日差しの刃に斬られ
だらしなく溶けてゆくかき氷の
まだ冷たいスプーンをなめながら
またひとつ星がおちたのに気づく

小豆とぎと河童と
座敷わらしとあと誰だっけ
訃報を連絡するために
黴 ....
かたつむりの王は
水辺で嘆息する

今回も失敗であった
ヒトに寄生することは容易だが
操ることも難しくはないが

あやつらは海に帰って来ぬ

一方、地上では
一人のマッドサイエンテ ....
私は待つ
暗いところでひとり
ではなくて
明るく開けた田舎の畑道で

衆人環視のもと
へんてこに腕を上げたり
無理矢理に腰を伸ばしたり
おかしな具合に首を曲げたりして

私は待つ
 ....
死にやがれクソと
涙ながらに言いたいが
そも生きているのか知らない。
生きていたら殺したい。

くらい好きだった。
春が来ると
桜の下に死体があるのは当然で
一緒に屍の汁を啜った。
 ....
願えば妖精がわいて
私の願いを叶えると
思い込める程度に
私の生活は妖精だった

あの人の世界は散文で
音が悪くなった革靴を鳴らして
歩いてくると
その現実性に絶望した

あなたは ....
あくまでもソネットで
あくまでも好日的で
あくまでも嘘くさく
あくまでも誠実に

などと書いたら
嘘である今日は四月四日で
エイプリルフールではないのだ
愚者よ

空を見上げたまま ....
私が死んで
匂い高くくさって
あるいは焼かれて
熔けて

あるいは
瞬間の火に蒸発して
骨も残さず雲散霧消して
全部脱いだら

私は炭素になる予定
私たちは
だいたい酸素と炭素 ....
{ルビ奪衣婆=だつえば}に手を振って
自分の手の指が
すっきり全部折れているのを
確認し

ゆったり歩きはじめれば
蛆這い回る
糞と血とはらわたの汚泥が
優しく足をなめる

ただい ....
急がなきゃ。
と思うのだけど暗い。
思うように進めない。

 あたりはいちめんの草むら、猫じゃらし、
 ときどきひょいとバッタが飛ぶ、
 川の向こうには何かが明滅している、しかし
 その ....
そのとき私は十六歳で
まだ何も罪は犯していないと思っていた

電車に乗って席に座ろうとしても空いていなかったので
つり革をつかんだ
そして
向き合った席にいる人の姿に
私は驚いて
目が ....
世界の破壊者は片手を上げ
まわりに誰もいないのに気づくと
片手をおろした

海は波の触手を伸ばして陸に襲いかかり
さらには沸騰し
現在は塩酸になるか硫酸になるか悩んでおり
山はもちろんの ....
からっぽで何にもなかったので
手元に落ちてきたSFを入れてみた
SFの尻尾はもう古ぼけていて
埃をかぶっていたけれど
頭のほうは元気で活きがよくて
これならからっぽも何とかなるかしらと
一 ....
白い壁がありました
白い壁に沿って私は歩きました
私には足がありました
私の足は交互に動きます
私はそれを動かしています
白い壁があります
白い壁に沿って草が生えています
私は草をむしり ....
少しばかりいい気になったので
ちょいとばかし言葉を放ってみる
蝙蝠の羽はあくまでも灰色
カモノハシのくちばしはあくまでもやくたたず

うん そういう問題はさておいて
モノクロの映像のフラス ....
お姉さま。
この館に逗留してまだ一ヶ月足らずですが、
私はもうお姉さまとの暮らしを恋しく思っております。
お父さまはたいへんお優しいのに、お兄さまは恐ろしい。
いつも地下に引きこもっていらして ....
そのみえすぎる目で満開の桜の花の下をみて
ひとがみてはいけないものさえみたくせに

あなたったら全然気づかないんだから鈍感でもう
待ちくたびれてあたしとっくに腐っちゃったのよでも
きらきらと ....
それは気の迷いだろうどっちかというと
と書き込みたい気持ちを抑えて眺める
空が青くて明るすぎるので私はすっかり腹を立て
こども部屋の真ん中に黒のクレヨンで魔法陣を書く

逆さの五芒星の真ん中 ....
跳ね上がる、湧き上がる、躍り上がる、
歌う、歌う、歌う、歌う、
躍動感にみちみちた空気、
あちこちに飛び交う音符の羽虫たち、
唐突に鳴るクラッカー、

輝かしい照明は目も眩む、白、
白の ....
火を盗ってきたから
ここで炎が燃えているのだと
プロメーテウスは言うのだけれど
プロメーテウスはおバカさんだから
火から離れて星を見ている

