大きな口を開けたワニが
天気の真似をして
すっかり晴れわたってる

魚の数匹は遠ざかり続け
それでもまだ
誰の指にも泳ぎつかない

沢山の羊を乱雑に並べて
さて、どれが正解で ....
君が煮びたしをつくっている
キッチンは包まれている
昨日僕が割った皿は
既に片付けられてる
君の右手と
黒子のある左手によって

どこかから漏れてきた西日が
ステンレスに反射し ....
ワールドアパート
酢酸
失われたハサミの片方のもう片方
イチローの背番号51のように
音も無く降る雨の形
ワールドアパート
共通しない扉で
耳を傾けるスパイス・ガール
俺の掌の ....
君が笑った
笑った口元から
白い歯がこぼれた
こぼれた歯は
たくさんの子どもになった
うまれた子どもたちは
道路を掃除した
掃除された道路は
きれいになった
子どもたちがその ....
スーパーのレジで
おつりのコインを数枚受け取ると
「わあ、お金が増えたね」
と娘は目を輝かせる

自動ドアから出るときも
「あのおばさん、きっと親切な人なんだよ」
ふわふわと歌う
 ....
男は静かな眼差しだった
椅子に腰掛けていた
眼鏡の中を覗き込むと
男には目が無かった
代わりに水槽があった
水面は微かに波打っていた
魚が数匹泳いでいた
楽しそうではなかった
 ....
夕暮れ
警察署の壁面が赤く染まる頃
帰宅途中の私はその前に来るといつも
自白する

通勤鞄の底のそこでは
見慣れぬ証拠物件が小さく笑っているが
立番の若い巡査はそ知らぬ顔で
手 ....
無駄口を叩いている君の側で
僕は電卓を叩いている
端数がうまく積み上がらない
けれど僕の電卓は旧式だから
いつも君の指を叩こうとしてしまう

時計は見たこともない時計回り
僕は長 ....
濁った色の運河を
僕の手が流れていく
腫れ物に触るように
どこか遠慮がちな様子は
やはり僕の手らしかった

妻を抱き
娘を抱き
椅子の背もたれを掴み
いろいろな手続きをしてき ....
とげ屋に行った
店には色彩のきれいなとげや
いい匂いのするとげが並べられていた
地味目で自分によく似たものを買うことにしたが
名前はどこか似てない感じだった
店を出ると
空は漫然と ....
裏庭から
雨音に紛れて
犬が落下していく
音が聞こえる
どこまで落ちていくのか
犬にも僕にもわからないまま
犬は落下し続け
僕は音を聞き続けている
少し傲慢に生きてきて
思い ....
フライドポテトを
鉛筆削りで削り続けた
すっかり疲れると
ハンバーガーに
紙やすりをかけた

やがて消えてなくなる
という結果は
すべてにものに等しく訪れる

四日目の早朝 ....
右目がポケットに落ちた
左目を瞑るだけで
見なくて済むものは見えなくなったけれど
溜まっていたゴミや砂が入って
右目からは涙が止まらない
あの人のズボン泣いてるみたいだね
と言う男 ....
風が吹いていた
風のように母は声になった
声のように鳥は空を飛んで
鳥のように私は空腹だった
空腹のように
何も欲するつもりはなかったのに
母についていくつか
願い事をした

 ....
「ショクヨウガエル」という物悲しい名前の蛙がいる
まるで人間に食べられるためだけに生まれてきたかのような名前の
体長十五〜二十cmにもなる巨大な蛙

正式な和名は「ウシガエル」
食用とし ....
サメのひれを持った人が
ゾウの鼻を踏んづけたまま
時計の歌を歌った

それで終わる物語に
読み仮名だけが振られている

今日は春も近いのに
誰も二階から降りてこない
疲れてピアノが寝ていた
狭いピアノだったので
添い寝をすることもできた
やがて、か
間もなく、か
多分それくらいのことだろう
僕であることを間違えた僕を乗せて
草の列車が発車する ....
彫りの深い司会者が
深い彫りの中で溺れて
ウェディングケーキはもう
瞼の中でしかカットされない

