一日の仕事を終えて 
日誌のコピーをシュレッダーにかける 

箱の中に吸い込まれてゆく紙 
粉々になってゆく一日 
見下ろす私の影 

産声を上げた日から今日迄の 
私の年譜をシュレッ ....
夜が明けて 
窓から朝日が射し込むと 
目の前に 
猫背の暗い男が両腕を{ルビ垂=た}らし
立っていた 

「 私ハ生キル事ニ疲レタ 
  アナタノ生霊 
  アナタガ誰カト浮カレル時 ....
単調に繰り返される無数の足音の渦の中で、
希望を見失った盲目者は歩道を歩いていた。 
朝の足場がやけに固い。 

ガラスの壁の内側にはふたりのマネキン。 
{ルビ何処=どこ}かに顔を落とした ....
空白の空間に立つ彼の前には、
「{ルビ0=ゼロ}」の文字が浮かんでいた。 

「0」に足を踏み入れ{ルビ潜=くぐ}り抜けると、 
そこは社会に出て間もない頃の職場で 
七年前の彼が先輩達に囲 ....
( 窓の外から聞こえる
( 鳥の{ルビ囀=さえず}りと共に目覚める朝 
( 全ては「無」へと消える  


毎晩 
枕は「夢」をのせている 

閉じた瞳 
繰り返す寝息 
空っ ....
リルケはトルストイの家を訪ねた。
彼の家は、家庭紛争の最中であった。

( 伯爵は、握った杖を叩きつけ・・・ 

眉を{ルビ顰=しか}めて玄関へと歩いて来るトルストイ。 
リルケの肩に手を ....
立ち位置を、探している。
いつまでも見つからない、
足の踏み場を。 

もしくは、
消えてしまった君の幻を
抱きしめる、
世界の中心を。 

人波の川が流れゆく
この街の中で、 
 ....
小雨の降る夜道を歩いていた。
ガラス張りの美容院の中で
シートに座る客の髪を切る女の 
背中の肌が見える短いTシャツには

「 LOVE 」 

という文字が書かれていた。 
 ....
私とあなたの間には 
いつも一枚の窓があり 
互いは違う顔でありながら 
窓には不思議と似た人の顔が映る 

私とあなたの間には 
いつも一輪の花の幻があり  * 
互いの間にみつめると ....
中央病院の受付は今日も患者で溢れていた 
松葉杖をつく若者 車椅子の老婆 妊婦 マスクをした中年・・・ 

街にはスーツを着て歩く人 
キャンパスの木陰でひとり{ルビ俯=うつむ}いて立つ学生  ....
深夜の地下道 
両脇に並ぶ店のシャッターは全て閉まっていた 

シャッターに描かれた
シルクハットの紳士は大きい瞳でおどけていた 

胸からはみ出しそうな秘密を隠して 
彼は独り歩いた
 ....
私は無人の都市を歩いていた 
 
見上げた無数の窓の一つから 
青い小鳥が堕ちて来た 

{ルビ掌=てのひら}で受け止めた
{ルビ痙攣=けいれん}する小鳥の青い羽は 
灰色へと変色し 
 ....
夜道を一人歩いていた 
道の先に立つ街灯が 
{ルビ辺=あた}りをほの白く照らしていた 

街灯の細い柱に{ルビ凭=もた}れると
地面に伸びる
薄ら{ルビ哂=わら}いを浮かべた 
私の影 ....
今夜 私には 
逢いにゆく人がいない 

孤独な夜の散歩者は
アスファルトに響く雨唄と 
ビニール傘に滴る雨垂れの 
二重奏に身を浸しながら 
果て無い雨の夜道を{ルビ彷徨=さまよ}う  ....
誰かと笑い転げる日々を過ごす私
仮面を一枚{ルビ捲=めく}れば 
誰の手も触れ得ぬ「もう一人の私」がいる 

あたりまえの幸福は 
いつも手の届く場所にあり 

浜辺へ下りる石段にぽつん ....
 湯田は温泉街なので、道を歩いていると数人で腰を降ろし足浴で
きる場所が何ヶ所もあった。記念館に近付くにつれて、「中也ビー
ル」という暖簾の文字が風に揺られている店をいくつか見かけた。 
 中原 ....
 僕の部屋のベッドの枕元には、去年の夏の終わり、一人旅をした
時の写真が入ったままの白いビニール袋が置かれている。中から取
り出した無数の写真の中の一枚に、雨の降る公園に立つ石碑があ
り、幾本も ....
祝日 新宿の午後は人波に{ルビ溢=あふ}れて 
逃れるように僕は古びた細い路地に入る 

道の両脇に{ルビ聳=そび}え立つ高層ビルの壁に挟まれた 
細い空を見上げると吹いて来る向かい風 
ア ....
少女は長い間 
窓の外に広がる海を見ていた 
{ルビ籠=かご}の中の鳥のように 