もちろん星はたいてい火なのだけれど
そうじゃ ....
墓所

朝な夕な花を捧げる、
深紅の薔薇ではなく、
白い百合を。

ただひとつだけ、
海に背を向けたその墓。
没年は百年前かあるいは二百年前か、
墓石の文字は薄れて読めない。

 ....
生ぬるい湯が入ったゴムの風船、
それがわたしだ。
熱々だったことなんかないし、
凍りついたこともない。

手の届くところに何もかもがある。
肩こりの塗り薬(インドメタシン入り)、
豆乳で ....
わたくしの心にだって情念の火くらいはありますのよと
微笑んで密集した蕪を抜く
抜いても抜いても蕪は密集していて
今日も明日もあさっても蕪の抜き菜がおかずですねと
やっぱり微笑んで蕪を抜く
微 ....
牛が不思議に騒ぐ夜があるの。
台風の夜でもないし地震の前触れでもない。
乳に血が混じったりもしない。
虫が多いわけでもない。
まあ牛舎なんてのはいつも虫だらけだけど。

夜なのにもぐもぐ反 ....
あいつはいつも金がなくて
いつでも誰かに金をたかった
嫌われ者の
ジョン・ホーミ・ウォーター!

あいつはあいつでいいとこもあって
優しかった、野良犬にも、あたしにも
ひとりぼっちの
 ....
わたしたちは一枚の大皿に住んだ
皿は基本的に何の模様もなく
真っ白な大地にところどころ土が盛られた
わたしたちはテントを張り
ひまわりを植え
にわとりを飼い
真っ白な地平線をながめた

 ....
白い波に足をひたして
海に走り込もうとするこどもをつかまえる

波に洗われる砂のうえ
何かの記念の石碑みたいに
ぽつんと残される丸い石

背の立たない輝く水に浮かび
ようやく息を継ぎな ....
おまえが生まれた年に
菜の花が庭にはびこって
それはそれはたいへんだったよ

おまえはまだ二ヶ月だか三ヶ月だかで
はじめてみる菜の花に
はじめて嗅ぐ菜の花に
目をまるくしたり ....
彼岸前に咲いた彼岸花
十日も早くやってしまった敬老の日
もう動いてない扇風機
時が早く行き過ぎるように思うのは
忙しいからでも年をとったからでもなくて
たぶん

昨日の空と
今日の空に ....
ひとり、は飛べる。
ひとり、は鳥だから。
ふたり、は飛べない。

雨のなかに手を伸ばすと雨姫の声が聴こえる、
きゃっきゃと笑いながら、
誰かをダンスに誘っている。
眠ったままのこどもが浮 ....
一杯のお茶と読みさしの本と
夫と娘の寝息と膝のうえの一匹の猫
それが私には相応なものなのだと
私は知っていたしまた満足もしておりました
そんなとき
それは私の額に堕ちてきたのです

 ....
佐々宝砂(939)
タイトル カテゴリ Point 日付
失う夏のソネット自由詩6*23/7/28 20:01
ル・カルコル自由詩2*23/6/18 19:59
待つことの、莫迦自由詩1*23/4/9 22:42
きのうのソネット2自由詩122/4/11 19:33
きのうのソネット自由詩222/4/6 20:16
あしたのソネット2自由詩022/4/6 20:10
あしたのソネット自由詩122/4/6 20:09
どっかの一丁目にて自由詩422/4/4 20:07
暗い道自由詩3*21/7/13 12:29
アルビノ自由詩721/3/17 23:26
世界の破壊者自由詩320/11/11 1:09
SF自由詩120/11/10 23:57
壁の向こうに自由詩6*20/11/10 20:01
鉈を振り下ろす自由詩420/4/5 0:23
ゴシック的断片自由詩4*19/8/9 19:38
桜の樹の下では自由詩6*18/3/23 23:16
木の芽どきのソネット自由詩318/3/23 9:08
黒の下のパーティー自由詩318/3/18 13:29
プロメーテウスのおバカさん自由詩7*18/2/17 22:18
血と百合の遁走曲[group]自由詩6*17/12/13 22:21
したたれ自由詩717/6/15 8:48
蕪の葉自由詩516/11/15 0:40
ちあらのはし自由詩416/7/15 1:12
夢の中で墓からでてきた黒人女が歌った歌自由詩3*16/6/19 12:45
大皿の日々自由詩316/6/19 10:53
遊泳禁止区域自由詩10*16/6/14 9:02
おまえが生まれた年に自由詩2*16/3/11 9:30
ベテルギウスは突然に自由詩115/9/15 1:19
ひとり自由詩315/6/15 1:06
Another Kiss自由詩8*15/1/3 18:04

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