賽の目に
切りながら
豆腐一丁ぶんの
愛がほしいと
てのひらで
哀しみが
揺れる夜
....
うつくしいと
つぶやく声が
聞けるのであれば
この身を
一輪の花に変えよう
うつくしいと
やさしいまで ....
ちょっとすりむけて
血がにじんでて
痛いだろうけど
絆創膏になって
ぺったんって
あなたの人生に
....
ひいらぎの葉蔭にて
にたりと嗤う貪りに
肩を叩かれ
身をふるわせる
夜廻りのいわしの
潰れ ....
大切にしたいものがありました
それはひどく不器用で
武骨ななりをしておりました
それのどこに惹かれたのか
....
風が匂うは梅見月
口を閉ざした木々の芽は
浴びる陽ざし待ちわびて
うずく枝先たおやかに
ふくらみ帯びて君を ....
「不用品なんでも買い取ります」
そんな張り紙のある煤けた店で
残っていたわずかなやさしさを売った
音 ....
夫の茶碗で朝餉を食す
手に余る大ぶりな器に
炊きたてご飯が湯気をたて
バターが溶けて醤油がかおる
虚ろに思えた ....
鳩子よ
おまえが生まれたのは寒さの残る
春と呼ぶにはまだ早い季節だった
忙しさにかまけ、放置していたベランダで
気づいたときに ....
夕闇迫る三差路で
迎えが来ぬかと立ち尽くす
逢えぬあなたに逢いたくて
黒髪闇に溶かします
紅い時が往き過ぎて
....
うす汚れた魂を
夜更けに洗う
洗面器に冷たい水を張り
ひとつまみの塩でもみ洗う
不信と後悔がにじみ出て
....
つぶれたスーパーの裏には
ひとり郵便ポストが立っている
その赤いからだは色褪せて
ところどころが剥げている
スーパーとともに忘れられ
....
ワイルドストロベリー / 和名(エゾヘビイチゴ)
苗を買って植えた
幸運と奇跡を呼ぶといわれている
....
あの男が死んだとき
その亡骸をほしいとねがう
ベッドに横たえて
ともに眠り、
おはようと朝をむかえる
腐敗するその ....
星がみえぬと
嘆くのならば
夜ごとまぶたを
くちびるで塞ぐ
それは塩辛く
わたしは夜に
海をみる
....
絶望の上着を引っ掛けて
孤独の靴を履こうじゃないか
来し方行く末足どり軽く
咲いた ....
ハラハラサイタハナノシタ
キンギョハオヨグヒラヒラト
アカイコロモヲフルワセテ
....
その横っ面を
おもいっきり
はり倒す
約束をまもらぬ
ろくでなしの
横 ....
雪がふる雪がふる
音もなくふりつもる
蝉たちは土の中
耳を傾け夏をまつ
あの日の麦わら帽子は
いまも埋もれてい ....
水道の蛇口を閉め忘れたようで
寝ているうちに耳の方へと
冷たいものが流れてきます
明日は仕事なのだからはやく
眠らなくてはならないと ....
死にたいと
ほんとうは生きたいがために
ひしひしと迫る死期に怯え
死にたいと
そればかりを
口にするあなたを
....
あなたとわたしは一膳の箸でした
年を経た槐の木から
それはそれは丁寧につくられて
生まれたのでしたね
ある朝 ....
あなたにあげる
おおいぬふぐりのあおい花
うぐいすのなきごえ
おひさまのあまい香り
はるの日のはじまりを
....
からっ風に吹かれ
あなたはひとり
どこへ往く
寒かろう
たったひとりでは
あなたの暖となり
ともに往き ....
ときはきた
木々は熟し芽吹きを待つ
凍る大地のなかで
目覚めたる巳
いのちを包みしものなれば
巳は脱皮する
....
あなたが浸る湯船にうかぶ
ひとつのゆずになりたいと
からだの芯まで温めて
すこやかなれと
やすらかなれと
....
草の香りのする夏の夜に
汗ばむ背中に頬をつけ
両腕をからめ眠りにおちる
そんな不埒なことばかり
冷たい布団のなかで
....
ため息ついたってかわらない
いまある現状は
過去のわたしがつくったもの
引き受けよう
じぶんがつくったものならば
....
ぴんとはりつめた
そらのした
つめたいかぜが耳をなで
にぎりしめた指先が
ポケットのなかでかじかむ
....
かぜは冷たく
日のひかりも少ない中で
みどりの葉を増やしつづける
寒さがやわらぐころ
真白き花を咲かせるだろう
....
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