はじまりがあって終わりがある
風が生まれる場所

猫がくしゃみをする
風が生まれる

かもめが羽ばたく
風が生まれる

君がためいきをつく
風が生まれる

彼女がまばたきする
 ....
二十一時 十月最後の木曜日
初夏のように澄んだ夜
湖面に映るオレンジ色の灯火は
一列に波紋にふるえ
果てしなく星へと続く道でした

サクリファイス 山と渓谷
地上にて想う
アス ....
湖底から水面を見上げて
湖の周囲には深い森が広がっている
白いシーツを乱すように
水面に陽光が跳ねる
森の上にだけ天気雨が降っている
それは恋人の涙のようにすこし塩辛い
恋人の涙は小鼻の脇 ....
舗道に照りかえす低い陽にむかって
かわいた空気のなかを僕たちは
舗道に暮らす人には気をとめずに
西陽に目をほそめて歩く

大通りのむこう側からとぎれとぎれに届く
コーラスが見知らぬ誰かを祝 ....
双眼鏡があるのなら真昼の空を
レンズをのぞいてごらん
土星の環だって見えるよ
すっかり殺戮のすんだ廃墟のむこうに

海のように大きな川が流れていて
沈んだばかりの夕陽が
水平線を美しく染 ....
地球は今、塵の多いエリアを通過中
その真空地帯に
宇宙塵を食べて生きる
小さな虫がすんでいる

毎年この時期、近づいてくる
惑星の大気と衝突した宇宙塵は
摩擦熱で炎になる
そのあかりを ....
俺は涙を流さない
なんでもかんでも理由をつけていとおしむのはもうやめにしたんだ
夏色にかわった東京タワーの向こう側に一番きれいな月が輝くカーブで
俺を乗せたバスは大きく左に傾いた
この銀行の角 ....
俺も大人になって人の痛みを知るようになり
今朝もあしたも街を見下ろす歩道橋をわたる
銀色の街は光の破片にみちているが
それも2時には消えてしまう

沈みかけた船から小さなはしけに思い切りジャ ....
薄くれない色の闇のなか僕たちは
とても長い距離を歩いた
想像がつかないくらい
遠くまで僕たちは歩いた
あまい風
あまいメロディ
やわらかい音が生まれるときの
秘密を左手に握りしめて
小 ....
そして真白な夜が明けて
霜、サフランの開く音は
夜中積もった雪に吸い込まれて
窓の中まで届かない

光は反射しながら落ちてくる
雲、菫色の雲をわって
シナモンを焚くけむりが部屋に満ちて
 ....
なにもかもすっかり変わっちまったぜ
明け方ガードレールに座って訳もなく
中途半端に笑ってたあの頃とは
なにもかもすっかり変わっちまった

今夜、降り積もる雪が
ストリートの喧騒を吸い込み
 ....
君は海
冬の海
深い海
に永遠に沈みつづけるいくつもの小さな疑問符

君は海
夜の海
暗い海
に永遠に映し出されるいくつかの小さな月

降り積もる雪と
月明かりがひそかに君を照ら ....
ひと区切りついて 50分経って
コインランドリーの外 舞い降りるスノーフレークを眺めていた
暖かく振動しながら回転する 乾燥機の壁にもたれて
君のことを考えていた
バスの整理券を取る時の ....
草原をバトルフィールドに見立て
匍匐前進が一時間以上続いている
周囲から仲間たちの気配も薄まり
冷たい月と数えきれない星々の下

体重の半分近い装備を背負い
身長ほどの銃身を両腕で抱え
 ....
やがて来る引き波の底
陽気な友達は俺の両足をつかみ
俺は自分で築いた砂の城の城壁につかまるが
靴は一体どこへ行ってしまったのだろうと
考える間もなく城壁は崩れる

八月の光の中
誰も気付 ....
彼や彼らが死んで
しばらく経ってから
君は埋葬する
そして理解する
人は死んでも星になんかならない
人は死んだら死体になる
そして記憶になり
いずれ忘れ去られる
埋葬される者はまだ幸運 ....
ラタトゥイユ 振動を吸収する構造体
それはタイトルを持たないストーリー

いつもこの店の同じ席で夕日が沈むのを眺めている君は
少し首を傾けて眠そうな目で今日も誰かの約束を待っている
クリス ....
俺たちはもうそんなに遠くへは行くことができない
俺たちにはもうそんなに力が残ってはいないし
それにもうじゅうぶん遠くまで来てしまったから

石段を降りた水面の高さから
今度は二段昇った水の上 ....
世界は二頭の象が支える巨大な円盤ではなく
真空に浮かぶ球体にかろうじて貼りついている
ざらざらとした薄い膜に過ぎない
と知った日から君は
旅に出る必要がなくなってしまった
それなのに
果て ....
*
ぬくい雨とつめたい雨が交互に降る
六月とジューンのあいだの青い溝
雨が上がった朝
夏至の朝、光について考える

