失われつつある夏の日差しをむさぼるように
虫はうるさく徘徊し最後の狂いに没頭する
夏の影は次第にゆがみながら背骨を伸ばし
次の季節の形を決めてゆく

夏、それは誰もが少年であり、少女であった ....
 八月十五日、登山道の除草を開始した。四カ所の登山道コースを一人で受け持っている。トータル十日以上はかかるだろう。
 人は「大変ですね」と言う。しかし、大変なことなど何一つない。思い悩むことはないし ....
 もう無理はできないな、と最近感じる。年々、暑さが身に沁みて体を痛めつけているのが解る。昔はそうではなかった、というのは誰もいずれは知ることである。私も老いつつあるという事なのだろう。
 三週前から ....
遠くに見えるのは
幼子の手をひいた二人の影
エノコログサを君の鼻にくすぐれば
ころころと笑い
秋の残照に解きはなされた

浜茶屋のまずいラーメンをすすり
それぞれの砂粒が肌に残り
それ ....
 ヒグラシが鳴きはじめ、アブラゼミからミンミンゼミと蝉の声は種類を増し、最終的にはミンミンゼミが最後となる。里では秋に鳴くツクツクホウシなどがあるが、こちらではあまり聞かない。また、これから八月の声を ....  山域は乳白色となり、雨粒が地面を叩く音が、朝未明から始まった。決まって七月は、雨が多いと、誰彼なく言うのだった。
 雨が満ちてくる。体の中にも脳内にも、まるで人体は海のように静まり、宇宙のように孤 ....
 数日前の日曜日、めずらしく一日中掃除をした。夏の初めと晩秋に行われる保健所の巡回のための掃除である。年に二回、保健所職員と食品衛生指導員が各営業施設を見て回る。基本的になぁなぁな巡回でしかないのだが ....  五月二十六日、伐採した木が跳ね、左腿を痛打した。骨折は免れたがひどい打撲に悩まされ、丸四日休んだ。その後復帰したが、膝は痛くて曲がらず、その不具合な足で、やらなければならない登山道作業や林業作業をこ ....  クジラの胃の中で溶け始めたような、そんな朝だった。朝になりきれない重い空気の中、歩き出す。歩くことに違和感はないが、いたるところが錆びついている気がする。明るい材料は特にないんだ。アスファルトの凹ん ....  ひどいもので、昨晩午後七時過ぎに眠くなり、そのまま朝の三時頃まで眠ってしまった。読みかけの本はわずか一ページしか読まないうちに眠りの世界へと入っていったのである。当然、朝は早くなる。尿意で目覚め、時 ....  昨日。朝からの雨と風で、もしかしたら最後の勤務は営業休止になるのかもしれない。と、スキー場勤務最終日を期待したが、営業休止の連絡の電話は鳴らず、今シーズン最後の道の駅で時間をつぶすことにした。三月に ....  今月に入り、上司と二人だけの作業が続き、精神的に疲れていた。月火は休みだったが、あいにくの曇りと雨。家にいるのは退屈だし、出掛けた。
 もうすぐ慣れた職場を離れ、あたらしい人間関係の中であたら ....
 十一月十七日、前日まで杉林の除伐を行っていたのだが、その作業をいったん中断し、ブナの植え付け作業を開始した。あらかじめ秋口に植え付け面積を刈り払っておき、そこに一・五メートル間隔でブナの稚樹を植え付 .... 複雑な小路が入り組んだ先に
ほんの小さな広場があって
そこに君の住むアパートメントがある

夢しか見えない君を訪ねる
思い切り太っていて
あらゆることに考えが歪曲し
君はすっかり君でなく ....
 2020-10-26 一〇月二十五日、三時に起床しそのまま厨房に入った。単独行者の朝食が五時だったので、余裕を持って作業するためには早起きをする必要があった。とは言っても、グリルで魚を焼き、厚焼き玉 ....  八月中旬から十月初旬まで、延べ十二日間の登山道や古道整備に出向き、そこそこの賃金を得た。夜明け前にヘッドランプを照らし、山道に分け入る時の締め付けられるような嫌な感じを幾度か重ね、ようやく解放された .... キジバトがアスファルトのすき間の
塩化カルシウムを求めてやってきては
車の気配に飛び立つ
その柔軟で頑強な胸筋は
うすく乾いた空気を捉えては
スノーシェードの向こうへと飛んでいく
その屈強 ....
泳ぎ疲れた川魚の 
ため息が水面にうかぶとき
十月は訪れる
他愛もない 言葉のくずを散りばめて
だれもいない山道の清水に流してしまおう

季節は傾斜し 黙り始める
そのはざかいに ぼくた ....
 明け方に雨は上がり、比較的安定した天気予報であることを確認し家を出た。しかし、誰もいない登山口には未だ霧雨が降り、いやおうなしに雨具を着ることになる。この暗黒の迷宮に向かうような心境というのは、言葉 .... とてつもなく深い闇がやってきそうな夜
私たちはたがいに嘆き悔やみ
とりもどせない時間を語った

テレビはあいかわらず五月蠅い番組だらけで
MCの甲高い声だけが鼻についた

声帯をナイフで ....
 「本日、登山道の除草をしています。御注意ください」、と、コピー用紙にマジックで手書きしたものを車のサイドガラスに貼り付けたのは朝の五時五〇分。その後今季初の登山道の除草に分け入った。
 八月中に廃 ....
 

