何もない原っぱの上に
広い草原はあって
その長い草を棟に見立て
小さな小さな
子供たちだけの秘密基地

お面をかぶった僕は言った
     
ともだちになってくれない?
一緒に遊べば ....
静かな日曜日だった
私は雨を見つめていた
雨は何一つ語ることなく、地面に降り注ぎ
そして何も主張することなどなかった
私と雨は窓を挟み、内と外に居た
それぞれが語るわけでなく
心と心を ....
半覚醒状態で掛布団の下でうずくまる
地球外生命体の逃亡者のような私は
テレビの声だけ聴きながら丸く横たわっている
いっとき、毒水は体を掛けめぐり
麻薬のように高揚したかと思ったが
今は、毒々 ....
朝、息は白く冷たい
夜雪が降り、ウサギの足跡はついた筈だ
心の中の鉛は骨に入り込んでいる
だが、浮き足立つ朝の輝きは止めることができない
ウサギ狩りだ

猟場に着いた
車の中から銃を下ろ ....
 
樹林帯の中の一本のブナの木に粘液の足跡を残しながらその大蛞蝓はたたずんでいた。
雨は樹冠から大木の幹をつたい流れている。
大蛞蝓にとって、雨は自分の分身のようでもあり、慈雨の恵みなのかもしれ ....
薄くひらかれた口許から 吐息を漏らしながら声帯を震わす
まだ 生まれたての皮膚についたりんぷんを振りまくように
僕の唇はかすかに動き なめらかに笑った

足裏をなぞる砂粒と土の湿度が おどけた ....
海に行きたいと思った
また、冬に身を投じ、雪まみれにならなければならない
その前に、できるだけ平坦で、広大な場所に行きたかった
もともと、すべての生き物は海からはじまった


コンビニで食 ....
山間の、とある峠の一角に巨大な岩が奉られている
近くに湧き水が流れ、森の陰影のくぼみにそっと佇んでいる
神が宿るといわれてきた、大岩
峠道を歴史の人々が歩き、腰を下ろした
見つめた大岩に合掌し ....
薪ストーブが煌々と燃えている
その上に遥かな時を巡った鋳物の鍋
穀物と野の草と獣の骨肉を煮込んだもの
それが飴色に溶け込んで
ぷすりとぷすりと
ヤジのような泡を吹かせている
端の欠けた椀を ....
初冬の初雪の舞う中
風が木立ちの間を勢いよくすり抜ける
山の頂きから頂きに掛けて 
送電線の唸る音が聞こえる
人造湖は波打っている
一瞬ふわっとしたかと思うと
空は洗われ 雑木林は明る ....
なにかを期待するわけでもなく
木は透明な思いで空を見上げていた
野鳥の尖った飛翔が
空間を切り裂くのを楽しんだり
みずからが浄化した
清廉な空気を謳歌している

人がまだいない頃
木は ....
いくつかのブラックホールを超えて
僕の船は宇宙を漂っている
星はきらっと輝いたかと思えば
それは一瞬のきらめきであり
あとは黄銅色の鉱石が漂う空間だった
宇宙に風はないというが
少しだけ風 ....
きれいに折りたたまれた生活をそれぞれが晒している
涼やかな風を目元にたくわえ、定めた先に澄んだまなざしを向けている
生あたたかさにはしっかり蓋をして、静かに四隅を整えて桐の引き出しに仕舞い込む
 ....
 私は警察署に来ていた。
あれだけ面倒くさい手続きやら、身辺調査やらをクリアし、ようやく手に入れた銃と所持許可であったが、止める時はなんの造作もないものだ。
書類手続きに慣れていない新任の警察官は ....
 父は十代後半に大原に入植。昭和二十年前半だったと思われる。
三十三年に私が生まれ、開拓村で生まれたので隣人が拓也と名づけたと聞く。
妹は五年後、自宅で産婆のもと生まれたのを記憶している。
 幼 ....
わたしはもう
石になってしまいました
かつてわたしにも
水だった時代があり
白濁した粘質の水となり
やがて泥となり
固まっていったのです
土として長年を過ごし
生き物をすまわせもし
 ....
八月二十日
土を舐める、ミミズの肌に頬を寄せる
現実とは、そういうものだ、そう言いたげにその日はやってきた
希望は確かにある
廃道の、石ころの隙間にひっそりと生をはぐくむ草たちのそよぎ
ゴー ....
君の温度がまだ残る部屋、その隅に、残された一つの残片
治癒途中のかさぶたの切れ端が、静かに残されている
物体がおおかた四角なのは、きりりと押し固めることができるようにと、誰かが考えたのか
それと ....
金木犀が香る午後
陽射しがきらきらと
金色の帯を散らしている
コーヒーにミルクを入れて
スプーンで陶器をこする音
きみの声が
褐色の液体にミルクとともに
くるくるとかき混ざられて
やが ....
峰と峰とのつなぎ目に鞍部があり、南北の分水嶺となっている
古い大葉菩提樹の木がさわさわと風を漂わせる
峠には旅人が茶化して作った神木と、一合入れの酒の殻が置いてある
岩窟があり、苔や羊歯が入り口 ....
貴方の声が
虫のように耳もとにささやき
私の皮膚を穿孔して
血管の中に染み込むと
私の血流はさざめき
体の奥に蝋燭を灯すのです
貴方のだらしのない頬杖も
まとわりつく体臭も
すべてが私 ....
久々に友人宅を訪問することにしたが、手持ちは持たない
既に十一月の末で、もうすぐ今年の最終月、言ってみれば大嫌いな季節だ
冬なのか晩秋なのかさえはっきりせず、グダグダと薄ら寒い風が吹き
みぞれか ....
裸の冬がくる
十二月の姿は、あられもない
わたしのからだは白くひらかれ
とめどなく上昇してゆく
まぶしい白さに混練され
細胞のように、奥千の分裂をなし
ひかりとともに微細な羽虫となる
白 ....
どこか
骨の
奥底に
黙って居座る
黒い眠りのような
小雨の朝

