天気図の上に一本の線が描かれている
その上を歩いているのはきみだ
きみは日本列島を気軽に縦断してしまう

雨の日
きみは美しい声で語るのだ
温帯のこの土地に降る
雨のエネルギーについて
 ....
風のバラ
とはわたしの愛した詩人
の五月
をうたう冒頭のことばだ
しかし
肉厚の花びらをかさね
内部へ密度を増す花は
きみに似合っていない
むしろもろい花弁に
あざやかな色彩で
緑 ....
きみは、知っていただろうか
終わりのない、四月の午後
ぐっすりと眠る、きみのひたいに
ぼくの夢は、文字をつづる

きみは、知っていただろうか
森は、とうとつに、緑の下着をまとい
ふりむく ....
東京の山中に梅花をさがす
そのための前夜祭がおこなわれた
きみは友だちと肴を集めた
ぼくはウィスキーと葡萄酒を用意したが
梅酒のないことを悲しんだ
宴たけなわ
酒と肴の上に
三月の雨がふ ....
顕微鏡の中で人工のひかりをうけて
雪片が光る
結晶が無言でのびてゆくのを
ぼくは視ていた

浅くつもった雪の中を
きみを迎えにゆく
ローカル線の駅は雪につつまれ
こどもの夢のように光っ ....
北風にはこばれてくる
除夜の鐘の音
をはじめて聞いたおどろき
きみをせかせて
午前零時十分
外へ出たのだ
深夜の新年を祝うため
遠い振動
からだをつつむ時間
おわりとはじまりの相反す ....
蝶ひかりて山の向こうに墜落す


せわしくも花につきさす蝶の口


蝶までの距離のちぢまぬ捕虫網


夜の雷ピンにとめらるしじみ蝶
栗の花の下を雨が降る
そこを通り抜けるから
貧弱なころもは着ない
ならば裸体か それも
トルソの形がふさわしい

   夏という夏は虫の仮装をして栗の花に集う

これは別れた恋 ....
おふぇりあをつきおとせしはことばかな。このまどわしのことばにくめり。


冬の空、オフェリアあざむきさむざむと、恋し心の血のにじむ空。


幽霊は高殿たちていいはなつ「汝が母の咎わすれまじ ....
詩は在る、として詩を書くとはなんだろうか。
書いたものが詩である、というのはどういう状態なのか。
詩人をどう定義すべきか。

それらの問いは、今や意味をなさないのではないだろうか。
なぜなら ....
太郎は桃から生まれた
<ハレールヤ>
太郎は人と思われぬ
<ハレールヤ>
太郎の心は折れぬ
<ハレールヤ>
太郎の掌を見よ
<ハレールヤ> ....
  桃太郎誕生す。
太郎桃の子ひとの子と異なりし子のいやさかに、屈強のこころたなごころ。


  犬、猿、雉なる家来。
眷属三匹はつなつの花かをりたつ、桃源郷に今しねむるも。

  
 ....
都とは いとしい場所だ。

私にとってなくてはならない

大量の糞と尿の在りか。

大量の吐瀉物の臭う場所が都だ。

私もまた多く排泄し

多く飲み込むのだ。



    ....
海図を広げ ありえぬ海域をめざす
日没には出発せねばなるまい
もはやこの港も甘い乳色の波が立っている

錨を上げ 滑らかな鉄にしがみつく牡蠣をとる
晩餐に間に合うように
夜が帆にも甲板にも ....
実際に不況というやつ感じてる。周りも貧乏で慰められる。


今晩は酒が飲めると思うとき、思わず仕事の手も速まる。


一日中パソコンに向かい肩こりだ。飼い猫抱いて毛布にくるまる。


 ....
ひらくことすら 忘れた花に
まぶたをふれ ささやく

かなしさのこと 花かざる店の花の
さみしさのこと 枯野のさむさの

ひざしはあふれかえっているのに

いつまでも こたえない
ひ ....
画布よりウィンクをマルガリータに。ヴェラスケス、ラスメニーナス。


教えてよ。あなたの愛した人は誰?女官よんめいだれにもないしょ。


ちちははは鏡の中なるひとにてや。ほの明るさに朧なる ....
北緯60度ロシアオロシア駆け回り。ピョートル大帝未だ健在。


雪とけて初蝶襲来まちのぞむ。昆虫学会会長代理捕。


アナスタシアアスタシアかもほととぎす。生きているのか死んでいるのか。
 ....
森深くハムレットなど立ち入れぬ。水に浮かべりミレイの乙女。


水清く流れし行方は知らざりき。アングル描くはだか身の乙女。


何を見て何を知れるか裸身の{ルビ少女=こ}。壺より落ちし水の ....
ケルンよケルン。かきくれて忘却のちまたに雨ぞふるなり。


ピンダロスダイダロス!不可思議な笛吹けよ大地沈むまで。


パン、ラパン、メロンパン田園に落雷ありていそぎ告げなむ。
「この都で捕えたツバメ
を掌の中に隠す
いらだたしい感覚と暑さを忘れる
放ったつもりが 手元からポトリと落ちた
死骸だった
と、かたわらの老婆が笑う」
どこもかしこも戦場じゃないか
どこもかしこも燃えてるじゃないか
どこもかしこも死体じゃないか
死体すら焼き尽くしてしまったじゃないか

