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雪原の風たぐり舞う銀髪にあるはずもない笑みを見ていた
くりかえし光の行方追いつづけ雪の背骨を駆けてゆく子ら
道に棲む{ルビ静寂=しじま}に映る水の笑 ....
何かが去ったあとの高鳴り
大きなひとつの花になり
たくさんの小さな羽になり
微笑みながら消えてゆく
ひたされたとき
見えるかたち
雨はすぎて
胸とくちびる
....
あたたかく冷たい砂につつまれる湧き水の音めぐるむらさき
饒舌を打つが私の常ならずハチドリの羽ハチドリの水
指さきに降る水銀の一粒に触れに来る火の姿はまわる
....
地の水と空の水とが出会う日を見つめる涙ひとりの涙
ふりむけば道は草木に沈みゆく路なき路と手をつなぐ径
木蓮と鳥が同じに見える子の笑みと踊りに降り ....
眩む手にあふるる翳り冬と春
けだものよ応えぬ瞳応える背
降り止まぬ目に見えぬ雨降りやまぬ
花と骨つながるいのち星ひとつ
....
青空の手に触れはにかむ冬の顔
描きなぐる雪のはざまを埋める景
ひとつにも無数にも降る雪の問い
ころびゆく我が横に空たちあがる
....
雨や 雪や
青のこども
葉のうら ひたい
金のふるえ
さしのべられた
指のかたち
空の穂になる
うたごえになる
やわらかな
ざわめきの四角
とじこめた色 ....
中指から先に
地に付け 飛び立ち
光を
奪うように吸う
ひとつの緑
とどろく緑
水滴の世界に
隣り合う水滴
手に余るものはこぼれ
いつのまにか芽吹き ....
伝わらぬ想いは水に成り果ててかたち失くした器かなでる
しあわせの過ぎる時刻もわからずに待てど狂えど来ぬものは来ぬ
冬空の鉄は緑に手は鈍に雪か ....
水に姿と色を浮かべ
二枚の白い布をひたして
染まるもの染まらぬもの
ただそのままを見つめている
渇いた指で手のひらに
水がほしいと幾度も書くとき
空をまわりつづける葉は ....
海へと向かう夜を見ていた
蒼い蒼い
光を見ていた
光をぬぐう水の手が
冷たい曇に触れていき
たくさんの小さな影をつくった
影は夜通し降りつづけ
肌の上で
....
ほつれ湧き出る緑の影
ふいに生まれ溺れるもの
双つの空と迷いの木々
巡りかがやく枝と枝
無数の緑のなかの一葉
空に立つ空
こがねの樹
波打ちながら遠去かる陽
金は緑 ....
「あの光、鉄に運ばれ折れ曲がる!」(聞くともなしに?)「聴く友無しに!」
行方には何も満たない満たせない欠けた器がただ響くのみ
赦されしこの道のりが生な ....
ねむりたい頭のうえの冬蜜柑
渚なきからだ横たえ冬を聴く
白髪に月がふたつの冬夜空
斃れるはきさまだと知れ雪つぶて
おのれこそ ....
しあわせを逃がす手のひらおぼろ月
晴れわたり心ふさがる青の青
風の背の名を問うなかれ枯れ葉舞う
心の手閉ざすたくらみひらく花
野 ....
寝がえりの数だけ夢は裏がえる
またひとつ積もり重なる雪まなこ
煌々と言葉は眠りを遠去ける
見も知らぬ機械の生まれを語る夢
....
春の花ほつれゆくまま雨模様
現し世のなべて二重の涙かな
雨の舌双つの蝶を行き来する
手のなかに生まれ滅びる己かな
留めおく術も失くし ....
何を書き何を消し去る踏切夜
目の前に灯し火の音ひらく雨
歩む背に消し炭の夜やわらかく
描き出す描くともなく描く夜
春のうた頭上の夜に触れてゆく
....
脱ぐときは背中から脱ぐ春近し
目薬のまばたき世界を巡りゆく
歯の奥の穴に詰め込む笑いかな
にやにやと胃がさげすむ日空は青
とどこおる想い手のひら解き ....
棄てられた道のざわめき
野に沈んだ鉄の轍が
震えるたびに運び来るもの
蒼と紫の光が軋み
激しく小さな
数え切れない夜になり
雲を鳴らす音とともに
草の波をつくりだ ....
魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った
雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と ....
水たまりに映るいさかいと雲を
雨がゆっくりとかきまぜる
人は過ぎる
空は過ぎる
水たまりの底のむらさきに
次の空がやってくる
鳴き声のように震える音が
どこから ....