デルフィニウムの花に一枚不具あり、咲く
鳥の羽根が
片方だけ大きくなって墜落
もつれながら
羽根はまだ互いを罵りあっている
足だけがあがいたが
もはや空には戻れなかった
破れ野に女雛ひとつおり 犬を待つ
後朝のセーラー交叉し 二人官女
五人囃子 九段駅から 坂に並ぶ
官女雛ひとり、赤子に会いに行く
山の上の男雛 ....
歩いては
遠くには行けない
この足だけで歩いては
毎日 移動している道の
およそ 半分までしか行けない
けれど
とけた雪を踏み崩しながら
足だけを動かし
....
十六時が明るかったので
今日を私の春の始まりとする
なけなしのリカちゃんをつかんでいくと
Kちゃんはかならずドレスをぬがせ
こっちの方がかわいいよと 着せてくれた
虹色のドレス
たからものの王冠
確かにかわいくなった
....
明日いきなり 死んでしまうとして
さいごに
なにが食べたい? と聞かれても
別になにも食べたくない
缶のミルクティーと
チロルチョコだけで
遠くへ
一歩でも遠くへ
見たことのない ....
僕は生まれ変わったらディドになりたい
というとディドはベッドの枕元に座ったまま
そのままぴくりともしないで笑うようにした。困った笑いだ。
ディドは半ズボンをはいている。そ ....
まず、膝を使わないこと
都のお姫様になったように
地を這うように摺り足で進むこと
けれど、決して出すぎずに
つまさきに少し力を込めながら
出る杭が打たれないようにすること ....
誰がこまどり殺したの
そう問うてみても
こたえはなかった
誰もおぼえていないのだ
すずめも 雄牛も ヤマバトさえも
夏祭り
遠くに母を見つけて
手を降ったあなた
振り袖で
回 ....
犬
かけっこ
キャベツにきんぴら
ジャニーズの、可愛い男の子
雨の日
ドライブと掃除
のうぜんかずらと魚
青の色、そしてわたし
33年
ぴっちり生 ....
ひとひとりの心のなかは、いつだって戦争だから
これ以上戦うひつようはない
そう言って花鋏をつかみとる
淡き生活
ぼくはきみがすきだから
いたくしない
つないだ てがいたいなら
はなしてあげるよ
のぞきこむ めがいたいなら
いっぽ さがって
ハローとふるての ゆらぎもかなし ....
二年前に死んだ祖母の部屋から
この場所にアクセスして
十年
影踏み鬼に置いてかれ
血を何度か洗い流して
すっかり違うような私になっても
あの日受け取ったパスワードは
ずっと覚えていた ....
ももいろは すでに
室内に 溶け
腐れた二、三枚のひだが
私の手にはりついて ちぎれる
けれど、その がくは
最後まで花のかたちを 保とうとしている
おそらくは ....
ここにはなにもない
抗う声も ふりみだすてのひらもない
あるのはただ
うちを向いた優しい横顔だけになってしまった
ここには もうなにもない
あなたの黒々とした ....
そのプールから出ておいで
共に 水夫の歌を歌おう
すきまがあるから
ピンクでぬった
ほんとはほかでも
よかったけれど
まいにち ごしごし
ピンクでぬった
黄色や青でも
よかったもので
いちにちそうして
ピンクにかえた
....
君が持つ
花を盗もう
私に似合う
豪奢な花を
襟足にあしらった
いくひかりもの色の中から
ほんの一筋
この茶けた爪で引き抜いたところで
君は
君は 気付くまい
....
やみよのむこうに
とおいよあけを
まってけている
ひとがいる
わたしのこえが
そこさとどくの
まってけている
ひとがいる
えがおも ....
砂浜になぜか
まるのまま打ち上げられたりんご
いつからあるのか
りんごはなかば透き通っている
食べたらひどくだめそうなのに
僕はそれを舌にのせる
のを逐一 想像する ....
朽ちた花さえ
髪に挿し
わたしは明日も
笑いたい
どこかでいっていた
これは歩行ではなく、舞踏
おそらくワルツではなくてポーレチケ
農作業の脇にあるビニールハウスの片隅の
犬に養われている小菊
下り坂の途中で干からびてい ....
いいえ、
私の家は小さなパン屋をやっていたの
海の近くの
海といっても砂浜はなくて
ただひたすらに工場が立ち並んで
そこから荷物を運ぶ踏切のある路地に
オレンジと黄色の屋根のついた ....
春を待たずに旅にでたいよ
根雪が薄い足をつつむうち
花の気配に気付かぬように
ぬきあしであの国道にでるよ
君の石が転がってるよ
黒く濡れた ....
知ってるかい
僕が10才だってこと?
10才のワルガキ
きみに
僕だけ見てて欲しいお年頃
許してよって
言ってるわけじゃない
10才だって思えれば
僕の見栄もかんしゃく ....
こどもたちが
口を真っ赤にしながら
園庭であそんでいる
誰かをつかまえ
気に食わなければ噛みつくために
こどもたちは
細い睫毛にひとつずつ
金銀の王冠をつけており
その毛並みは ....
マシュはとなり町の病院で死んだ
マシュが愛した
マシュの本屋では死ななかった
マシュは本屋だった
この町一軒の本屋だった
マシュの店は正方形
そこにふるびた黄色い本
この ....
赤いふくを着て
ツミノコシが生えていた
しょげているのか、ぬれていた
それでもいくらか
嬉しいようだったので
どうして つんだのと
先生に 尋ねた
咲かないようにね
先 ....
水たまり
シロツメクサ 浮く
かがむ肌 薄く
おちる髪 黒く
むね
百合のようにかぐわしくは
なく
シロツメクサの、浮く
水たまりに
これからめぐりゆくだ ....
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