初冬の初雪の舞う中
風が木立ちの間を勢いよくすり抜ける
山の頂きから頂きに掛けて 
送電線の唸る音が聞こえる
人造湖は波打っている
一瞬ふわっとしたかと思うと
空は洗われ 雑木林は明る ....
なにかを期待するわけでもなく
木は透明な思いで空を見上げていた
野鳥の尖った飛翔が
空間を切り裂くのを楽しんだり
みずからが浄化した
清廉な空気を謳歌している

人がまだいない頃
木は ....
いくつかのブラックホールを超えて
僕の船は宇宙を漂っている
星はきらっと輝いたかと思えば
それは一瞬のきらめきであり
あとは黄銅色の鉱石が漂う空間だった
宇宙に風はないというが
少しだけ風 ....
きれいに折りたたまれた生活をそれぞれが晒している
涼やかな風を目元にたくわえ、定めた先に澄んだまなざしを向けている
生あたたかさにはしっかり蓋をして、静かに四隅を整えて桐の引き出しに仕舞い込む
 ....
 私は警察署に来ていた。
あれだけ面倒くさい手続きやら、身辺調査やらをクリアし、ようやく手に入れた銃と所持許可であったが、止める時はなんの造作もないものだ。
書類手続きに慣れていない新任の警察官は ....
 父は十代後半に大原に入植。昭和二十年前半だったと思われる。
三十三年に私が生まれ、開拓村で生まれたので隣人が拓也と名づけたと聞く。
妹は五年後、自宅で産婆のもと生まれたのを記憶している。
 幼 ....
わたしはもう
石になってしまいました
かつてわたしにも
水だった時代があり
白濁した粘質の水となり
やがて泥となり
固まっていったのです
土として長年を過ごし
生き物をすまわせもし
 ....
八月二十日
土を舐める、ミミズの肌に頬を寄せる
現実とは、そういうものだ、そう言いたげにその日はやってきた
希望は確かにある
廃道の、石ころの隙間にひっそりと生をはぐくむ草たちのそよぎ
ゴー ....
君の温度がまだ残る部屋、その隅に、残された一つの残片
治癒途中のかさぶたの切れ端が、静かに残されている
物体がおおかた四角なのは、きりりと押し固めることができるようにと、誰かが考えたのか
それと ....
金木犀が香る午後
陽射しがきらきらと
金色の帯を散らしている
コーヒーにミルクを入れて
スプーンで陶器をこする音
きみの声が
褐色の液体にミルクとともに
くるくるとかき混ざられて
やが ....
峰と峰とのつなぎ目に鞍部があり、南北の分水嶺となっている
古い大葉菩提樹の木がさわさわと風を漂わせる
峠には旅人が茶化して作った神木と、一合入れの酒の殻が置いてある
岩窟があり、苔や羊歯が入り口 ....
貴方の声が
虫のように耳もとにささやき
私の皮膚を穿孔して
血管の中に染み込むと
私の血流はさざめき
体の奥に蝋燭を灯すのです
貴方のだらしのない頬杖も
まとわりつく体臭も
すべてが私 ....
久々に友人宅を訪問することにしたが、手持ちは持たない
既に十一月の末で、もうすぐ今年の最終月、言ってみれば大嫌いな季節だ
冬なのか晩秋なのかさえはっきりせず、グダグダと薄ら寒い風が吹き
みぞれか ....
裸の冬がくる
十二月の姿は、あられもない
わたしのからだは白くひらかれ
とめどなく上昇してゆく
まぶしい白さに混練され
細胞のように、奥千の分裂をなし
ひかりとともに微細な羽虫となる
白 ....
どこか
骨の
奥底に
黙って居座る
黒い眠りのような
小雨の朝

歯ぎしりする歯が
もうないのです
そう伝えたいけれど
そこには誰もいなく
部屋の中には
少年のまま
老いた私 ....
とある島があった
波は泡とともに、幾何学的に浸食された岸に打ちつけている
海水特有の生臭い香りが岸に漂っていた

かつて子らの声や、はしゃぎまわる喧噪も見られたが、今では数十人残るのみである
 ....

