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  断捨離


芸術家とは無駄な作業をする人のこと

陶工は焼き上がった作品を
ほとんど破壊するという
書道家も高価な墨と高価な硯で文字を書き
高価な紙もろとも破り捨てるという

 ....
その川は病院の屋上にあった
男はゆっくりと川に入った

  早暁の屋上には看護師はいなかった
  監視カメラも男をとがめなかった

男の中で長年… 
そう 半世紀ものあいだ
渡りきれな ....
  
昼間の火照りから解放された夕暮れ
ビルから流れ出た人たちが
睡蓮の群生する池の畔を帰っていく

池の畔のベンチに若い女が独り
 ....
朝の光に濡れた電車には
七人掛けのシートに七人が腰を下ろし
つり革にも人の手がゆれていた

厳つい男と痩せた男の間に
若い女がはまり込み
ゆらーり ゆらりと
自分の世界で揺れ始めた
 ....
定期便さえない南の離島で
ひっそり平和に暮らす家族も
獣道のような細い山道の奥に
密かに暮らす人々も
二十一世紀は容赦なく襲いかかり
その存在を世界に知らせてしまう

 ここに珍しい十八 ....
久し振りに訪れた賽の河原
幼子が鬼に虐められていないかと降り立てば
広々とした河原には鬼が一匹 所在曲げに石をつんでいた

おめえ 何やってんだ
子どもが少ないが 
まさか食っちまったので ....
   人は生死の境をさまようとき
   花園を見ると言うけれど
   地獄の蓋が開くという彼岸に
   見たのは色を失った現世だった

闇の空から眺めていた
墨色の広大な砂場には
まばら ....
花粉も埃も取り去った無菌室で
くらしていますが
危険はどこかに潜んでいて
いつも隙をうかがっているのです

みがききぬかれた手すりが
不思議なことに
摩擦をなくしていたり
すべらないゴ ....
白い都会の硬い土塁の中
あなたが灯をかかげれば
わたしは虹を灯す

遙かなやまの森の中でも
あなたが歌えば
わたしもさえずる

海の彼方の小さな島で
あなたが跳ねれば
こころは ....
目をつむると見えるものがあった

遠くの山頂に輝く光
道は途中で草むらに隠れ
どこまで続いているか見えないけれど
どこかに沢が有り
林間に小道が有り
小動物の通る道など
きっと到達する ....
空と海の混沌に
突き刺さる黒い陸の先端
に白い少女が立っている

淡い彩りが現れ
生まれた風が海を押す
押されて海は岬に駆けのぼり
少女に白い言葉を飛沫く

潮鳴りにひそむ遠い記憶の ....
鴉の声が窓ガラスをすり抜け
ベッドに潜り込んでくる
戸外では新しい世界が始まったらしい

部屋の中には 
昨夜 
掘り返した青春が 
アルコールに萎えて床に散らばり
描き上げた明る ....
美女と母の胸


人間にきわめてよく似た
いや 人間以上に人間らしい美女が
幼児Aに「カワイイネ」と言ってキスした
彼は大声で泣き出し母の胸に顔を隠す 

きれいなお姉さんにキスされて ....
閉め切った窓のすき間を
すり抜けた時報のチャイムが
昼寝のベッドへ潜り込み
勝者を確信していた私の手が
上げられる前に目を覚まさせる
惜しいことをした

確かに戦っていたのだ
始め ....
夕陽に向かって走っていた電車が停まった。長い間揺られていた人々は立ち上がった。この先には もうレールはなかった。が 旅が終わったのではない。
ここからは ひとり 自分の足で歩く始発駅でもあった。過去 ....
箪笥の奥深く秘められていたいくつかの小箱
おそらく母の物であろう歯の欠けた櫛に
出合ってわたしの心が波立つ

そして 夭折した兄たちの名に混じって
ボクの名が乾ききった小箱

それは ....
           今年も八月が終わります。
           もう、命日の回向すらありません。
           でも…

    * * *
 
  色褪せたフェルトで覆われ ....
ちょっとした異性の情けに
心が前を向き
元気になって意気上がり
意気上がり
浮かれ心の有頂天

天に昇れば
あとは 落下
後ろを見ては 沈む心
取り巻く人の
心を上目遣いに覗き込み ....
疲れた顔で見舞いに来ないでほしい

わたしの看護のために
あなたを育てたのでは無い

あなたはあなたの生き方で
社会の仕事を果たさねばならない
それがあなたの人生

わたしの看護が加 ....
盤面に行儀良く並んだ歩兵
敵の攻撃を真っ先に受け将を守る
時には味方にも無視され
時には邪魔もの扱いされる歩兵
敵陣深く突入して将となるも
あっさり討ち死に
そして 次には
味方だった将 ....
夕焼け小焼けは ビルの先
から降りて来ない都会
谷間でうごめく人々は
電飾を着飾っていて
日暮れがない