花束を越えて
何度も生まれてかわろうとする
たくさんの父と母は
まだ静かなまま ....
涙の中を泳ぐ魚がいて
僕の源氏名はまだ忘れられたまま
あなたは僕の順番となり
順番は花びらのびらとなり
そのことで誰も困りはしない
こうして縮まった身体をひょうっとすれば
僕らの不 ....
一頭の牛が
ブランコを押してくれた
こんなに高くは初めてで
空だけがきれいに見えたけれど
必ず元の場所に戻って
どこにも進むことはなかった
明日食べられるのだ、と
牛は言った
 ....
世界で一番悲しい人が笑った
花のようだった
花の名前と同じ速度で
列車は走った
良い陽が入るね
そう話す乗客たちの袖口は
等しく汚れていた
窓の外にはいつも窓の外がある
という ....
一家全員がそろったのは
昨年の正月以来だろうか
兄嫁が妊娠したという話を聞くと
父はたいそう喜び
押入れからアルバムを取りだし
いつもの昔話をする

それは色あせた一枚の集合 ....
駅前にはたくさんの
駅が並んでいて
降り出した雨に
みな一様に同じ音をたてている
線路は出鱈目にひかれ
それでも人は
誰かを待ち続けなければならない
世界で一番
悲しく笑うため ....
スパイスきょうじゅ
スパイクはいた
スパイクはいて
スパイスのんだ
いちめん ひろがる 
じゃがいもばたけ
おくさんうめたの
だれでしょう

*

あさ うたたねをしていたら ....
水槽の中には
迷い込んだ
ひとつコブの駱駝がいて

その上は
とても静かなので
置かれるものがない

それをあなただけの
目が見ている

寝癖が空調にそよぎ
わたしはも ....
白線の内側におさがりください
融けかかった身体が通過して行きます
主成分は耳とし耳けるもの
声のいくつか
危険ではありませんが
触れると昔を思い出して
いささかに寂しい
窓とし窓 ....
靴下を洗濯籠に投げる
途中、失速して
僕の知らない野原に落ちる

しばらくすると
一匹の美しい横顔の生き物が
くわえて行ってしまった

もう何も無くさないようにと
決めていた ....
言葉のひとつひとつに歓声があがり
思い思いに笑い転げ
級友たちの恋の話は
昼休みの教室で佳境をむかえていた

数年も経てば
誰もが通る道である
ということを知るのだろうが
その前に ....
なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のい ....
ふわふわのシャボン玉の中では
ふわふわの魚が泳いでいる

しゅわんとはじけると
魚は空にかえっていく

私もかえりたい
空じゃなくていいから
ふわふわじゃなくてもいいから

 ....
たもつ(1742)
タイトル カテゴリ Point 日付
ルーツ自由詩16*06/3/7 22:38
煮びたし自由詩906/3/5 20:24
ワールドアパート自由詩10*06/3/2 23:24
笑う自由詩806/2/28 20:33
おつり自由詩54+06/2/26 22:35
眼差し自由詩406/2/25 6:27
自由詩606/2/24 17:40
旧式自由詩706/2/22 21:10
とげ自由詩806/2/20 20:19
自由詩706/2/20 9:07
落下自由詩1206/2/18 9:33
三日三晩自由詩406/2/17 19:09
水分自由詩1006/2/15 22:00
風のように自由詩1006/2/14 19:45
ショクヨウガエル自由詩906/2/13 15:40
読み仮名自由詩406/2/12 10:40
きろ、つきはなし自由詩6*06/2/11 11:02
じみこん自由詩506/2/10 17:09
きろ、つきはなし自由詩5*06/2/9 23:10
明後日自由詩22*06/2/6 8:32
春の裁ちかた自由詩1406/2/5 8:15
一族自由詩806/2/4 10:17
駅前自由詩406/2/3 8:40
ファザー・グース(2)[group]自由詩11*06/1/31 22:53
寝癖自由詩406/1/27 20:07
わわく ろらん自由詩15*06/1/25 20:23
脱衣所自由詩906/1/23 22:27
少女飛行機自由詩21*06/1/22 18:35
ハミング自由詩1106/1/19 19:29
かえる自由詩1706/1/18 22:41

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