空が地よりも明るい夜に
ひとり鉄路の内周をゆく
なだらかな緑の
揺れつづける闇
雨と雨のあいだが泡立ち
ひるがえる白
ひるがえる光に
動かぬものは四角く抱かれる
....
街の上をはばたく銀色の
カフカの羽
群れは一勢に
うなづくように地を見る
陽に焼けた砂の道を見る
生まれ ささげ 手わたし 去る
鏡のなかに増えてゆく
誰もいない家並みに
打ち寄せるすべての見えないもの
やわらかく 冷たく
悲しいもの
暗がりに立つ光の線が
自 ....
足元に散らばる光を
ずっと数えていた
胸元にひろがる光を
ずっと数えていた
目をそらしても 目を閉じても
....
冷えた茶を飲むとき
私のなかに
雀が居るときがある
様々なものに殺された雀が
私のからだのなかではばたいている
....
空が割れて
大きく割れて
なんという光のむだづかい
小さな笑みを照らしている
触れればずっと鳴りつづく
触れない気持ちがそぞろに歩く
触れるものなどないはずなのに
気づかぬうちに触れはじめている
隣り合うふたつの窓のひとつに
遠い窓の灯りがとど ....
あくびする猫
ふたたび眠りにつく
あたたかさの支配者
頭上の見えない王冠の
むずがゆさに目を閉じる
....
願いの終わりに
願いはどこへいくのか
かわいた目だけが
鳥たちのつくる風を見る
そとにあるよ
みんな みんな
そとにあるよ
黄色い光の午後に
窓のそばで微笑みながら
少女は世界を宿していた
....
風は曇り
硝子のひと欠け
わずか わずか
と つぶやかれ はじまる
蝶の生まれやすい午後
葉と葉のあいだ
やぶにらみの空から
静かな土から
さらに高く さらに低 ....
荒れ狂って
荒れ狂って
風が見える夜
誰もいない道がつづく夜
黒が雲のかたわらを過ぎ
銀の手となり地に降りそそぐ
....
高い雲 低い雲
右からは見えない左雲
おうおうと鳴き
ふうふうと応え
夕暮れに撒かれる苦海の火
ひい ....
目の前に浮かぶ空気の穴に
全身を押し込むようにして消えてゆく
たくさんの鉄の踊り子たち
かすかにふるえるゆがみを残して
金の波間に
言葉と音が浮き沈み
混じることなく重なりつづけ
打ち寄せては打ち寄せてはうたになる
飴色の鉄が道を分け
しなるかたちを鳥はなぞる
あつさ あたたかさ
....
他人のように眠るとき
仮面のように眠るとき
水の蛇はひたひたと来る
狭い空を翼で覆い
小さな夜を乗せて来る
天使の羽と羽のあいだに
指を一本差し入れたなら
天使もあなたもその刹那
よろこびのなか
気を失うだろう
雨が来る
雨が近づく
星を隠してしまう
足を失い
けだものは川へ行く
たとえ流されても
先へ進む
闇のなか 地に手をつき
文字を指で書きならべる ....
今ちょうど音が途切れたので
ここをひらいています
何かが途切れなければ
ここをひらく気にはなれません
流れのなかに異物があります
見えたり見えなかったりします ....
ふわふわが
ふわふわに言います
もっと
ふわふわになる
光が光に目をふせ
渦の生まれを見ます
ふたつ
生まれた
ほつれ
ほどかれる指が
からまわりし ....
線引きされた空からあふれ出て
黒雲は地へ
黒雲は地へ
つながるものがなにも無いところへ
おまえには何でも話せそうだ
....
からだをすり抜け まわされる腕
天使よ てんし 地使よ ちし
少しだけ浮くおまえの軽さ
水たまりの上の葉を踏んで
湿った土にひろがる重さ
毒のめまいを消し去るめまい
新たな ....
牙の鳥 牙の鳥
雨が近い
雲がシャラシャラ鳴っている
朝の名残りを踏むのをやめ
午後の艶を吸う準備をしろ
....
響くまま 風の輪をたどり
足もとは枯れ
緑にそよぐ
枯れては緑
枯れては緑の音を聴く
空にあいた鉄の穴を
夕べの羽が通りすぎる
響きは響きを消しては生まれ
まるい音 ....
雨が壁に喰らいつく
窓がひとつあいている
遠くくすんだ茶のひかり
金のこだま
けだものの声
子供の胸に入りこむ
....
喰いたくてそこに居るのなら
苦痛だけは残しておいてくれ
苦痛さえあれば
数億年後に詩はふたたび生まれるだろう
間延びした快楽 ....
海と空しか見えない夜の道
小雨に似た
まだらな冷たさ
川の波と海の波が出会う
鳥たちが岩をついばんでいる
雲が雲を終えようとしている
無色の目のはばたき ....
見えない飛沫の連なりが
輪のかたちにそそがれる
低く飛ぶ蝶の腹を見上げ
同じ速さで陽をすぎてゆく
うすく明るい
鳥の影が交う道を
飛べない鳥が歩いてゆく
気まぐれ ....
灰色のブリキとトタンでできたふたつの長屋にはさまれた一本道
ところどころつぶれた家から見える海には朽ちた船が散らばり
生きたかったのに生きられな ....
緑のなかの月
金のなかの羽
夜の上で重なりあう
土の上で重なりあう
空のむらさきから
鳥が飛べないほどの風が
裏表なく降り下りる
どこへでも
どこまでも
....
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