独り
....
静寂
街の喧騒から離れ
柔らかい羽根の中 疲れを癒す
遠くから誰かの放つエナジーが波形となり伝わる
独り蛍光色に染まり
人工ワールドの球体を転がる
浮遊するこの世の細 ....
土曜の午後
甘ったるいコーヒーを飲みながら
考えている
風は南風
明日は梅雨入りの様だ
蛙の鳴き声がうるさい季節に
少し戸惑って
答えを急いでいる私
薬指に指輪がない君は ....
朝の光に濡れた電車には
七人掛けのシートに七人が腰を下ろし
つり革にも人の手がゆれていた
厳つい男と痩せた男の間に
若い女がはまり込み
ゆらーり ゆらりと
自分の世界で揺れ始めた
....
定期便さえない南の離島で
ひっそり平和に暮らす家族も
獣道のような細い山道の奥に
密かに暮らす人々も
二十一世紀は容赦なく襲いかかり
その存在を世界に知らせてしまう
ここに珍しい十八 ....
霧吹きのような雨はふかみどり
胸の奥まで吸い込んで
わたしは森になる
しばらくすれば
じゅうぶんに水を含み
耳を傾ける
彼らは
永遠を指し示すこと ....
久し振りに訪れた賽の河原
幼子が鬼に虐められていないかと降り立てば
広々とした河原には鬼が一匹 所在曲げに石をつんでいた
おめえ 何やってんだ
子どもが少ないが
まさか食っちまったので ....
人は生死の境をさまようとき
花園を見ると言うけれど
地獄の蓋が開くという彼岸に
見たのは色を失った現世だった
闇の空から眺めていた
墨色の広大な砂場には
まばら ....
雀始巣
すずめはじめてすくう
佐藤さんちの玄関の
パンジーの寄せ植えから
オハヨウを拾い上げて
鈴木さんちのベランダの
古い室外機の裏側から
サビシイを探し出して
....
かなしみが河いっぱいにあふれて
よろこびも一緒にいる
まるで流し絵のように一緒にゆるやかに
色をなしてゆくもう痛みもない河畔に
ちょっと嘘つきでよゆうのない自分が居て
漢字変換ではも ....
コンビニエンスストアーは小遣いがあるときはぼくらのポケットだが
だいすきなしょーもないもの以外はたいがいなんでも売ってるみたいだ
いつも仕事に出かける時は装備の点検をして
会社でも点呼をうけ ....
空から
剥がれた薄皮が
ふうわり落ちてきて
森と街と人の
あらゆる隙間を
滲ませる
君から
届いたLINEが
妙に素っ気ないのが
どうでもよくなるくらい
僕の指と吐息は
....
おなかの小魚はときどき小ちゃな声で鳴くたいせつな奴だ
電子ジャーの独り言を翻訳しながら夜が明ける
痛みっていつも友達だったなこれからもよろしくな
僕の休日は病院に奪われてディスカウン ....
笑っている或は微笑んでいるきみを
僕は安心して受けとめるだろう
ボディランゲージとして
でもひとりになったときの
君の顔をしらないんだ
あっけらかんとしてあの時は不倫しててね
と皆 ....
指で感じて
頭で捏ねくり回して
指で嘘をつく
唇で感じて
頭で探し切れず
唇で誤魔化す
背中で感じても
頭は留守で
背中は語れない
爪先で感じても ....
花粉も埃も取り去った無菌室で
くらしていますが
危険はどこかに潜んでいて
いつも隙をうかがっているのです
みがききぬかれた手すりが
不思議なことに
摩擦をなくしていたり
すべらないゴ ....
なんとなく
気配を感じて振り向くと
君は精一杯まん丸い目をして
じっとこちらを見つめていた
一番好きな映画の
一番良いシーンを横目で追いながら
僕は君の真っ直ぐな視線に負けて
し ....
風は光と影に囁き
透明な空気を細やかに主張した
何故なら
ある歌の中では 黒が白となり
ある叫びの中では 赤が青になるからだ
透明感のある言葉は一体どこに隠れたのか
人の主張は圧縮され ....
単焦点のレンズをつけて
春を探しに出かける
低い雲が垂れ下がった街は
名前の無い色合いで
マフラーの内側の囁きは
聞き覚えの無い言語で
嫌なものは
ぼんやりとしか見えない
....
真っ赤な嘘っぱちを
誰も見抜いてくれなかった
橙色の夕日にとろけそうな
もはや追う者もいなくなった
逃亡者の長過ぎる影
気味の悪い戯言を並べた
ノートの頁は哀しく黄ばんで
....
どれくらい時間が経っただろう
もうずっと
海の見える街で
透明な観覧車に乗り
まわっている
昼間の
高い位置からの眺めにみつけた
泳ぐ船体はすこしずつ南方へ向きを変え
遠ざ ....
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