桜はきれいであるか。
青色銀河団

桜が満開である。
何本も隣り合って咲いている桜はきれいであるが、離れて一本だけで咲いている桜はその佇まいに凛とした雰囲気を感じよりきれいな気がする。

桜をじっと眺めてみる。
果たして桜は本当にきれいなのだろうか。
よく晴れた日青空を背景にした桜は、思うにあまりにベタすぎて本当はきれいではないのだと思う。ブルーとピンクの取り合わせはあまりよいものではない。
逆にライトに照らされた夜桜は、夜空の黒と桜の白のコントラストがきつすぎて、あまり趣味のよいものではないと思う。
私がいくらかはきれいだなと思うのは、夜明け前あるいは日没後、青い薄墨の背景に溶けこむようにして佇んでいる桜の姿だろうか。

桜は本当にきれいなのだろうか。
春の訪れの象徴であるとか、散り方が潔いとか文化的な文脈は抜きにして、目に見える姿だけを鑑賞してみる。
まず、葉が出る前に花だけ咲く植物ってあまりないような気がする。しかもあれほど大量に花を咲かせる生物学的な必然性があるのだろうか。あまり他の植物が花を咲かせない早春にあれだけの花を咲かせるのは、ある種異様な気がする。
イメージではなく、実際目に映った姿を見て、桜はすごくきれいかと自問してみる。
ぼくは特別にそれほどきれいだとは思わない。一つ一つの小さな花を見ても全体を見ても特別にすこぶる美しいわけではないと思う。

ただ桜は人を騙すのだ。
自身の回りにまとった朦朧としたイメージで。風に吹かれは花びらを散らし、自分の輪郭をあいまいにぼかしながら人を騙すのだ。

まあ今年もそんなふうにして結局は騙されてしまうのだけれど。



散文(批評随筆小説等) 桜はきれいであるか。 Copyright 青色銀河団 2006-04-02 23:02:23
notebook Home 戻る  過去 未来