夏を告げる鐘が鳴ると
少年たちの中で 天国が走り出す
光源のない白い光に満ちた中を
球や三角錐や立方体の闇が
行進する
思考線をよぎる空中魚族
(この椅子に坐るといつも
感応しようとしすぎてneuroticになるんだ)
その視軸 ....
埃っぽい風が立つ
ざわめきの中浮かんでは消えるように
表情たちが行き交う
楽しげでも悲しげでも
逃れがたい虚ろに巣喰われたまま
とめどなく流れつづける
呼び声や歌声が
ざわめきに尾を引い ....
眠りの中心にたたずむ
黒いしずかな球
その球を無垢な白い身体で抱きしめて
いつまでも眠っているのは誰だろう
六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる
けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる
忘却 ....
把みきれない現実に
心が過剰で収拾がつけられない
はみ出してゆく言葉たちが
僕を取り囲む時空に傷をつけてゆく
瞳はいつも怯えたように見開かれてしまう
何故対峙してしまうのだろう
何故融合で ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で
蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
窓辺を漂っていたスウィートピーたちは
薄れて消えてしまったよ
白いのもピンクのも薄紫のも
いつか行こうなんて云っていた
銀の門のある空中果樹園も
いつのまにかどこへやら消え失せてしまったよ
....
僕らは 一列に並んで
少しずつ 進んでゆく
かぎりなく長く思える柱廊を
誰も 一言も発さないまま
僕らは 白い衣を着て
白い布で覆われた銀の皿を両手に捧げ
少しずつ 進んでゆく
....
たとえば 言葉で
たとえば 眼差しや微笑みで
きみとわたしが 交わしあうのは 波紋
それはあたかも 夢のように
けれど夢よりも息づくたしかさで
波紋は交わされる
たとえ ....
あたしの中で
水が{ルビ捩=よじ}れる
還るべき水脈を何処かに探してのことなのか
それとも単に気まぐれなのかはわからないが
あたしの中で
時折ふいに
水が捩れる
たとえばそれは
安易な ....
自分で自分をさらって
とうとうこんな処まで来てしまった
白い光に
朽ちてしまった街
建物も通りも 空までも色を失くして
そして 誰もいない
ただ乾いた星雲がいくつか
なかぞらで回って ....
いつまでもそうやって
ガラスの風船で遊んでおいで
僕はもう青い月を抱いて
眠ってしまうから
夜がやってきて空気の色が
こわくなってきてもずっとそこでそうやって
遊んでおいで
箱庭のよ ....
私の意識の
極北に立つひとがいる
彼はいつも黒い服を纏い
時にその服を髪を風にたなびかせ
時に無風のなかに
その立ち姿の輪郭をくっきりと映し出し
時に彼は流れる水のような
ゆらめ ....
緑の並木道
とおり過ぎてゆく人たちと日々たち
僕は空中歩行
さりげなく浮かぶ雲
消えては生まれてゆく
自由みたいに
風の声に沿って歩いてゆくと
いつかまたあの丘へ
そして遠くか ....
桜
錯乱
咲き乱れ
風に舞う舞う
花吹雪
狂おしく舞え
狂おしく散れ
桜
錯乱
咲き乱れ
闇まで染めよ
夜 ....
私という虚ろよ
未完成という名の陶酔を
響くように生み出しつづける
青白い坩堝と化すがいい
黒い夕暮れ
かたちのない傷から
夢のように沁みてくるものがあり
壊れがちな覚醒
鋭角的な儀式の
あるいは 金属的なサーカスのさなかに
暗く降ってくるのは
誰の声なのか
蜥蜴の閃 ....
病んだ春がせまい庭の片隅で
青ざめて弱々しい翅ばたきの音をさせている
だから
溜息しか出ては来ない
通りの向こうの古びた窓には
どこか見憶えのある白い顔
うすら笑っているような
うす ....
青ざめた喜劇役者が
陽気に痙攣している
何を間違えたのか
この照明はやけに明るすぎる
恐ろしい青空に
巨大な広告塔たちがそそり立ち
だだっ広い国道を車たちが
獣のように流れてゆく
....
断崖のふちに
ぽつんと一つ置かれた白いベッドで
僕は目ざめた
僕の上には
途轍もなく青く明るい空だけが
広がっていた
僕はベッドの上に坐ったまま
何も考えられずにいた
すると
空 ....
桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地
息づく闇の何処かで
黒髪の 解かれる気配
ほのかに 立ちまようのは
知らない花の香と
やわらかな水の ....
それでもこの心は
果てしなく遊離線を描くのだ
そうだよ 憧れは遠いから憧れなのだ
君をとおしてその遥かさを見つめようとしていた
残酷なこの心よ
病院の長い待合い廊下に坐って
考えている
私の気はたしかなのかと
時々 呼び出しに応じて
いくつかの個室のどれかへと
人が 入ってゆく
そしてやがてまた出てくる
入ったまま
出てこない ....
いくつかの塔が
もの問いたげに立ちならぶ地平を見つめて
僕らは歩いた
いつからどこからこの旅がはじまったのか
その記憶さえ置いて
陽射しは遠く霞み
ピンクグレーの雲がたゆたっている ....
それは 破綻だった 小さな部屋で
はじまっていた 壁が不必要に白すぎて
かといって 何を置けば あるいは ただひとつの
窓に 何色のカーテンをかければ その白が
中和されるのか わからなかった ....
君にプリズムをかざして
分光する
白い壁に映るスペクトラムは
すべての色がほのかになやましく青らんで
僕をいつまでも
見つめさせている
窓をつくった
何に向かって開かれればいいのかわからないまま
そしてオブジェのように空間に散らばる
さまざまなかたちや色のCHAIRS
ふと気づくと別なのに腰かけてたりする
時計はもう ....
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