ある夜の色
木立 悟
あたたかく冷たい砂につつまれる湧き水の音めぐるむらさき
饒舌を打つが私の常ならずハチドリの羽ハチドリの水
指さきに降る水銀の一粒に触れに来る火の姿はまわる
何を追うかがやく雨を通りすぎ空あおぎみる花のまなざし
ひとりゆくひとりの道はまたたいて何もない街ない唱の街
とどろきが鏡のように立つ原に地のすべてから語らいは来る
目の奥に鉛の溶ける音がしてしたたりはゆくしたたりは梳く
ざわめきの見える夜だけ鳴る骨は遠い日の蚊帳まどろみの熱
たましいの涙にひたる筆を取りつぼみ塗る手ににじむむらさき