歯ぎしりする歯が
もうないのです
そう伝えたいけれど
そこには誰もいなく
部屋の中には
少年のまま
老いた私 ....
とある島があった
波は泡とともに、幾何学的に浸食された岸に打ちつけている
海水特有の生臭い香りが岸に漂っていた

かつて子らの声や、はしゃぎまわる喧噪も見られたが、今では数十人残るのみである
 ....

ひらひらした幸福が
街の中を舞っている
今日で地球が終わるので
皆は慌てて急いで楽しもうとしている
けっこうそれにしてもにこやかじゃないか
もしかしたら終わらないのかも、ね。
そのよ ....
白い平面に産み付けられた
色とりどりの有精卵が
液体の飛沫に刺激され
静かに食いやぶられる

ひかりながら溶液にまみれて息をする
数々のかたちの違う幼生虫が
白い平面を徘徊する
飛散し ....
飯場に着くと、俺たちは襤褸雑巾のようにへたり込んだ。ねばい汗が皮膚に不快に絡みつき、作業着は雑菌と機械油の混合された臭いを放っていた。風呂は順番待ちだし、俺たち人夫は泥のような湯船に浸かるしかな .... 夜、雪が降り止んだ頃、夜行性のノウサギはいっせいに跳ねだす
カンガルーのように飛び跳ねる後ろ足の腿の筋肉は巨大で
前足と後ろ足は途中で交差し、雪原を跳躍する
むき出した前歯をそっと樹皮にあてがい ....
ふと 空を見上げると
蒼かったのだと気づく
鼓動も、息も、体温も
みなすべて、海鳥たちの舞う、上方へと回遊している

ふりかえると二つの痕がずっと続いている
一歩づつおもいを埋め込むように ....
山人(221)
タイトル カテゴリ Point 日付
20世紀少年自由詩3*18/4/9 6:54
自由詩6+*18/3/28 5:43
ガラケー自由詩4*18/3/23 4:50
ウサギ狩り自由詩3*18/3/12 4:32
大蛞蝓自由詩6*17/12/27 17:55
僕の少年自由詩8*17/12/16 8:59
シーサイドライン自由詩2*17/12/6 7:19
自由詩5*17/11/3 21:01
自由詩6*17/10/28 19:27
風のためいき自由詩2*17/10/23 21:29
とある湿原にて自由詩13*17/10/8 7:43
僕の船自由詩5*17/10/1 5:09
私はその家族を見ている自由詩3*17/8/11 15:08
雪原の記憶散文(批評 ...3*17/4/22 6:27
開拓村散文(批評 ...5*17/3/5 4:58
自由詩18*16/12/22 20:41
作業日詩自由詩5*16/11/26 6:55
無機質な詩、三篇自由詩2*16/10/7 11:08
未来自由詩2*16/10/7 6:07
峠の山道自由詩8*16/9/26 17:25
あな 二篇自由詩15*16/8/13 6:04
チラシの裏のはなし自由詩3*16/8/6 16:38
冬虫自由詩3*16/6/25 14:57
5/2自由詩11*16/5/2 7:04
shima自由詩1*16/4/28 17:54
共通する無題詩自由詩4*15/11/8 7:07
コロニー自由詩3*15/10/10 6:06
出稼ぎ人夫自由詩4*15/10/7 20:10
ノウサギとテン自由詩7*15/10/2 6:18
秋の詩篇自由詩6*15/10/2 6:13

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