心なし風はためらいながら
言葉の破片を引き連れて
鬱蒼とした森へと向かう

真実は青く沈み
均された虚像は
幼気にしずまりかえる



ブルー
光沢のある青い魚が
 ....
 網戸の向こうには、山岳の稜線と薄明るい空がはざかいを浮きだたせている。草むらではコオロギなどの虫の音が、凌ぎやすい朝のうちにと盛んに音を紡いでいる。朝の涼風が頬にあたり、ひさびさのインスタントコーヒ ....  ここ二〇日ほど勤務や家業で、休みなしに働き、体に違和感を感じていた。
 朝方、今日の弁当は?と妻に聞かれた。十三日から開始した登山道・あるいはその周辺の除草作業だったが、そのきつさや膨大な作業量を ....
林床にはブナ林特有の雑木が生え
そこを刈り払い機で刈っていく
すさまじいヒグラシの鳴き声の海が森を埋め尽くし
私たちの耳に、錐もみ状に刺さっていく

急な斜面を足場を作りながら雑木を刈る
 ....
 久々に二時半に尿意で目覚めた。最近、あまり良質の眠りがとれていないのにと心でぼやきながらトイレに立った。寝床に入りもう少し眠りをと願ったが、最近また体重が増えた妻のいびきがうるさく、結局寝れずにその .... 廃田の草を刈っていると突然大雨となった
しばし、刈り払い機を雨の当たらない所に置いて
雨の中に立ったまま私は辺りを見ていた

これからのことを打ち消すように
雨は降りしきり、そしてまた
何 ....
 大白川登山口に着くと雨となり、当然誰も居なかった。レンタル簡易トイレがのっそり立ち、周りには雑草やらススキが生い茂っている。雨は次第に本降りとなり、雨具を着る。
今日を逃がすと次回はいつ行けるかわ ....
 
 どうやら私は死んでしまったようだ。
私は葬儀場の天井に実体の無い魂としてぼんやりと浮かんでいた。なぜ死んでしまったのか、よく思い出せない。体調不良になったような気もするし、何かの事故にあった ....
 コロナの影響で家業はさっぱりだったが、昨日は久々に朝から厨房に立った。昔から来ていただいている県内客の四名様。この人たちは少人数でやってきては、楽な場所で楽に山菜を採りたいと色々と突っ込みを入れてく ....
山人(181)
タイトル カテゴリ Point 日付
晩夏自由詩10*21/8/25 20:28
山の中の孤独散文(批評 ...5*21/8/17 21:27
休養散文(批評 ...5*21/8/1 7:59
きりとられた残像自由詩6*21/7/24 5:33
夏はもう秋散文(批評 ...6*21/7/20 5:57
七月の雨自由詩5*21/7/11 5:50
掃除散文(批評 ...5*21/7/8 6:58
緑は濃く散文(批評 ...5*21/6/20 5:49
藤の花自由詩17*21/5/22 7:05
早朝の散歩から散文(批評 ...3*21/5/18 6:14
今日からは道の駅には寄らない散文(批評 ...7*21/3/15 8:07
野積海水浴場散文(批評 ...4*20/12/11 20:11
ブナを植える散文(批評 ...5*20/11/21 8:37
帰路自由詩10*20/11/16 22:01
紅葉狩り散文(批評 ...7*20/10/26 17:47
伐採散文(批評 ...5*20/10/18 9:35
キジバト自由詩4*20/10/3 7:58
十月自由詩4*20/9/27 5:48
下山散文(批評 ...3*20/9/17 7:19
夜を抱きしめて自由詩7*20/9/12 20:38
地鳴き散文(批評 ...6*20/9/5 18:14
九月自由詩2*20/8/29 5:23
稜線散文(批評 ...6*20/8/27 18:04
休日散文(批評 ...6*20/8/16 9:08
ブナ林にて自由詩16*20/7/24 10:59
毎日雨が降っている散文(批評 ...5*20/7/7 6:08
これから自由詩17*20/7/2 7:02
雨はきらいじゃない(落ちの無い話)散文(批評 ...5*20/6/14 17:26
カップ 散文(批評 ...2*20/5/31 4:56
厨房に立つ(改題しました)散文(批評 ...7*20/5/17 9:09

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