言うまでもなく、言葉は万能ではない。僕たちの言葉による意思伝達は、ほとんど奇跡と呼んでも差し支えないほどの、言葉の周囲をめぐる曖昧な了解のうえに成り立っている。もしかしたら、そんな気がしている ....
 
九月

僕らは歩いた ときには
手をつないで ときには
手をはなして 僕らは歩いた
夜の道を 急ぎ足で

そして見たものを 見た
順番に声にしながら 夜の
運河に浮かぶ水母 海 ....
夜はまだ浅い
通りは静寂だ
ドアが開きドアが閉じる
そのあいだだけ
店内の喧騒が通りに溢れる
闇が深まる
夜はまだ浅い

期待が大きい分、失望も大きくなる
まだ柔らかいアスファルトに ....
花柄のキャミソールの下の 
薄い胸の底で
彼女は
どんな痛みも光に変える
その声はまるで
強い雨の中を上昇していく一羽の水鳥
国際空港に次々着陸する旅客機が
サーチライトの光を放ち
暴 ....
夜の公園、移動手段 
水から上がったばかりの濡れた髪が
いつもより黒く輝いて
僕はその光りを好ましく思った

かつてその人が指輪を投げた
対岸までの長い距離
指輪が不要になるとは
何か ....
*
リンパのようにはりめぐらされた
首都の地下の冷えたレール
そのところどころが表皮をかすめ
夜になると光る花を咲かせる

昇ってしまえばあとは降りるだけ
観覧車は僕らをどこにも
 ....
 深夜2時、数枚の年賀状を投函するために郵便ポストまで歩いていった。約300メートルのアスファルトの舗道。見上げると真黒に晴れた夜空に冬の星座が輝いている。今年もあとわずかで終わる。年が明ければす .... 線描画のような街
おびただしい数の
妖精めいた小さなものが
家々の窓から
わらわらと現れては
空に溶けていく
遠くから煙の匂いが流れてくる
人が消えるのは
こんな夕暮れだ

背が伸 ....
 雪が解けて木々がいっせいに芽吹く。地表の下は地下だ。すべてが地下だ。
湿った落葉が陽に照らされて、ゆっくりと乾燥していく。その下は陽の届かない
地下だ。 

 耳をすますと、小さな音が聞こえ ....
セダム 沙漠に咲く小さな花
極度の乾燥にも耐えうる種は
都市の上空に

正確で厳密な彼女の仕事は
成層圏を行きかう祈りと重なり
いつか惑星へと届くだろう

無重力のラボラトリーで
小 ....
すべてを知りたいと
思うところから
なにかが終わりながら
なにかが始まる

夕陽が沈む
半袖にも
長袖にも
橙色を映して
前を歩く人の
トートバッグも
紙袋も
橙色に染めて
 ....
1.
流星群のニュースを眺めながら、キッチンテーブルにほおづえをついている人。
窓の外は曇り空。明日は雪の予報。その涙がはやく乾きますように。

映画館のロビーで、美しい少女が
父親といっし ....
1.
ふたりが出会うしばらく前から
世界は始まっていた

ナイトフライト
夜の音楽

夜明けのおそい
鉄色の街へ
翼に乗って君に会いに行く
雪解け水を湛えた深い森の
ビリジアン色 ....
大人は判ってくれない
どうでもいいような深刻な悩みと
爆走するハートを抱えたまま俺たちは
夜の待つ街へといつもいつも
それには理由がある
夏の朝まだ明ける前に飛び出していくフルーツたちを
 ....
*
朝のメトロの構内へとつづく階段で
イヤマフをはずした瞬間に
流れこんでくる新鮮なノイズ
「あ、地球の音」と彼女は思う

落し物をしてかがみこむ人を
よけながらホームへ降りる
マスク ....
歩きつづけていればいつも風のなかにいられるのに
立ち止まればいつも後悔ばかりあふれ出す
そんな思いを振りはらいながら地下鉄の駅まで
強い日差しに照らされて歩く

明け方に見た夢のなかで傷つけ ....
このごろは誰も彼もが
この不完全な世界に嫌気がさして
あるいはまだかいだことのない素敵な匂いや
見たことのない景色
ダーウィン・フィンチ
新しいリズム 韻律をさがして
親しい友にさえいつ ....
海岸線から見上げる丘の東屋には
大きなオレンジの実がなっていて
僕らはいつでもそこに行けるんだ

貝だらけのビーチに一人こしかけ
波にたわむれる君びしょぬれの犬
西の入り江に沈むオレン ....
夏草に息をつまらせながら
とぎれとぎれのたよりない光跡を追いかける
光跡は小さな流れに出会う
同じ場所で僕たちも出会った

