夜の
ふるる

海は
暮れながら
静かに凪いで

潮風は
夕日を寝かしつけて

あんず色に染まった薄い雲は
迷子の子猫の形に似ていた

風に流されて
おかあさんを探していた

みい
みい
みい・・・・

海沿いの家
あたたかな窓辺のひかりは
きょうは黒いカーテンから細く漏れ
空はゆっくり黒いカーテンを引き

夜は
青いガラスの瓶の中
振ると
月色のビー玉が

から
から
から・・・・・

小さな家の中では
ねえさんが
薄紙にくるまれた甘いもの
そっとくれている

もう泣いてないの?
もう泣いてないよ

ねえさん
涙はどこへいくのだっけ

涙はね
桜貝になって
海にたゆたうの

ゆら
ゆら
ゆら・・・・・

それから
星の鈴になって
夜空でうたうの

ちり
ちり
ちり・・・・・

そんなふうに
おかあさんが言っていたわ

ねえさん
子猫はおかあさんに会えたかしら

そうね
たぶん・・・

青いガラスの瓶の中
海は音もなく揺れている

月色のビー玉

から
から
から・・・・・


自由詩 夜の Copyright ふるる 2006-03-20 09:26:58
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