星の話その他
ふるる

五つの星は夜生まれた
けれどその話はまた今度

青い とつぶやくと
その唇の形から魚だった時代のことが思い出される
泡は真珠とまんまるな月との間に生まれた

苦しくなって止めてしまう

抱き合った手の形は
木の幹にからまるツタのようで
背中は木の匂い
手は葉の触れ方を
少しの間思い出しているようだ

突然の雷とともに雨が降り出す
今日で一体何度目の雨なのか
睫毛に何度目かの雨を宿す
雨は変わらずに変わらない変わりようもない匂い
突然の雷はいつも突然
去る

去っていった人々のことを想う
想うけれどもうとても遠い
遠くにいてただ佇む
ただ佇むという難しいことを
簡単にしている人々
もうあまり思い出せない

あの人 とつぶやくと
呼ばれた気になって帰ってきてしまうから
あの だけで止めておく
朱色の夕日の中
ひと は夕日に託す

哀しくなって止めてしまう

春に咲く花の匂いはとてもささやか
なのにはっきりと思い出されてしまうことがある
けれどそれは
去年や一昨年の輪郭を
持っていない

苦しいや哀しいその他
何番目かの新しい言葉を
階段をのぼるように
知っていくのに
名づけることは止めてしまう

夏の道の途中で
いつまでも砂埃が立っているので
いつまでも向こうが見えない
向こうには入道雲

入道雲という明るいものを

思い出した

秋や冬にも確か何かあった
ただ佇むという難しいことを
簡単にしている季節
今はあまり思い出せない

今は春先

会社帰りにとても疲れて
コンビニでビールを買って
家に帰って
ベランダから夜空を見上げた

夜空は濡れて
星を引き寄せていた
星を見せていた
星が語るように
星が思うように
星はただ星で
ここもただの青い星

五つの星は夜生まれた
けれどその話はまた今度


自由詩 星の話その他 Copyright ふるる 2006-03-16 01:18:05
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□□□抒情詩っぽい□□□