不思議であった
私の前にはいつも道があって
そこをしずしずと歩いている
ホウの葉とサワグルミの、早い落葉の上を
ソフトに足を進めている
まったくなんの期待もない山旅に向かったのだった
ただ ....
小雨の降る日の山林はいくぶん秋めいていて
ジョロウグモが盛んに巣を作っていた
心配はしていない、すべてはなりゆきにまかせなければならない
作業範囲を終わらせ、次の場所へ移動しようとしたとき
男 ....
大きくふくらんだ蟷螂の腹の中で聞こえるのは
ハリガネムシののたうつ音だったり
蟷螂の首がこっちを振り向くときの音だったり

灌木の陰からけたたましく鳴き飛ぶカケスの群れが
ときおり鮮烈な青の ....
 九月十九日、登山道除草九日目。先月中旬から土日を狙い、作業は遅々ではあるが進んでいた。
 未だ暗い早朝、ヘッドランプを点けて準備をする。ときおり、行楽に向かうのか県境トンネルの中を疾走する車たちを ....
 指の関節を鳴らす時のタイミングは
なにかの心の変わりめのときだったりする
心なし、光のようなものが見え隠れするときに
指の関節を鳴らしたいと思うのだった

 夏、すべてがドロドロに溶けだし ....
一週前はすでに名を失っていた
あの、生々しい日常が無機物となり
どこか、宇宙の隅で表情をなくして浮かんでいる
次第に私たちの星を眺める目が綴じられるだろう

部屋の中や作業場には
それぞれ ....
置き物のように私は雨を眺めている
そうして、こんなことをしている
今日はカタツムリになりたい
毛穴から雨が入って体液と合体して
私は雨のような生き物にすらなれそうだ

顔と脳は家においてい ....
失われつつある夏の日差しをむさぼるように
虫はうるさく徘徊し最後の狂いに没頭する
夏の影は次第にゆがみながら背骨を伸ばし
次の季節の形を決めてゆく

夏であった頃、それは誰もが少年であり、少 ....
 八月十五日、登山道の除草を開始した。四カ所の登山道コースを一人で受け持っている。トータル十日以上はかかるだろう。
 人は「大変ですね」と言う。大変なんかじゃない。変なのだ。変だし、思考的に病的です ....
 ありきたりな朝、乳白色の曇り空に雨は降っていない。そして呼吸をするかのように凡庸な声はホオジロだ。どうしてそんなに当たり前に鳴くのだろう。凡庸すぎるのは錆びたナイフで内臓を抉られるような残酷さだ。い .... 切り取られた日常を食むように
虫は草むらの一角で羽根をこすり続けている
四六時中、あたりまえのこと繰り返し
虫はこれから訪れるであろう、雨の予想をしているのかもしれない

痛み止めと解熱剤を ....
 もう無理はできないな、と最近感じる。年々、暑さが身に沁みて体を痛めつけているのが解る。昔はそうではなかった、というのは誰もいずれは知ることである。私も老いつつあるという事なのだろう。
 三週前から ....
遠くに見えるのは
幼子の手をひいた二人の影
エノコログサを君の鼻にくすぐれば
ころころと笑い
秋の残照に解きはなされた

浜茶屋のまずいラーメンをすすり
それぞれの砂粒が肌に残り
それ ....
 ヒグラシが鳴きはじめ、アブラゼミからミンミンゼミと蝉の声は種類を増し、最終的にはミンミンゼミが最後となる。里では秋に鳴くツクツクホウシなどがあるが、こちらではあまり聞かない。また、これから八月の声を .... 早朝作業を終え、とても静かで穏やかな時間の海に私は浮かんでいる
目玉の丸い魚がぬるりと肌を滑り、美しいクラゲが無表情に横切っていった

聞き飽きた野鳥の声と、イタイほど凡庸なニイニイゼミこの声が ....
 山域は乳白色となり、雨粒が地面を叩く音が、朝未明から始まった。決まって七月は、雨が多いと、誰彼なく言うのだった。
 雨が満ちてくる。体の中にも脳内にも、まるで人体は海のように静まり、宇宙のように孤 ....
 数日前の日曜日、めずらしく一日中掃除をした。夏の初めと晩秋に行われる保健所の巡回のための掃除である。年に二回、保健所職員と食品衛生指導員が各営業施設を見て回る。基本的になぁなぁな巡回でしかないのだが .... 詩はどこにも行くことがなく
ただそこにあるだけなのに
人は、いつも
どうしようもなくて
詩を書こうとする
詩は、ただ、そこに居て
詩など書かなくても良いのだと言っている
でも、人はとても ....
風が吹いている