時折 
人知れぬ{ルビ囀=さえず}りを唄っても 
聞こえるのは 
静かに響く潮騒ばかり 

( 浜 ....
一 

仕事から帰ると 
僕の机の上に本の入った封筒が置かれていた 
裏に書かれた名前を見ると
{ルビ一昨日=おととい}「 周作クラブ 」の会場を探し歩く僕に * 1 
「 〜ホテルは何処 ....
日曜日の朝 
シャワーを浴び 
鏡の前で髪を整え 
{ルビ襖=ふすま}を開け
薄暗い部屋を出ると 
何者かが{ルビ袖=そで}を引っ張った 

振り返ると 
ハンガーに掛けられた 
高 ....
君が帰った Cafeの 空席に 
さっきまでノートに描いていた 
空へと届く望遠鏡の幻がぼんやり浮かんでいる 

別々に家路に着く 
君の切なさも 
僕の切なさも 
この Cafe に置 ....
開店時刻の前
Cafeのマスターは
カウンターでワイングラスを拭きながら
時々壁に掛けられた一枚の水彩画を見ては
遠い昔の旅の風景を歩く 


 *


セーヌ川は静かに流れている ....
朝起きて 
寝ぼけた{ルビ面=つら}で 
鏡を見たら 
直毛の黒髪の中から 
ふにゃりとした{ルビ白髪=しらが}が1本 
飛び出していた 

指でつまんで 
ハサミで切って 
手のひ ....
深夜の浜辺で
青白い顔をした青年は 
{ルビ焚=た}き火の前で{ルビ膝=ひざ}を抱えている 

肩を並べていた親しい友は 
すでに家路に着いた 

胸の内に引き裂かれた恋心 
誰の手に ....
その破天荒な男は 
ある晩、僕等の目の前に現れた 

目に映るあらゆるものに逆らい
虚空に拳を殴りつけ 
いつも目に見えない何者かの影に怯えながら
心の弱さと戦う彼は 
一体何を求めてい ....
春の日のベンチに腰かけ 
ひらひらと舞い落ちる 
桜の花びらを見ていた 

肩越しに吹き抜ける風が 
「 誰かの為に身を捨てる時
  そこに天はあらわれる 」 
と囁いていった 

 ....
半年振りで姉は嫁ぎ先の富山から 
5歳の{ルビ姪=めい}を連れて帰っていた 

家族{ルビ揃=そろ}って
僕の出版記念すき焼パーティーをするので 
今朝の出勤前母ちゃんに
「 今日は早めに ....
    春の夜の

    朧な月を仰ぎつつ

    草露を踏む

    真白い素足 
音楽好きな老人ホームの所長と 
週に1回演奏してくれるピアノの先生と 
介護職員の僕と 
レストランで夕食を共にした帰り道 
最寄の駅に先生を車から降ろした後 
夜の{ルビ空=す}いた国道を ....
服部 剛(2153)
タイトル カテゴリ Point 日付
月夜自由詩13*06/7/14 19:36
明日へ自由詩11*06/7/9 21:16
路上の影自由詩5*06/7/3 17:08
「 0 」 自由詩6*06/7/1 21:29
「永遠」 自由詩5*06/6/30 23:16
「街路樹を往く人」自由詩6*06/6/28 10:43
「空」を抱く人 自由詩20*06/6/19 23:23
「汚れた足」自由詩21*06/6/14 23:40
傘を差す人 自由詩21*06/6/9 20:07
「顔の無い女」 自由詩6*06/6/5 16:39
地下道の音楽 自由詩11*06/6/4 19:28
「窓」自由詩9*06/6/3 18:18
街灯 自由詩11*06/5/28 0:01
夜の散歩者 〜 反射鏡を探して 〜自由詩23*06/5/26 18:41
「自画像」自由詩12*06/5/22 1:50
中原中也記念館に行った日 〜後編〜散文(批評 ...11*06/5/15 21:01
中原中也記念館に行った日 〜前編〜散文(批評 ...8*06/5/10 23:17
「夢」 〜 新宿にて 〜 自由詩14*06/5/6 19:29
海を翔ぶ翼 〜 少女と羊 〜自由詩8*06/5/3 19:19
「あたりまえの日々」自由詩4*06/5/1 1:29
壁に吊るされた学生服自由詩10*06/4/25 1:00
黒猫の瞳自由詩14*06/4/24 23:58
セーヌ川の畔で 自由詩12*06/4/18 22:11
「?」 自由詩7*06/4/18 0:59
幻の太陽 自由詩15*06/4/16 23:00
カオリン・タウミに捧ぐ自由詩2*06/4/15 1:24
春の夢 自由詩6*06/4/14 22:33
姉のまなざし 自由詩18*06/4/7 12:52
春の冷気を泳ぐ女(ひと)短歌10*06/4/7 11:25
無言の声援 〜同僚のMさんに〜 自由詩5+*06/4/6 23:20

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