○○山の△△寺(でら)はビルに飲み込まれ
夕暮れの梵鐘は口を閉じて
頭の中で鳴 ....
玩具売り場の前から幼児の泣き声が
人の溢れた地下街広場に響いて
若い夫婦の困惑が子供を叱る

幼児と親と対立する主張は
地下街の雑踏を立ち止まらせ 
黙らせる

  己の主張が通らない ....
その男は 
幾つも電球を並べた灯りの下で
ぼくの胸を切り開き不機嫌な心臓を取り出した
心臓の中に豚を入れ調子よく動かそうというのだ
更に男は心臓のあった空洞を覗き込み
ぼくさえ知らない潜み物 ....
夕焼けがビルの窓から覗く頃
わたしの時間が始まる

昼間着ていたスーツを脱ぎ捨て
わたしを取り出して
カフェの片隅に
あるいは
居酒屋の椅子に乗せる
女は二人目の子どもを男の手に渡すと
彼岸に渡った子を追ってすーっと消えた
こちらに残した子は 
父も祖父母も伯母もいて
大勢の大人に囲まれて
春も夏も秋もあって
冬も暖かい部屋
十分な食 ....
サラリーマンが命を担保に金を借り
建てた家々の集落
書割のような中流階級
文化を支えたピアノ

音の断片が集落の中を
誇らしげに 恥ずかしげに
歩いていたのは何時のころだったか

口 ....
切り裂かれた皮膚から
去っていった細胞が
シクシク泣いている

あの日開いた傷口は
新しく育った細胞にふさがれて
戻る場所はもうない
西の山に陽が近づいて
1日が終わろうとしていた
男は川面すれすれに延ばしていた竿をあげ
帰り支度を始めた
ゴカイを川に返し 椅子をたたむ
通りがかりの人が声を掛ける
 「連れましたかね」
 ....
川を越え海を越えた向こう岸へなど
渡ることは考えもしないけれど
対岸に上がった火の手を見付けて
騒いでいる  
  ディスプレイの中で
  銃を構えてうろつく男を眺め
  騒いでいる
 ....
   迷刀スパイ

ぼくが国民学校に通っていたころ
鉛筆削りや竹細工には
折りたたみナイフ「肥後守」を使っていた
喧嘩のときも肥後守をちらつかせれば相手はひるんだ

その頃
日本では本 ....
為平 澪さんのイナエさんおすすめリスト(43)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
断捨離- イナエ自由詩3*16-9-16
ある男の命日に- イナエ自由詩11*16-6-20
睡蓮池の畔にて- イナエ自由詩14*16-6-6
スマートフォンの間で- イナエ自由詩13*16-5-30
21seiki- イナエ自由詩6*16-5-9
賽の河原- イナエ自由詩6*16-3-22
地獄- イナエ自由詩7*16-3-22
塀の中が生きる世界の全てだとしても- イナエ自由詩16*16-2-15
あなたに- イナエ自由詩16*16-2-2
「目をつむると」_ー歳を取るとはこういうことか(9)ー_- イナエ自由詩16*16-1-25
暁光- イナエ自由詩20*16-1-7
宴の翌朝- イナエ自由詩14*15-12-17
美女と母の胸- イナエ自由詩10*15-11-11
未完のまま- イナエ自由詩11*15-11-8
終着駅- イナエ自由詩17*15-10-12
臍帯- イナエ自由詩22*15-9-2
叔父さんに- イナエ自由詩10*15-8-24
こころころころころがって- イナエ自由詩15*15-5-25
娘よ- イナエ自由詩16+*15-5-11
「歩」の少年- イナエ自由詩10*15-4-30
夕焼け小焼けで…- イナエ自由詩7*15-4-23
自己主張- イナエ自由詩17+*15-4-16
開胸手術- イナエ自由詩17*15-3-29
夕焼け- イナエ自由詩7*15-3-25
賽の河原- イナエ自由詩6*15-3-23
ピアノの去った日に- イナエ自由詩16*15-3-13
傷跡の痛むときに- イナエ自由詩16*15-3-5
平和を釣る- イナエ自由詩16*15-2-20
対岸にいて- イナエ自由詩10*15-1-9
言葉の切れ味2_迷刀たち- イナエ自由詩14*15-1-7

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