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あなたが描いた絵を見た瞬間私は気がついた。
私は確かに、
あなたの側にいると。
緑や黄や、青や白で描かれた、
あなたの景色は、
私をいつかいた懐かしいあの場所に
連れていってくれる。
 ....
覚えている。
私がまだ幼かった頃の、
あなたはいつも、
降り続く雨と闘っていた。
雨は黒い石を含みながら、
あなたの肩を濡らした。
まだ幼かった私はただ、
呆然とその姿を眺 ....
(入れたい入れたい入れたい入れたい入れたい入れたい)
せりあがる濁流を押さえる、
マンホールのように、
私は夜の車内で唾を飲み込む。
森をくぐり抜けた夜空には、
どこまでもついてくる
三日 ....
冷えた夜に冴えた月を眺めながら、
あなたを思い浮かべる。
私は窓の鏡のなかで、
薄皮を剥いでいく。

あなたの鼓動が私の身体に触れる。
私は刹那に哀しくなる。
歓喜に触れて哀しくなる。
 ....
この腕にしがみついた、
性という薄皮の、
一枚一枚をゆっくりと剥いでいく。
そこには薄く赤みを帯びた痛みが咲いている。

煙で見えなくなった、
風呂場の鏡に映る、
あらわになった腕や脚、 ....
あらゆる毛皮という毛皮を剥いで、
あなたをただ見つめる。
そこからはまるで、
万華鏡か走馬灯になった
私たちが見える。
私は手元を見つめる。
もうこれしかない。
新宿東口の街の片隅で、
 ....
無知のまま、知ろうともないで、
ぐりぐりと孔をまさぐるあなたは、
ややもするれば悪になってしまう。
あなたという私の憎悪を、
優しく抱きしめる、
あなたの腕が皮肉にあたたかい。
私はその腕 ....
木枯らしが吹くビルの下で
私は一人佇む。
北風が、
繊維の隙間をすり抜けて、
肌に差し込む。
私は皮膚という皮膚の
口を大きく開けて、
舌に降り注ぐ血のぬくもりを抱きしめる。

あ ....
そのあたたかい頬に触れると、
私のなかで握りしめた、
生まれたてのあたたかなものが、
少しずつ剥がれていくの。
その剥がれたもののなかにいるものは、
胎児のような私で、
私ははじめて触れる ....
(ダレカダレカ解放シテクレ、
コノアツクルシイホドノ抱擁カラ)

私は時々、
私を抱きしめている、
この腕を暑苦しく思う。
私を抱きしめている私の腕を。
この腕には沢山の鍵が掛けられてい ....
(この男、殺したい )

私がはじめて、
胸のなかにナイフを握ったのは、
まさにこの瞬間だった。
その男は私に出会うやいなや

(アオイサンテ、
ソノ足ハ障害ナンデスヨネ、 ....
蟹は、
何かの匂いを感じると、
月をぐるぐるまわるように、
先へ先へと急ぐ。

何かの匂い。

それは芳しい花の香りではない。
じっとりとした、
タールのような
油 ....
ちくちくちくちく、
縫い針が私の影を追いかける。
縫う主はにこにこにこにこ、
暑すぎる笑みを浮かべながら。
オネエチャンハココノヒトデスカ
(ワタシハオネエチャンガタベタイ)
ヨカッタラオ ....
私の手は汚れている。
いつも茶色く汚れている。
正しくは、化粧品の茶色い色だ。
爪もいつも、
黄緑色に淀んでいる。
顔のなかを蟻が這う。
私は痒さに爪をたてる。
その爪についた汚れが、 ....
切れた指の皮膚の、
先端から咲いた小さな焔が、
野を駆けるように、
街へと拡がっていく。
私の思念のなかの街へと。
思念の街には色々な人が住んでいて、
皆、凍えながら何かを待っている。
 ....
私の耳は雑踏を歩く。
歩きながら無数の罵倒を食べている。
ある声は街中でぶつかりあった肩に
舌打ちし、
ある声は、休日の電話に悪態をつき、
ある声は、暖かな午後に寒いと言って愚痴を吐き、
 ....
私はことばを貪りながら
あなたをワルモノにかえる。
ワルモノ、わるもの、悪いもの、
割れるもの、
あなたは林檎のような赤ん坊だ。
いや、赤ん坊のような林檎だ。
私はがりがり林檎をかじる。
 ....
切りつけた樹皮のような皮膚からの
血の疾走が止まらない。
血は螺旋になった虹のように、
この腕を伝いおりていく。
かたかたかたかた、
血の足音が三半規管を通過して、
押さえられた手のひらに ....
彼女は、柔らかな鋭い魔物に
背中を喰われている。
しかし、
実際は彼女が魔物の耳を
自分の喉の指に押し込んでいる。
魔物を押し込んだ指が嗤う。
からからからから、
喉の奥の水車小屋で
 ....
驟雨になって過ぎていく時間の中で、
詩を書かせてくれないか、
誰かが囁いた。