前を歩く女が引く
空のキャリーバッグのキャスター音が低く響く道
その ....
プラネティカ 秋にむかう空 黄昏のプロムナード
プラネティカ 惑星の軌道を読む いつか帰る場所を探す

何かの終わりと引き換えに君が手にしたものは
夕暮れの空を流れる雲の記憶と雨の境界 ....
*
その声はとても高いところから来た
雲より発し、雨滴とともに地上へ降りてくる
その声にすこし遅れて雲が降りてくる
山肌を滑り降り、谷間を霧で充たす

立ちならぶ鉄塔が山肌を刺繍する
鉄 ....
石の道を走る硬い車輪は不安定な振動を伝えている
ヘッドライトが照らす速度よりも先にあるもの
暗い通路をときおり横切るもの
何も見えない窓のむこうには音があり、匂いがあり、温度と湿度がある

 ....
 出会ったのは夏のこと。それから、秋になるまで歩きつづけた。何も持たずに僕らは歩いた。夕暮れから夜になるまで。砂を踏む足音はやがて、乾いた枯葉色に染まっていった。 

 荷物を持たずに歩く僕ら。足 ....
*
窓辺に置いた椅子の背のあたりから
沈黙が広がっていく
雨の予感がゆるやかに部屋を満たし
そしてひとつの声がおわった

山腹の地下駅は深いトンネルの底にある
プラットフォームに降り立つ ....
 都市の末梢神経が、ところどころでむきだしになっている。むきだしになった都市の末梢神経に眠らない水が引き寄せられる。四谷には初冬の冷たい雨が降り、お茶の水では真夏の日差しに輝く神田川の汚れた水面に鯉が ....  その通りには、いつも強い西風が吹いていた。強い西風に押されて街路樹の銀杏は傾いていた。バス停で次のバスを待ちながら、僕の身体も通りの向こうがわにある街路樹と同じ角度で傾いていた。傾きながら僕も、強い .... 都バスの中から見ている
外はみぞれまじりの雨(とても寒い)
信号で止まるたびにエンストしている
86番のバスは日本橋三越行き
いつも右側の席
東京タワーがよく見えるから
その輪郭はあまりに ....
楽園の夢を見た
この世界ではいま
それが必要だから

まず
都市計画の話を
人間の楽園の話をしよう

ペブルビーチ
サンドビーチ
エプコットビーチ

椅子に座って
話をしよう ....
 加速中の一歩は、減速中の一歩よりはるかに重い。忘れることはたやすいが、思い出すことは更に容易だ。
 地下鉄を歩く。 

 離島をイメージする。
 ほぼ真円、全周三キロメートル、最高標高百メー ....
カワグチタケシ(67)
タイトル カテゴリ Point 日付
風の生まれる場所自由詩513/1/30 23:58
山と渓谷自由詩212/10/19 22:39
虹のプラットフォーム自由詩612/9/22 0:12
舗道自由詩112/6/20 23:49
夕陽自由詩2+12/6/9 0:38
答え自由詩212/6/7 0:54
International Klein Blue自由詩4*12/5/25 6:33
くだらない休日の過ごし方自由詩112/5/25 6:32
無題(薄くれない色の闇のなか〜)自由詩112/4/21 22:59
自由詩10*12/2/18 2:40
Winter Wonderland自由詩2*12/2/18 2:38
METAPHORIC CONVERSATIONS自由詩312/1/22 11:37
コインランドリー自由詩312/1/22 11:10
星月夜自由詩411/10/14 22:47
八月の光自由詩311/8/1 0:30
Doors close soon after the mel ...自由詩1911/3/13 13:21
(タイトル)自由詩310/12/4 0:14
水の上の透明な駅自由詩1110/8/22 21:15
無題(世界は二頭の象が〜)自由詩1210/2/11 1:19
ガーデニア Co.自由詩609/10/12 11:05
Planetica(惑星儀)自由詩509/4/11 22:50
自由詩609/1/24 2:13
ホームカミング自由詩408/8/2 9:37
無題(出会ったのは夏のこと〜)自由詩507/10/14 23:08
自由詩507/9/16 23:14
無題(都市の末梢神経が、〜)自由詩206/12/10 10:21
雨期と雨のある記憶自由詩2*06/7/4 1:28
クリスマス後の世界自由詩506/1/29 22:32
都市計画/楽園自由詩14*05/8/28 23:34
離島/地下鉄を歩く自由詩6*05/4/17 16:43

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 
0.08sec.