真夏のラムネのような味の恋のお話
こめ

少年は汗をかきながら

夕焼け間近の商店街を

猛スピードで自転車をこぎ

君がいる駅まで全力で向かった

夏の太陽のせいで焼けた真っ黒な肌を

引きずりながら

何人もの人をすれ違い

もう思いつくことは君だけ

ありふれた気持ちを今すぐ伝えたいよ

最後の下り坂を音符より早く走り

駅に滑り込み

自転車を投げ飛ばし

乗車券も買わず

駅員も振りきって

もうすぐここから何万歩先の所に行く前に

伝えたいことが一つだけあるよ

君がいるホームを見つけ

君の名前を叫びながら

大量の汗など気にしないまま

君の所まで走り向かった

ホームには発進のベルが響き

電車はゆっくり走り出した

僕は君を見つけだし

ドアごしで泣きながら

君に伝えたかった言葉をいった

「愛してるよずっとずっとだから僕のこと忘れないで

いつか僕が白馬に乗って迎えに行くから

待っててさよならは言わない

また必ず逢おうね

大好きだよ」

そう言うと君は泣きながらうなずき

君の乗っている電車はどんどん小さくなった

そしていつしか見えなくなった

シャツはびっしょに汗まみれ

真夏の恋はこうして幕を閉じた

そうはかないラムネのような味を残して


自由詩 真夏のラムネのような味の恋のお話 Copyright こめ 2006-05-17 21:13:31
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