誰かの声は確かに、
黒いペンで、
と言ったはずなのに、
私は赤いペンを背中から差し出す。
私は赤いものば ....
鏡のなかの、
少女のままの彼女に
メールをする。
液晶の水面は、
音もたてずに目を閉じる。
鏡のなかの少女は私だ。  ....
私は緩やかに束縛されている。
色々なものを見ながら聴きながら、
色々なものを見ぬように聴かぬように。
穏やかな強烈さで
目隠しをしている{ルビ腕=かいな}は誰なのか。

私の中心 ....
肉を食べたはずなのに、
私はさかなを吐く。
さかなたちは私の咽喉から、
ぴしゃぴしゃ、
躍り出て、
シンクの ....
私はさかなをかく。
私はさかなはかかない。
さかなのなかを私はかく。
さかなを支える骨の内部を流れる
熱い海の流れを。



塩焼きにされた秋刀魚にかぶりつく、
がり ....
空になった孔の底から、
風が吹き抜ける声が聴こえる。
喉の奥が苦しくて、手を伸ばす。

(届かない、でも感じる)  ....
(だれか、この腕を解放してくれないだろうか)

そんな声が、帰りの車中で本を読んでいると、心の背中から聴こえてきた。
 確かに私たちは「繋がれて」いると ....
 忘れられない、大切な人との出逢いや別れはなにか、と問われると、いつも思い出す人がいる。S姉さん。私より4つ年上のアルバイターだった。S姉さんは、アパレル関係の仕事をしていたせいか服のセンスもよく、ス .... 夕方、
車中で左隣に座った老人に、
肩で殴られた。
私のなかで何かがメラッと揺れて、
痛い!
と両手一杯に 石をぶつけだが ....
あなたには、
打たれた記憶しかなかった。
言葉の手のひらで、
私の頬や背中や足を、
あなたは何度も打ってきた。  ....
刃で
切った左手
痛みが、
手から背中
脳髄に達するまでの
みじかい時間
はじめて、
檸檬の酸っぱさを
知った。
左目がつぶれていく
顔が崩れそうになる味
 ....
吉岡ペペロさんのあおい満月さんおすすめリスト(83)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
巡礼- あおい満 ...自由詩916-1-17
- あおい満 ...自由詩6+*16-1-17
プルタブ- あおい満 ...自由詩516-1-16
カンヴァス- あおい満 ...自由詩10*16-1-14
- あおい満 ...自由詩1216-1-12
毛皮- あおい満 ...自由詩616-1-10
葱を刻む- あおい満 ...自由詩816-1-10
崖の上- あおい満 ...自由詩916-1-9
- あおい満 ...自由詩516-1-7
小指- あおい満 ...自由詩616-1-6
- あおい満 ...自由詩15*16-1-5
月に祈る- あおい満 ...自由詩716-1-3
- あおい満 ...自由詩316-1-2
子宮- あおい満 ...自由詩11*16-1-1
手紙- あおい満 ...自由詩6*15-12-31
歩く耳- あおい満 ...自由詩615-12-26
なみだ- あおい満 ...自由詩6*15-12-26
骨のなかの血- あおい満 ...自由詩715-12-23
疾走する彼女- あおい満 ...自由詩615-12-22
ナイフ- あおい満 ...自由詩715-12-21
- あおい満 ...自由詩5*15-11-3
放流- あおい満 ...自由詩6*15-10-28
ガム- あおい満 ...自由詩715-10-27
もえるうみ- あおい満 ...自由詩19*15-10-20
青空- あおい満 ...自由詩815-10-7
束縛の必要性- あおい満 ...散文(批評 ...415-9-3
S姉さん- あおい満 ...散文(批評 ...5*15-9-2
片胸- あおい満 ...自由詩7*15-8-27
場所- あおい満 ...自由詩11*15-8-22
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