ひらひらした幸福が
街の中を舞っている
今日で地球が終わるので
皆は慌てて急いで楽しもうとしている
けっこうそれにしてもにこやかじゃないか
もしかしたら終わらないのかも、ね。
そのよ ....
白い平面に産み付けられた
色とりどりの有精卵が
液体の飛沫に刺激され
静かに食いやぶられる

ひかりながら溶液にまみれて息をする
数々のかたちの違う幼生虫が
白い平面を徘徊する
飛散し ....
飯場に着くと、俺たちは襤褸雑巾のようにへたり込んだ。ねばい汗が皮膚に不快に絡みつき、作業着は雑菌と機械油の混合された臭いを放っていた。風呂は順番待ちだし、俺たち人夫は泥のような湯船に浸かるしかな .... 夜、雪が降り止んだ頃、夜行性のノウサギはいっせいに跳ねだす
カンガルーのように飛び跳ねる後ろ足の腿の筋肉は巨大で
前足と後ろ足は途中で交差し、雪原を跳躍する
むき出した前歯をそっと樹皮にあてがい ....
ふと 空を見上げると
蒼かったのだと気づく
鼓動も、息も、体温も
みなすべて、海鳥たちの舞う、上方へと回遊している

ふりかえると二つの痕がずっと続いている
一歩づつおもいを埋め込むように ....
満月の夜、月はやさしく犬を見ていた
犬は不思議そうに眼をあけ、すっくと立ち
濡れた鼻をしながらあたりを一瞥した
犬は初秋の虫の音を
一心不乱に聞いていたのだが
ふと月明かりに、自らの何かが微 ....
むかし、三年ほど住んでいた中都市を車でめぐる
広大な敷地にいくつもの工業団地が立ち並び
その周辺には刈り取られた田圃が季節を煽るように敷き詰められている
なつかしい名の鉄工所や、古いビルもまだあ ....
私たちは降りしきる雨の中、草むらに腰を下ろし、川の流れを見ていた。
彼はしゃべり、私もそれに応えるようにしゃべっていた。
ただそれは、衣服の内を流れる雨水や汗の流れる感触を誤魔化すためだけに会話し ....
 

一、
草は静かに闇の中、葉に露をまとい、一日の暑さを回想している。
ヘッドランプのあかりに照らされた、それぞれの葉のくつろぎが、私の心にも水気を与えてくれる。
闇は静かに呼吸していた。 ....

罪深い朝よ
おまえはそんなにはりきってどこへ行くというのか
時空を超えて宇宙の滝まで行くというのか
俺を待ってはくれないだろうが
朝よ、おまえは嫌いじゃない

おまえが夜に吐き散らか ....
 
「山林へ」
いつものように山仕事の準備をし山に入る
ふしだらに刈られた草が山道に寝そべり
そこをあわてて蟷螂がのそのそと逃げてゆく
鎌があるからすばしこくない蟷螂は
俺たちと同じだ
 ....
 ふと誰かが呼ぶ声にはっとして玄関に出てみた。やや関西訛りのする初老の胡散臭い中年が立っていた。薬売りだという。昔ながらの熊の謂だとか、小さなガラス瓶に入った救命丸など、まったく利きそうもない薬をずら .... 昨日から降り続いた雪は根雪となった
近くの川は冷たく骸のように流れている
どこかで枯れた木の枝が
石と石の間で水流にもまれ
とどまっている
流木の体の中までしみこんだ水気が
さらに流木を冷 ....
春になったら握り飯をもって山に行こう
ほつほつと出狂う山菜たちの
メロディーを聴きに
ポケットの中には手帳と鉛筆をねじ込んで
いただきに立てば、ほら
風が眠りから覚めて
息吹を開始する
 ....
山人(182)
タイトル カテゴリ Point 日付
風のためいき自由詩3*17/10/23 21:29
とある湿原にて自由詩13*17/10/8 7:43
僕の船自由詩5*17/10/1 5:09
私はその家族を見ている自由詩4*17/8/11 15:08
雪原の記憶散文(批評 ...3*17/4/22 6:27
開拓村散文(批評 ...5*17/3/5 4:58
自由詩19*16/12/22 20:41
作業日詩自由詩5*16/11/26 6:55
無機質な詩、三篇自由詩3*16/10/7 11:08
未来自由詩3*16/10/7 6:07
峠の山道自由詩8*16/9/26 17:25
あな 二篇自由詩16*16/8/13 6:04
チラシの裏のはなし自由詩4*16/8/6 16:38
冬虫自由詩4*16/6/25 14:57
5/2自由詩12*16/5/2 7:04
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共通する無題詩自由詩5*15/11/8 7:07
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ノウサギとテン自由詩7*15/10/2 6:18
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山林の詩自由詩7*15/5/9 17:34
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