し ま い 湯 に 黴 の 香 ほ の か 手 足 伸 ぶ

盂蘭盆会三句
仮 住 ま い 我 に は 詣 る 墓 も な く
夏 つ ば め 塔 婆 の 高 さ 測 る よ に
抱  ....
曼珠沙華 倒木の根の間から
秋の蝶 仁王の鼻に羽休め
川風に羽黒蜻蛉の睦まじく
仮住まい我には詣る墓もなく
夏つばめ塔婆の高さ測るよに
抱腹の態で果つるや油蝉

ある夕暮れのこと。お盆と言っても都会では親戚付合いの廃れた昨今、詣るべき墓も精霊棚もなく、せめても近隣の地蔵堂 ....
8.6、広島。原爆犠牲者慰霊平和記念式典
同日、三里塚。天神峰現地闘争本部(通称・団結小屋)、強制撤去
同日、ロンドン。警察に射殺された男の追悼集会

8.7、お台場。反「韓流」非合法デモ
 ....
春の雷母の遺せし管四本
風光れ母は遺せし金の尿
初つばめ月命日の軒かすめ
旅やつれ運ぶ疾さや初燕
枇杷実る月命日も二度目かな
ほととぎす{ルビ亡母=はは}も天辺駆けをるか
五月雨や普及於一 ....
今夜は月がきれいだよ、と息子にメールしてみた
返信――確かに。でも、いきなりどうした(;^ω^)
そう尋ねられると自分でもなぜだろうと思う
携帯電話の液晶画面が妙にまぶしい
   にせものの風が・四月二十八日

にせものの風が吹いている
吹溜りに積もる言葉もにせものばかりだ
かく言う私はほんものだろうか
もう一人の私が風に吹かれている


   翼なきもの ....
   つきのひかり・二月二日

ふゆのあさ、にしのそら
しずみゆくまんげつ、りんとしたひかり
まだあけきらぬまちをてらし
ためらうこころをあゆましむ


   春を待つ・二月一七日
 ....
   棒の如きもの・元日

元日、まだ家人の目覚めぬうち
ひとり庭に降り立ち寒気に浴する
「去年今年貫く棒の如きもの」はあるか
鵯がひときわ鋭く啼く、「私」を糺すように
(引用:高浜虚子、 ....
 ある老姉妹が奈良の長谷観音をお詣りしたときのことだ。参拝を終え京に向かう道すがら宇治に立ち寄り名物の鰻蒸しを食したところ、美味しさのあまり妹はつい度を過ごし腹痛を催した。さてそれからが大変。あちらの .... 乾いたピアノの音、そして
三六人の十四歳たちが声を合わすと
市民ホールいっぱいに砂丘がひろがる
その魔法に酔い痴れることなく
十四歳たちは砂地を登り始める
這うように登り始める

かつて ....
ボクが眠らないとママは眠れないから
ママが眠らないとパパは眠れないから
パパが眠らないとボクは眠れないから

 アイスピック
 カッターナイフ
 金属バット

ボクは眠れないからママを ....
 うちのテレビは壊れているのだ。きっとそうだ。そうでなければ毎日こんなに人の死ぬところばかり映るはずがない。たとえば今朝のニュース。黄色く乾いた土の上に八人の男が正座させられていた。その後ろには黒づく .... カルミア、明日は咲くか
と、思うと明日が待ち遠しい
そんな日々を重ねてきたが
カルミア、いよいよ明日咲くか
と、思うと
咲けば後は散るだけだから
もう散ってしまうだけだから
でもやっぱり ....
仕事帰りの電車の中で三角みづ紀の詩を読んでいたら
左側のページの裏から若い女の立ちあがる気配がした
ようやく座れる、その程度のことがまるで恩寵のように感じられた

  誰かが石を投げてくるよう ....
 寒い夜のことだ。

 男はコートのポケットの中でこぶしを握りガッツポーズを作った。小さく、しかし強く。自分だけの、ささやかな勝利を確認しているかのようだった。手のひらに四つの爪跡ができた。うっす ....
その女はいつの間にか現れて、いつも私の前を足早に歩いてゆく。私はその速度に魅せられる。彼女を追わずにはいられないのだ。

しかし追跡は十五分も続けばましなほうだ。信号機や人混みが邪魔をする。女の汗 ....
オリオンの木星射るを仰ぎつつ
木枯らしや岐路に立てるを告ぐ便り
流感の息子の耳朶の産毛かな
流感や早退けの背に陽のそそぐ
幼子の額のあざや冬ざるる
雪しまく挑むが如く鴉啼く