山間の公園には、まだ雪が残っていて、その中、私は一〇時の休憩をしている
どこからか流れる水の音と、卵から孵った害虫が
去年の枯葉の上を不規則に飛んでいる
残雪には、あざやか ....
 五月二十六日、伐採した木が跳ね、左腿を痛打した。骨折は免れたがひどい打撲に悩まされ、丸四日休んだ。その後復帰したが、膝は痛くて曲がらず、その不具合な足で、やらなければならない登山道作業や林業作業をこ .... 霧雨の中を歩く
まわりの景色を眺めることが
とても残酷に思えて
なにか、
死んでいるのか生きているのかすら
わからなくなる

言葉をのみこんで
体の中で血にすることが
日々を生きると ....
 クジラの胃の中で溶け始めたような、そんな朝だった。朝になりきれない重い空気の中、歩き出す。歩くことに違和感はないが、いたるところが錆びついている気がする。明るい材料は特にないんだ。アスファルトの凹ん ....  ひどいもので、昨晩午後七時過ぎに眠くなり、そのまま朝の三時頃まで眠ってしまった。読みかけの本はわずか一ページしか読まないうちに眠りの世界へと入っていったのである。当然、朝は早くなる。尿意で目覚め、時 .... 虫はとにかく無表情で
平坦に、あるき
あしたのために飛ぶ
風が吹く日には、どこか
知らないくぼみにひそむ
考えることを
排除された虫は
あらゆるものに見向きもせず
ただ、生き
食らい ....
 昨日。朝からの雨と風で、もしかしたら最後の勤務は営業休止になるのかもしれない。と、スキー場勤務最終日を期待したが、営業休止の連絡の電話は鳴らず、今シーズン最後の道の駅で時間をつぶすことにした。三月に ....  今月に入り、上司と二人だけの作業が続き、精神的に疲れていた。月火は休みだったが、あいにくの曇りと雨。家にいるのは退屈だし、出掛けた。
 もうすぐ慣れた職場を離れ、あたらしい人間関係の中であたら ....
 十一月十七日、前日まで杉林の除伐を行っていたのだが、その作業をいったん中断し、ブナの植え付け作業を開始した。あらかじめ秋口に植え付け面積を刈り払っておき、そこに一・五メートル間隔でブナの稚樹を植え付 .... 複雑な小路が入り組んだ先に
ほんの小さな広場があって
そこに君の住むアパートメントがある

夢しか見えない君を訪ねる
思い切り太っていて
あらゆることに考えが歪曲し
君はすっかり君でなく ....
 一〇月二十五日、三時に起床しそのまま厨房に入った。単独行者の朝食が五時だったので、余裕を持って作業するためには早起きをする必要があった。とは言っても、グリルで魚を焼き、厚焼き玉子を焼くことくらいで、 ....  八月中旬から十月初旬まで、延べ十二日間の登山道や古道整備に出向き、そこそこの賃金を得た。夜明け前にヘッドランプを照らし、山道に分け入る時の締め付けられるような嫌な感じを幾度か重ね、ようやく解放された ....
山人(146)
タイトル カテゴリ Point 日付
山道自由詩6*21/10/18 6:05
鉄の膝自由詩6*21/10/9 13:19
森の奥で聞こえる音自由詩9*21/10/1 5:43
雲海散文(批評 ...4*21/9/27 19:28
九月の音自由詩10*21/9/16 6:54
一週間前自由詩9*21/9/10 5:28
出勤前自由詩9*21/9/1 6:30
晩夏自由詩10*21/8/25 20:28
山の中の孤独散文(批評 ...5*21/8/17 21:27
又吉直樹 劇場散文(批評 ...1*21/8/14 6:20
気配のない日曜日自由詩9*21/8/8 6:08
休養散文(批評 ...5*21/8/1 7:59
きりとられた残像自由詩8*21/7/24 5:33
夏はもう秋散文(批評 ...6*21/7/20 5:57
七月に風は吹かない自由詩13*21/7/18 7:51
七月の雨自由詩5*21/7/11 5:50
掃除散文(批評 ...4*21/7/8 6:58
夜明けなので詩を書こうとした自由詩9*21/6/26 4:23
作業風景より自由詩2*21/6/22 4:58
緑は濃く散文(批評 ...5*21/6/20 5:49
四月末、朝の描写自由詩7*21/6/2 5:23
藤の花自由詩17*21/5/22 7:05
早朝の散歩から散文(批評 ...3*21/5/18 6:14
虫の生活自由詩13*21/4/21 5:34
今日からは道の駅には寄らない散文(批評 ...7*21/3/15 8:07
野積海水浴場散文(批評 ...4*20/12/11 20:11
ブナを植える散文(批評 ...5*20/11/21 8:37
帰路自由詩11*20/11/16 22:01
紅葉狩り散文(批評 ...7*20/10/26 17:47
伐採散文(批評 ...5*20/10/18 9:35

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