滝のしぶきがかかる地下道を通り抜ける時
すれちがう幸せな記憶をた ....
*
国際宇宙ステーションが
きぼうを乗せて
日没の名残を反射しながら
海峡の上空を通過していく

その光を楕円のプールで
滑らかな背中をひねり
口元に笑みを浮かべて
スナメリが見上げ ....
朝まだき始発を待つ
プラットフォームに
小さな風が吹いている

ドアが開き
ドアが閉じる

車内に流れ込んだ風が
まだ新しいシートのうえで
とまる

ガラス玉がひとつ
地下鉄の ....
風は光にあこがれる
道が光る
海が光る
光が光る

風は光を持たない
風は色を持たない

わたしたちが見ているのは
風ではなく
風の通った跡
風の通り道
風の過去の姿

そ ....
はじまりがあって終わりがある
風が生まれる場所

猫がくしゃみをする
風が生まれる

かもめが羽ばたく
風が生まれる

君がためいきをつく
風が生まれる

彼女がまばたきする
 ....
二十一時 十月最後の木曜日
初夏のように澄んだ夜
湖面に映るオレンジ色の灯火は
一列に波紋にふるえ
果てしなく星へと続く道でした

サクリファイス 山と渓谷
地上にて想う
アス ....
湖底から水面を見上げて
湖の周囲には深い森が広がっている
白いシーツを乱すように
水面に陽光が跳ねる
森の上にだけ天気雨が降っている
それは恋人の涙のようにすこし塩辛い
恋人の涙は小鼻の脇 ....
舗道に照りかえす低い陽にむかって
かわいた空気のなかを僕たちは
舗道に暮らす人には気をとめずに
西陽に目をほそめて歩く

大通りのむこう側からとぎれとぎれに届く
コーラスが見知らぬ誰かを祝 ....
双眼鏡があるのなら真昼の空を
レンズをのぞいてごらん
土星の環だって見えるよ
すっかり殺戮のすんだ廃墟のむこうに

海のように大きな川が流れていて
沈んだばかりの夕陽が
水平線を美しく染 ....
地球は今、塵の多いエリアを通過中
その真空地帯に
宇宙塵を食べて生きる
小さな虫がすんでいる

毎年この時期、近づいてくる
惑星の大気と衝突した宇宙塵は
摩擦熱で炎になる
そのあかりを ....
俺は涙を流さない
なんでもかんでも理由をつけていとおしむのはもうやめにしたんだ
夏色にかわった東京タワーの向こう側に一番きれいな月が輝くカーブで
俺を乗せたバスは大きく左に傾いた
この銀行の角 ....
俺も大人になって人の痛みを知るようになり
今朝もあしたも街を見下ろす歩道橋をわたる
銀色の街は光の破片にみちているが
それも2時には消えてしまう

沈みかけた船から小さなはしけに思い切りジャ ....
カワグチタケシ(59)
タイトル カテゴリ Point 日付
MAR November 4 2003自由詩219/9/20 0:27
Universal Boardwalk自由詩219/4/14 0:44
fall into winter自由詩317/11/11 0:38
花柄自由詩317/9/21 23:25
水玉自由詩117/9/21 23:25
観覧車自由詩617/2/2 23:22
希望について散文(批評 ...117/2/2 23:19
線描画のような街自由詩415/10/24 23:05
森を出る自由詩215/5/23 10:53
無重力ラボラトリー自由詩315/4/15 23:51
すべて自由詩3*14/12/20 12:11
チョコレートにとって基本的なこと自由詩214/12/20 1:10
バースデーソング自由詩214/6/21 1:59
ANGELIC CONVERSATIONS自由詩314/3/14 0:09
月の子供自由詩313/12/21 0:06
新しい感情自由詩613/11/30 2:04
スノードーム自由詩2*13/11/3 0:29
DOLPHINS自由詩313/8/21 0:15
自由詩613/6/29 0:06
自由詩413/4/20 21:25
風のたどりつく先自由詩113/2/25 22:54
風の通り道自由詩313/2/3 1:20
風の生まれる場所自由詩513/1/30 23:58
山と渓谷自由詩212/10/19 22:39
虹のプラットフォーム自由詩612/9/22 0:12
舗道自由詩112/6/20 23:49
夕陽自由詩2+12/6/9 0:38
答え自由詩212/6/7 0:54
International Klein Blue自由詩4*12/5/25 6:33
くだらない休日の過ごし方自由詩112/5/25 6:32

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