クソババアになりたい
佐々宝砂

コーヒーには砂糖をいれない、
いま私はめちゃくちゃに機嫌がわるい、
人間なので機嫌が悪い日くらいあって当然なのだけれども、
こんなに機嫌が悪くなるとかえって気分がいい、
コーヒーにはミルクもクリームもいれない、
一人だから不機嫌を隠すのは面倒くさくていやだ、
鏡をみて眉間に皺を寄せようとしたが寄らない、
私の顔にまだ皺はない、
すこし冷めてきたコーヒーで頭痛薬を飲む、
頭痛がするので私はいよいよ不機嫌だ、
もっと年をとりたい、
もっと不機嫌でもっと誰の手にも負えないような、
意地悪なクソババアになりたい、
不機嫌な顔して、
酒飲んで、
煙草を吸って、
酔っぱらってゲロを吐きながら、
今日のニュースをえらそうにうんぬんして、
どうでもいいよなうんちくたれて、
いまどきの若いもんはなってないねとのたまうような、
不機嫌なクソババアになりたい、
まるで全世界を一身に背負ったみたいな顔をした、
苦虫を1グロスまとめて噛みつぶしたみたいな顔をした、
シミシワだらけの汚いクソババアになりたい、
もうどうしようもないようなクソババアになりたい、
不機嫌になりたい、
コーヒーには砂糖をいれない、
とにかくそれが不機嫌の基本だ。


自由詩 クソババアになりたい Copyright 佐々宝砂 2004-03-21 03:29:01
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