これじゃだめじゃないか
生きられないじゃないか

 ....
この雨降らぬ都の名は何か
私の旅はこの都で終わる
のだろうか むかし栄えたこの都で

   「僕の食料は残り少ない
   干し肉と一かけらのチーズとわずかな水
   深夜 僕はこの都に着い ....
ため息も聞こえず
足音も途絶えた
この都には夜しかない

都 命を包んで静まる場所
がない 女や男はうごめき
悲しむ

私は伝えなければならないだろう
これは悲劇的なことだ
私が知 ....
愛はただよい。ただよいにけり愛ならばただ酔ひにけりただの{ルビ媚薬=びやく}に



ふれるならあなたのまぶたしたさきでふいにふられるふあんのまえに



ふれるなら舌でふれやうそのは ....
鉄砲もこでまりもなくかなしけれれろれろなめるかをも鉄砲も


きりとおしはげめばつゆにくもゆきはゆきてかへらぬはつしものしも


六本木きんだんきゆるとちとちにとちの実とちの木ろっぽんはへ ....
ベッドにてわが口吸ふは愛なるやたら{ルビ乳=ち}ねのはは父の子みごもり


冷凍庫に苺ひとつぶ凍りけり母はいまだにおみなごなれば


エルサレム・サンサルバドル・サルバドル母をたづねて巡礼 ....
キリストも起こせぬ奇跡起こしけり町のはずれの名もなき子なり


罪犯し獄の少年清らかに人のイメジの粗雑なるかな


ほほえみに生まれくるならむのちの世にふるきみ寺の小さき仏は
学園に内乱おきて紛糾すまず壊れ逝く文法学教室


ピアノは調律師にみはなされ音楽教室しずかに燃えゆく


古文書の{ルビ紙魚=しみ}ほど教え子は持ちにけりはるけき書庫の孤高の教授


 ....
固きカラーに擦れし咽喉輪のくれないゐのさらばとは永遠に(とはに)男のことば  塚本邦雄

一夜にて老いし書物の少女追う最後の頁に地平をすかし  寺山修司

空の美貌を恐れて泣きし幼児期より泡立 ....
非在の虹(170)
タイトル カテゴリ Point 日付
六月[group]自由詩309/6/5 18:27
五月[group]自由詩509/6/4 18:19
四月[group]自由詩109/6/4 4:00
三月[group]自由詩209/6/3 17:35
二月[group]自由詩409/6/1 18:28
一月[group]自由詩109/5/31 22:10
蝶ひかりて俳句1*09/5/31 21:09
夏至自由詩209/5/30 17:06
ハムレット独白  三首短歌009/5/29 0:41
詩は軽蔑に値する散文(批評 ...0+*09/5/28 17:02
短歌「桃太郎」現代語訳自由詩0*09/5/6 18:50
桃から生まれた桃太郎  三首短歌0*09/5/6 18:12
(仮題のままの数編と決定された一編)ある都へ ⅴ[group]自由詩109/5/4 18:32
黄昏丸航海日誌自由詩309/5/3 18:17
ほれほれな日々短歌209/5/3 11:18
午後のゆううつ自由詩209/5/2 17:12
バロック絵画館  五首短歌2*09/4/30 16:13
まぼろしのろしあ  五首短歌109/4/29 4:10
絵画変容  五首短歌1*09/4/28 17:59
ケルンよ  三首短歌1*09/4/28 13:25
(仮題のままの数編と決定された一編)ある都へ ⅳ[group]自由詩209/4/20 18:41
(仮題のままの数編と決定された一編)ある都へ ⅲ[group]自由詩109/4/19 5:44
(仮題のままの数編と決定された一編)ある都へ ⅱ[group]自由詩109/4/18 22:14
(仮題のままの数編と決定された一編)ある都へ ⅰ[group]自由詩1*09/4/18 22:10
てふの恋  五首短歌209/4/12 8:17
アンダンテ・ソステヌート・ウンポコ・モッソ短歌009/4/11 20:12
母の変容  四首短歌109/4/8 16:22
清き子ども  三首短歌109/4/7 17:56
学園紛糾  五首短歌009/4/6 10:07
短歌の音楽性と政治性 山田氏に応えて散文(批評 ...0*09/4/5 12:33

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