矮猫亭はこ ....
主なき隣家に熟す柿たわわ
小望月レンズのほこり払う吾子
落葉焚き偏屈ひとり手を炙り
夜仕事の妻の背丸く影落し
 冬納めの儀式は古来より西院にて執り行うものとされている。その間、本尊は伏せられ、黒いラシャ布が被せられる。これを本尊隠しと称する。永年、雪守家の末子の役目とされてきたが、鴉葬以来、毎年、隠し役を選ぶ .... いつからだろう。男はいつも間違った場所にいた。間違った道を間違った方向に間違った歩き方で歩いていた。だから思いもかけない三叉路に出くわし、驚かされることもしょっちゅうだった。そんなとき男は必ず自分の考 .... 老母逝く雀あざみの実をはめり
曼珠沙華寂しき人のよりどころ
何もせぬまま日暮れて虫時雨
夕立のしずく残らず葉に抱き
涼風や鼻歌漏れる野天風呂
ビルの間を野分忙しく過ぎにけり
椎間板牽かれし ....
旅について考えてみたい。

芭蕉の力を借りて。つまりは『おくのほそ道』を読み解く。もとよ
り旅らしい旅などしたことのない私に何が解るのか。自ら発した問
いの洪水に溺れてしまうのが関の山か。
 ....
葉桜や仰ぎつ過ぐる乳母車
五月闇点滴瓶のほの明かし
病室にも黄金週間野球帽
初燕天衣無縫という語あり
しまい湯や黴の香ほのか我が家かな
黴の宿鴉多きを訝しむ
通学路黄傘を連ねたどたどし
 ....
世界はこんなに広くて、人もたくさんいて。
多様な文化、多様な言語。ほんと、いろいろだし。
幾世代も幾世紀も、千代に八千代に続いてるんだし。
だからそんな兄弟も、一組くらいはいたんじゃないか。
 ....
もしも私に愛が
許されるなら
それは五月

古い手紙から
解き放たれた風が
子供たちを勇敢にする

坂道を駆け登り
海と出会う
春と夏との隙間に
太陽が溶け落ちる

旅立ちの ....
朝のテレビが叫んだのです
あなたのラッキーカラーは赤って
だから今日はことさらに
血と肉とを
意識していようと思います
皮膚や毛や粘膜に覆われた
日の光の届かない場所で
とろりと赤く流れ ....
走ってないと追いつかれるぜ
フレッドがよくそう言ってたっけ
でも、いつまでも走ってるわけには
いかないだろう
いつまでも
おんなじところを

立ち止まる
振り返る
こっちに来るのは誰 ....
たけちゃんはくやしかったのだ
ちょーかっちょいい消しゴムを
むりやり下手くそな字でよごされて
ごしごしこすってみても
マジックだから消えねぇよ

絶対になくしっこない
消しゴムだったのに ....
婚約記念に貰った腕時計をどこかに失くしてしまった。大むくれの
妻に言わせると、神さまか誰かの啓示なんだそうだ。――結婚なん
かなかったことにしなさい。返す言葉に窮していると建築業者から
電話だ。 ....
ならぢゅん(矮猫亭)(32)
タイトル カテゴリ Point 日付
矮猫亭句帖2011俳句312/2/27 12:33
秋の高麗郷から俳句011/10/2 13:35
盂蘭盆会三句俳句111/8/20 6:13
真夏のシュプレヒコール自由詩211/8/16 23:18
義母(はは)を悼みて俳句008/11/13 12:15
月に照らされて(四行未詩日記・9月25日)未詩・独白107/12/5 12:16
四行未詩日記・二〇〇七年四月、五月未詩・独白107/6/15 12:21
四行未詩日記・二〇〇七年二月、三月未詩・独白207/3/30 12:23
四行未詩日記・二〇〇七年一月未詩・独白007/3/13 12:18
菩薩自由詩007/3/5 12:21
合唱の鎖—詩のスケッチブックから未詩・独白005/11/21 12:19
子守唄—詩のスケッチブックから未詩・独白205/8/5 12:15
団欒自由詩105/6/30 12:20
カルミア、明日は咲くか——詩のスケッチブックから未詩・独白205/5/8 14:57
ムウンストラック——詩のスケッチブックから未詩・独白305/4/30 8:13
同盟未詩・独白004/3/15 19:00
速度自由詩404/1/30 19:53
矮猫亭句帖抄 冬の部俳句103/12/17 12:09
矮猫亭句帖抄・秋の部俳句103/11/3 14:34
冬納め、あるいは虐殺の予兆に関する記録自由詩903/10/6 19:18
迷途自由詩103/8/29 12:53
矮猫亭句帖抄 夏の部 下俳句103/8/17 11:03
夢は枯れ野に(1)散文(批評 ...103/8/1 12:17
矮猫亭句帖抄 夏の部 上俳句003/6/30 12:54
落首未詩・独白103/6/19 18:43
風の砂丘自由詩003/6/2 12:07
あかあかと自由詩303/5/26 12:11
あいさつ自由詩103/5/19 12:14
やがて角の生える日自由詩203/5/12 12:58
取引き自由詩203/5/1 17:12

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